ビューティーディレクター MICHIRUさんとおくる、連載「Wellbeing beauty by MICHIRU」。
連載第8回目は、俳優の井浦新さんと妻のあいさんが手掛けるサステナブルブランド「Kruhi(クルヒ)」を訪問。自然由来のシンプルで、確かなものづくりを行うKruhi。ブランドを通してお二人が伝えるメッセージを、あいさんに伺いました。
前編では、Kruhiのスタートアップストーリーを中心に探っていく。
髪の変化が気づかせてくれた、本当に体が求めているもの
MICHIRUさん(以下、MICHIRU):Kruhiはシャンプー&トリートメントも、マルチバームもサステナブルコスメアワードを受賞されていますよね。自分と環境、どちらも大切に考えてケアアイテムを選ぶ人たちに特に愛されている印象です。
今日は、ぜひブランド「Kruhi」ができるまでのお話を聞かせてください。
井浦あいさん(以下、あい):きっかけは自分の髪の変化でした。良いものを使って、しっかりケアしてきたつもりなのに、なぜかパサつきや広がりが気になるようになって。肌も同じように、状態が良くない日々が続いていました。はじめは「年齢のせいかな?」と思っていました。でもある時、これまで選んでいたものの洗浄力が強すぎて、自分の髪や肌に合わなくなっていることに気がつきました。
MICHIRU:洗浄力が強いと肌や頭皮の乾燥やバリア機能の低下、さらに過剰な皮脂の分泌につながりやすいですものね。
あい:それで石けんシャンプーに変えてみたところ、仕上がりに感動してしまって。洗い心地は泡立たないし軋むし、「どうなの?」と思うのですが、乾かすと髪質が変わったようにまとまって、つるんっという手触りになったんです。夫の新も「使い心地は最悪なのに、洗い上がりは最高だね」と言うほどでした。それまで石油由来の成分がシャンプーに入っていることさえもらなかったのですが、一度体感したら他のものとの違いに感動し、石けんシャンプーが手放せなくなりました。
MICHIRU:石けんシャンプーは、その洗い心地がネックになる方が多くて、もったいないですよね。
あい:そうなんです。こんなに良いものなのに、このままの使用感では拡がりがないと思って。それで、どうしても“使い心地も良い石けんャンプー”を作りたくなりました。
“もう待てない”から始まった本気のプロジェクト
MICHIRU:では、Kruhiはあいさんの石けんシャンプーを求める情熱から始まったんですね。
あい:はい。私だけでなく求めている人がきっといるし、地球にも必要なものだという思いが強くなり、まずは1人でいろいろと調べ始めました。化粧品の作り方も、会社の立ち上げ方も全くわからなかったので、東京都の女性起業家支援や助成金の仕組みを調べたり。
MICHIRU:意外にも地道なスタート! 想像と全く違う始まり方でした。
あい:新には俳優の仕事もあるし、役作りに集中する時間を大切にしてほしくて、邪魔をしたくないという思いがありました。でも助成金をもらって会社を立ち上げるとなると、かなり時間がかかるんですよね。それでも私は気持ちが高まりすぎて、「何年も待っていたら私の髪も、世界も滅びる!」くらいの気分になっちゃって(笑)。そこまできて初めて夫に相談をしました。そうしたらすごく共感してくれて、出資もしてくれ、一緒にブランドを立ち上げることになったんです。
MICHIRU:お二人にとって化粧品の商品化は初めてのことだったと思います。最初のアイテムは「ボタニカル石けんシャンプー」と「ボタニカルトリートメント」の実現は、具体的にどのように動いていったのですか。
あい:まずは私たちが思い描く石けんシャンプーを一緒につくってくれる工場を探しました。でも“石けんシャンプー”と伝えると、ポジティブなお返事がなかなkもらえなかったんです。「石けんシャンプーは売れないから、おすすめしません」と言われたことも。
そんな中で出会ったのが、鹿児島のボタニカルファクトリーという工場でした。私たちの思いを理解してくれて、面白いと感じてくださった。その出会いが、Kruhiの始まりでした。
レスキューされた植物とつくる、循環するものづくり
MICHIRU:Kruhiの製品は、鹿児島をはじめ多くの国産植物が使われていますよね。
あい:植物のエネルギーを感じてもらえる、ものづくりをしていきたいんです。たとえば、シャンプーとトリートメントは、鹿児島県産で無農薬のパッションフルーツの蒸留水をベースにしています。これは規格外で市場に出せず、以前は破棄されていたもの。また「ALWAYS NEW BALM」には、同じ鹿児島県産で使い道がなかった有機栽培のハイビスカスローゼルを入れています。
MICHIRU:使い道がなかったとは?
あい:にんにくの耕作地で収穫後の土壌の養分を回復させるために、栽培されていたハイビスカスローゼルです。それを化粧品として活用する提案を工場からもらいました。私たちも“何らかのレスキューにつながる原料”を使いたいと考えていたので、思いが一致しました。
MICHIRU:成分になる植物との関わりの時点から、「循環」が始まっているんですね。
あい:Kruhiのけんシャンプーの生分解性は、98.9%。排水として流れてから5日間で、98.9%が分解され自然に還っていきます。またパッケージにもこだわり、シャンプー&トリートメントにはリサイクルがしやすい、アルミニウムボトルを採用しています。アルミ素材はプラスチックよりも、リサイクルする際にかかる熱エネルギーが低いんです。使う前から使った後まで、循環の中にあり続けるものをつくっていきたいと思っています。
届けたいのは“もの”より“価値観”
MICHIRU:お二人は環境や循環を思う視点を、ブランドを立ち上げる前から持っていらしたのですか。
あい:夫は以前から、忙しい時や何かの節目に「自然に触れに出かける」ということをしていました。人間らしさを取り戻し、また良いパフォーマンスをするために“自然の必要性”をよく知っているんだと思います。
MICHIRU:自然のエネルギーを取り込むと、パフォーマンスが上がりますよね。肌につけるものもそうで、身を置く場所もそうだったら最高! あいさんは、どうでしたか?
あい:私は小さい頃から環境のことに興味があったし、子どもが生まれてからは特に気を遣って、食べるものや日常のものを選んでいたつもりでした。でもシャンプーのことを知らなかったように、本当に環境に良いことを正しく選べていなかったんですよね。知らないことが多すぎるということに、石けんシャンプーとの出会いをきっかけに気づきました。
MICHIRU:Kruhiをきっかけに、あいさんの知識も深まっていった感じでしょうか。
あい:まさにそうです。知ることは習慣を変え、習慣はやがて選択を変えてくれました。私と同じように、“知らなかったから選べなかった”という方が多いのではないでしょうか。Kruhiを通してナチュラルなものの価値や、自然のエネルギーを取り入れることで体も心も変わっていくことを知ってもらいたいと思っています。“買ってほしい”よりも、“知ってほしい”。そんな思いで作っています。
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次回、中編では、2025年に誕生した2つのスキンケアアイテムと、Kruhiこだわりの“香り”について伺っていきます。
井浦あい
Kruhiディレクター。1984年生まれ。大学卒業後、一部上場企業でIR、秘書を担当し、結婚を機に退職。主婦業を経て、健康と環境に配慮した製品の必要性を感じ、2021年、夫・井浦新氏とともにValley and Windを創業。2022年にサステナブルコスメブランド「Kruhi」を立ち上げる。
MICHIRU(みちる)
メイクアップアーティスト・ビューティーディレクター/渡仏、渡米を経て、国内外のファッション誌や広告、ファッションショーやメイクアイテムのディレクション、女優やアーティストのメイクなどを数多く手がける。また体の内側からきれいになれるインナービューティを提唱するなど幅広く活躍中。本連載ではナビゲーターを務める。
取材・構成/福田真木子
写真/黒石あみ







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