将来への不安や失敗への恐れから、ついお金を使えず貯金ばかりしてしまう――そんな行動の裏には、無意識の「心理」が隠れています。本記事では、貯金に走りやすい人の心の仕組みと、不安と上手に付き合いながらお金と向き合うヒントを解説します。
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「ある程度の貯金があれば、もっと安心できると思っていた」。そんなふうに感じたことはありませんか。ところが実際には、貯蓄が増えても、不安がきれいになくなるわけではありません。
以前より生活は安定しているのに、なぜか気持ちは落ち着かない。むしろ、貯めたあとから「減ること」が気になり、お金を使いづらくなった、という人もいます。
「貯金=安心」というイメージと、実感とのあいだに生まれるこのズレは、なぜ起きるのでしょうか。この記事では、その理由を心理の視点から整理し、不安と上手につきあう考え方を見ていきます。
なぜ、貯金があっても不安は減らないのか
貯金があれば安心できると思っていたのに、実際にはそう感じられない。その背景には、お金に対する人の心理的なクセが関係しています。
(1) 増えても安心より「減る不安」に強く反応する
人は、お金が増えたときよりも、減ることのほうに強く反応しやすい傾向があります。これは「損失回避」と呼ばれる心理で、得をする喜びより、損をする苦しみのほうが大きく感じられるのが特徴です。貯金が増えても、「減ったらどうしよう」が先に立ってしまい、安心感を感じにくくなることがあります。
(2) 数字が具体的になるほど不安が現実的になる
お金の額が明確になるほど、「もしこれが減ったら」という想像がリアルになります。急な出費や予期せぬ出来事を思い浮かべるうちに、安心よりも不安の方が強く残ってしまうことも。これは心配性だからではなく、慎重に先を見通そうとする人ほど感じやすい反応です。
(3) 貯金が“使うもの”から“減らせないもの”に変わる
貯金が増えると、当初は「何かに使うためのお金」だったものが、次第に「減らしたくないもの」として認識されるようになることがあります。この意識の変化によって、安心のために貯めたはずのお金が、むしろ「失うのが怖いもの」に変わってしまうこともあるのです。
貯金があっても不安になる“あるある”な気持ち
先ほどの心理的な特徴は、日常の感覚として次のように表れやすくなります。思い当たるものがある人も多いかもしれません。
(1)貯金があるのに、なぜか安心できない
貯金が増えれば、もっと安心できるはずだと思っていたのに、実際には気持ちが大きく変わらない。生活に余裕は出たものの、「これで十分なんだろうか」と心配になる。数字は満たされても、気持ちのほうが追いついていないように感じることがあります。
(2)将来の想像が、ふと不安を呼び起こす
今の生活には困っていないのに、ふと「この先どうなるんだろう」と心配になる瞬間がある。老後の生活費、病気、家族のこと……普段は考えないようにしていても、ちょっとしたきっかけで未来への不安が浮かび上がってくることがあります。
(3)使ったあとに、落ち着かなくなる
必要な出費でも、「本当にこれでよかったのか」と気持ちがざわつくことがある。買い物や旅行など楽しみのための支出でさえ、あとから残高を見て不安になる。お金を使うこと自体に、少しブレーキをかけてしまう感覚があるかもしれません。
不安と上手につきあうための3つの考え方
では、貯金をしながら、不安とどうつきあっていけばいいのでしょうか。ポイントは、次の3つです。
(1)減った金額より「得た価値」に目を向ける
お金を使ったあと、残高の数字ばかりを見ると不安が強くなります。でも本来、お金は「何かと交換」されているもの。時間、安心、経験、楽しさなど、得たものに目を向けてみると、「減った」ではなく「得られた」実感に切り替わっていきます。
(2)「自分だけでなんとかしなくては」を手放す
将来の不安を感じたとき、「全部自分でなんとかしなくては」と思うと、気持ちが重くなりがちです。でも実際には、相談できる相手や、頼れる専門家、助けてくれる人が周りにいることも多いもの。「もし何かあっても、ひとりで抱え込まなくていい」と思えるだけで、不安は少し和らぎます。
(3)安心の“よりどころ”を分散させる
貯金は安心のひとつですが、頼りすぎると「これがなくなったら終わり」と感じやすくなります。仕事のスキルや経験、人とのつながりなど、「自分には立て直す力がある」と思える要素を意識しておくと、安心感のよりどころが広がります。
安心感は「感じ方」と「考え方」から育てられる
貯金があっても、不安が残るのは珍しいことではありません。それは、「足りないから不安」なのではなく、「減ったらどうしよう」と感じる心の動きが関係しているからです。
不安が強まると、お金を使うことにブレーキがかかり、安心を貯金額だけに求めたくなってしまうもの。けれど、安心感は「どれだけ持っているか」よりも、「どう感じるか」「どう考えるか」で育てていくことができます。
たとえ減ることがあっても、「得られたものに目を向ける」「ひとりで抱え込まない」「立て直せる力がある」──そんな視点を持てるとき、貯めることも使うことも、自分で納得して選びやすくなるのではないでしょうか。
構成/高見 綾
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