DIME MAGAZINE
早いもので2025年も残すところ1週間余り。今年の振り返りと来年の予測を行なう時期となった。というわけで、まずはアメリカから見ると、景気の減速基調の中で連邦準備制度理事会（FRB）による利下げの実施、さらに世界を巻き込んだトランプ関税の実施、国内向けには大幅減税などが焦点となった。
そんなアメリカ経済だが、2026年はどこに向かうのか。三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩 氏から最新リポートが届いているので概要をお伝えする。
2026年の米国経済は大型減税の効果などで底堅く推移し、物価はやや高めの伸びを予想する
米国経済は、政府機関の一部閉鎖の影響で、2025年10-12月期の成長率が一時的に低下するものの、2026年は底堅く推移すると考えている。
大型減税の効果や、関税引き上げに対する過度な懸念の後退、米中間選挙に向けた新たな景気支援策などが個人消費を支え、米国経済はやや上向きの成長ペースが想定される。実質GDP成長率の四半期予想は図表1のとおりで、2025年は前年比+2.0%、2026年は同+2.1%を見込む。
米国内の企業は、関税引き上げのコストをいったん引き受けている模様で、今後は需要動向を見極めながら価格に転嫁していくとみられる。そのため、関税の影響が米国経済に「薄く、長く」及び、物価はやや高めの伸びが続くことも考えられる。
物価上昇率の四半期予想は図表2のとおりで、2025年は前年比+2.8%、2026年は同+2.7%を見込んでおり、2026年末には2%台半ば程度まで伸びが鈍化すると予想している。
■トランプ米政権の中間選挙向け施策も景気を支援、関税を巡る米連邦最高裁の判決にも注目
米国では2026年11月3日に中間選挙が行なわれ、現時点での大方の予想は、上院が共和党優勢、下院は接戦となっている。最近支持率が低下しているトランプ米大統領は、中間選挙で負けられない状況にあり、食品の関税を11月に撤廃し、医療費削減や住宅価格改革を表明するなど、ポピュリズム（大衆迎合主義）的な政策を打ち出している。
また、追加的な関税撤廃も想定され、これらが2026年の米景気を一定程度支えると思われる。
関税については、トランプ米政権が国際緊急経済権限法（IEEPA）を根拠に課した関税の合憲性を巡る米連邦最高裁の判決が注目される。仮に違憲となった場合、トランプ米政権は根拠法を切り替え、関税収入を確保できるよう対処するとみられる。
なお、前述の追加的な関税撤廃は、根拠法を切り替えないことで実現可能となるが、大型減税の財源を関税収入以外でどのように確保するかが財政上の問題になると考えられる。
■2026年のFF金利は据え置きへ、FOMCはバランスの取れた陣容だがクック理事の進退も焦点に
米連邦準備制度理事会（FRB）の金融政策について、弊社はフェデラルファンド（FF）金利の誘導目標（現行3.50%～3.75%）は2026年いっぱい据え置かれると予想している。
2026年の米国経済は底堅く推移し、物価もやや高めの伸びが続くとみていることから、FRBは様子見姿勢を続ける可能性が高いと考えられる。トランプ米政権の中間選挙に向けた各種の施策も、利下げの必要性を低下させる要因と思われる。
米連邦公開市場委員会（FOMC）では、ミラン理事が1月、パウエル議長が5月に任期満了となり、後任はトランプ米政権が推すハト派の就任が見込まれる。その場合でも、2026年のFOMCで投票権を持つ12名は、ハト派4名、中立6名、タカ派2名で（弊社の区分）、バランスの取れた陣容とる。
ただ、中立のクック理事（トランプ氏の解任通知で係争中）が仮に退任なら、トランプ氏はハト派を後任とし、影響力を強めることも想定される。
構成／清水眞希
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