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飼い主もワンコも幸せに!獣医さんに聞いた「傾聴飼育」の実践方法

2026.01.02

傾聴飼育とは飼育動物の言葉にならないサインや行動を飼い主が注意深く観察し、動物たちの気持ちや、行動の意味を理解しながら飼育する方法である。傾聴飼育が普及すれば、動物と人とが快適に暮らせるだけでなく、より信頼関係や愛情が深まり、ストレスなく健康で長生きすることも可能だ。今回はベックジャパン動物病院グループ行動診療科専科長で、獣医師・獣医行動診療科認定医・伴侶動物行動カウンセラーの藤井仁美先生に、家庭でできる傾聴飼育の実践方法を聞いてみた。

ペットの気持ちに寄り添う「傾聴飼育」

――はじめまして!藤井先生。先生が動物行動学を専門にしようと思ったきっかけについて、教えてください。

藤井先生 東京農工大学農学部獣医学科を卒業後、動物病院に勤務していましたが、夫の転勤がきっかけで、しばらくイギリスで暮らしていました。今からもう30年ほど前の話なのですが、日本で動物病院に勤務していた時は診察台の上で暴れる子も多く、ケガをしないよう無理やり押さえ込んで保定(ほてい)していました。ところがイギリスの動物病院では、犬が診察台の上で穏やかに診察を受けていたのです。日本とのギャップが大きくて、当時は「いったい何が起こっているの?」ぐらい(笑)衝撃を受け、その秘密をイギリスの獣医師に尋ねたところ「それは社会化トレーニングのおかげだよ」という答えが返ってきました。

飼い主さんが子犬の頃から動物行動学に則った社会化トレーニングをすることで、愛犬との信頼関係を築くことができ、動物病院でも怖がらずに診察を受けてくれるようになるのです。動物の行動学やトレーニングの重要性を知って、行動学の勉強を始めたのが最初のきっかけです。

――現在、動物行動学に則った「傾聴飼育」を提唱されています。最初に傾聴飼育について簡単に解説していただけますか?

藤井先生 現在はベックジャパン動物病院グループにて、動物行動学を用いて犬と猫の行動診療やストレスケアに携わっているのですが、病院からの紹介で大王製紙さんとお話をする機会がありました。大王製紙さんのペット用品ブランド「エリエールPet キミおもい」では、「人へのやさしさ」だけでなく「犬や猫へのやさしさ」も考えて、ペットの特徴や習性も考えながら、それを商品開発に取り入れていらっしゃいます。

この「ペットの気持ちにも寄り添う」というブランドの考え方に共感し、ペットオーナーさんがより幸せな日々を送っていくには、ということを大王製紙さんと会話している中で、「傾聴飼育」という言葉が生まれ、それを多くの飼い主さんに知っていただきたいと思いました。

傾聴飼育とは動物の発するサインを観察し、その本当の意味を理解しながらペットと接する暮らし方のことです。犬も猫も、もちろん人もそうですが、気持ちは行動に表れます。その表れた行動を見て、どんな気持ちなのか、心の動きを飼い主さんが知り、それを日々の生活に役立たせることで、ペットと飼い主さんの気持ちが通じ合い、より絆が深まり、幸せな暮らしが実現できます。

犬は人とは異なるコミュニケーション方法を持っていて、主に表情や姿勢などのボディランゲージのサインや行動などで気持ちを伝えます。人と違って犬は言語を使って気持ちを伝え合うことはできませんが、代わりにサインや行動をよく観察して気持ちを読み取るように努めることで、犬とコミュニケーションをとることが可能になります。

傾聴飼育でペットとの暮らしがより幸せになる

――具体的に、傾聴飼育のメリットとは何ですか?

藤井先生 傾聴飼育により、犬とコミュニケーションをとることができると、お互いにストレスなく生活することができる上、互いの絆や愛情をより強く感じることができて、共生する幸せを体感できる点にあります。

逆に、犬たちの気持ちを意識せず、一方的に飼い主側が自分たちの考えを押し付けるような暮らし方や接し方をしていると、問題行動が起きてしまうこともあります。実際、動物病院に問題行動について相談に来られる飼い主さんは少なくありません。

傾聴飼育を意識すると、飼い主さんとペットとの間には、確実に信頼関係を築くことができます。互いに信頼し合うことで、よりペットとの愛情の絆が深まるでしょう。

――犬の行動から気持ちを察するのは、ちょっと難しいような気がします。

藤井先生 確かに犬の行動を観察しなければならないのは面倒かもしれませんね。飼い主さんも日々の暮らしで忙しいのに、じっくり観察するには時間がかかります。

さらに、今はSNSなどで情報が溢れていて何が正しいのかも分からないですし、人と同じで犬もそれぞれ個性や性格があるので、行動を見るといっても個体によって表現方法が異なり難しいと感じられる人がいらっしゃるかもしれません。いろいろな情報に振り回されずに「うちの子はどうか」という点から観察し愛犬の行動から学ぶことが大切です。

犬の言葉はボディランゲージで表現されます。表情、しっぽの位置、姿勢、耳、体のパーツと犬の動きを読みとることで気持ちが分かってきます。読み取るスキルはちょっと難しく感じるかもしれませんが、うちの子はどういうときにどんな表情をするのか、どんな行動をするかということを意識して見るだけでも、気持ちを察することはできますよ。

人もどんなに言葉でごまかしても、気持ちや考えは表情やしぐさなどの行動に出てくるものですよね。犬もその行動を見ると本当の気持ちが見えてくるのです。

――ぜひやってみたくなりました。傾聴飼育を始めて、続けていくポイントはありますか?

藤井先生 傾聴飼育はいつでもスタートできますが、一番良いのは家にお迎えして一緒に暮らし始めた時からです。まずは犬の行動学の正しい知識を身につけること、そして生活の中で愛犬が何を考え、どんな気持ちでいるのかを読み取るように心がけて、それに対してどのように接していくべきかを考えながら過ごしていくことが大事です。

日常生活の各場面で犬の行動は違います。お散歩の時、食事、遊びなど様々な場面でどんな行動をとるかを見て、その時の気持ちを理解してみるとよいでしょう。

ボディランゲージから気持ちを読み解く

――問題行動が傾聴飼育で改善した例を教えてください。

藤井先生 よくあるご相談として、「来客時にインターフォンが鳴るとワンワン吠えて大騒ぎし、相手の方も飼い主さんも困る」という問題行動があります。

この時、たくさん吠えるからこの子はダメ犬だと嘆いたり、しつけがなっていないと叱ったりするのではなく、どうして吠えてしまうのか、という犬が吠える理由や気持ちを読み取り、吠えなくても済むように、飼い主さんが犬の気持ちや行動を変えていく対応をします。行動診療ではこの対応法を順序立てて提案し指導します。吠えている犬の気持ちに耳を傾けたら、その気持ちを少しずつ変えていくと、吠えたいという気持ちも減っていくものです。ただし、いきなり吠えなくなるということはあり得ないので、やるべきことをひとつひとつ丁寧にゆっくりと進めていく必要があります。

また、犬は学習する動物です。例えば宅配便などに対して「家に入るな」とか「こっちへ来るな」と威嚇するように吠える場合、犬が吠えても吠えなくても宅配の人は荷物を置いたら去ってしまうのですが、犬からしてみれば『自分が吠えたからいなくなったんだ!』と勘違いして、毎回吠えるようになってしまいます。行動の結果から、学習してしまうんですね。ですから対応法を実践するなら早く開始する方がよいでしょう。

まずは吠えている時の愛犬の行動を見てみましょう。ボディランゲージはどうなっているでしょうか。来客が嬉しくて玄関に出て行きたくて前のめりに吠えているのか、それとも自分の家に知らない人が来るのが怖くて、近づいてもらいたくなくて吠えているのかなどをじっくり観察してみてください。

吠える動機がわかってきたら、来客に対して吠える必要はないという気持ちに変化させ、吠える行動とは違う行動を教えるためのトレーニングを進めていきます。よろこんで興奮して吠えているのなら、静かに待っていれば来客とご挨拶ができるということを教えてあげましょう。逆に怖くて吠えている子がいたら、玄関から遠くの部屋に安心して隠れられる場所を作ってあげ、来客時はそこで休むように教えていくとよいでしょう。

この方法を実践していくためには、基本的なトレーニングである「まて」ができていることが大前提です。吠えずにおとなしく待っていられたらご褒美のおやつがもらえたり、遊んでもらえたりするなど、犬にとって良いことがあると教えます。それが理解できれば、犬は吠える必要がなくなります。大切なのは、犬がどういう気持ちで吠えるのか、その理由を知りその気持ちを変えることで行動を変えることなのです。

――なるほど!「おとなしく待つことができれば、おやつがもらえたり、遊んでもらえたりといった良いことが起きる」と学ぶことができれば、ストレスもありませんね。やはりむやみに叱るのは、あまり犬にとって意味がないのでしょうか?

藤井先生 悪いことをすると、大声で叱ったり叩いたり、または音や電流などの刺激を与える首輪を着けるといった対応をする人がいますが、犬の気持ちからすると、びっくりして怖くてやめるだけで、慣れてしまえば効果は薄れてしまいます。

また怖くて吠えている場合は、飼い主さんに叱られたり、首輪からの刺激を受けて恐怖を感じたりすると、さらに怖さが増して吠えがひどくなります。飼い主さんとの関係性も悪くなっていくだけですからお勧めしません。

傾聴飼育を効果的に実践するには

――叱るのは逆効果ということですね。では、問題行動がみられる犬に対して傾聴飼育をする際のポイントがあれば教えてください。

藤井先生 吠えを含む問題行動は、観察して記録を残して振り返る作業が効果的です。私の行動診療では、問題行動に悩む飼い主さんには日課表を渡して、何時にどうしたのか、愛犬の行動記録をつけていく作業をお願いしています。

よく観察して記録をつけると、どういう時に吠えるかというきっかけはもちろん、それ以外にもわかってくることがあります。例えば元気がよい子が吠える場合は、運動や発散が不足していて日常的にパワーがあり余って、欲求不満のストレスから吠えやすくなっていることがあります。このように問題行動の背景で吠えを後押ししている要因もわかってくると、それへの対策もでき、問題行動を減らすのに役立ちます。

傾聴飼育はヘルスケアにも役立つ

藤井先生 今、ストレスの話が出ましたが、最近の研究では、犬猫も人間と同じで精神的ストレスから体調を崩す場合があることが明らかになってきています。いつもと違う出来事があった時に下痢をするなどといった体調変化があり、動物病院で検査をしてもこれといった原因が見つからない場合に、ストレスが影響しているかもしれないとされることがあります。

人間だと「今、仕事が忙しくてストレスだ」など、何がストレスの原因かがわかりやすいですが、犬や猫は何がストレスなのか言ってくれないので、飼い主も気がつかないことが多いかもしれません。

傾聴飼育を取り入れることで、ストレスを感じているときのボディランゲージを観察して、飼い主さんが「今、うちの子はストレスを感じている」と理解できるようになり、ご自分でストレス対策の工夫をしたり、必要に応じて専門家に相談したりすることができます。

例えば夏の花火や雷のような大きな音に対して、尻尾を足の間に挟んだり、震えたり怯えるように隠れるなどという行動で、不安や恐怖のストレスを表現する犬がいます。そういったサインに気づいたら、飼い主さんは大きな音が聞こえにくく、犬がリラックスしやすい環境を整えてあげるとよいでしょう。また一時的にストレスを解消できるようなサプリメントや薬もありますので、獣医師に相談してみるのもよいでしょう。

――さっそく取り入れてみたいと思います。最後に先生からアドバイスがあれば教えてください。

藤井先生 実践のポイントとしては、先ほどからの繰り返しにはなりますが、ペットに対する正しい知識をもって、サインを読みとって、そのサインは何を意味しているのか考えて接することがとても大切です。

また、傾聴飼育をしたい人におすすめなのがスマホや見守りカメラなどを使った観察です。その場での観察も重要ですが、飼い主さんが忙しくて観察できない時間や留守番させている間に見逃してしまっているサインもあるかもしれません。飼い主さんのいないところでどんな行動をしているのかなどを見ることができる録画システム付きのカメラは便利です。画像と映像を残しておき繰り返し見ることで、愛犬の気持ちを理解できるようになるでしょう。

――ありがとうございました。

来年、東京ビックサイトで「第15回インターペット東京」が4月2日から5日まで開催される。イベント内では、「エリエールPet キミおもい」がサポートする団体「傾聴飼育推進委員会」によるセミナーで、藤井先生による傾聴飼育に関する講演を予定している。「傾聴飼育で、愛犬と飼い主さんが、今よりもっと、幸せになって欲しいですね」という藤井先生のセミナーに、ぜひ参加してみて。また、今回は犬の傾聴飼育だったが、猫の傾聴飼育は犬とは全く異なるアプローチになるという。次回は猫の傾聴飼育についても紹介したい。

獣医師 獣医行動診療科認定医 伴侶動物行動カウンセラー
日本獣医動物行動学会副会長 ベックジャパン動物病院グループ行動診療科専科長
藤井仁美 先生
東京農工大学農学部獣医学科卒業。動物病院勤務を経て、英サウサンプトン大学大学院にて動物行動学を学ぶ。現在はベックジャパン動物病院グループにて、犬と猫の行動診療やストレスケアなどに携わり、動物の心身両方の健康や幸福の推進、および飼い主の幸福増進を目指している。

取材・文/柿川鮎子

Author
明治大学政経学部卒業後、経済系新聞社で自動車、ISOなどの担当記者に。退社後5年間、動物病院に勤務した経験から、飼い主さんの気持ちに寄り添ったペット記事を執筆中。 得意なテーマは 1)生産性向上などのマネジメント関連と、 2)犬猫やエキゾチックを含 めた飼育動物全般、の2つ。 作家として小説「犬にまたたび猫に骨」(講談社刊)、「極楽お不妊物語」(河出書房新社)を発刊。ノンフィクションでは小学館刊「全国から飼い 主が駆けつける!犬の名医さん100人データブック」、文春新書「動物病院119番」、ほか多数。趣味は野鳥観察、現在、2羽のオカメインコを溺愛中。

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