ランチ激戦区として知られる東京・神田に、いきなり!ステーキの第二章を象徴する新店舗が誕生した。
運営するペッパーフードサービスが掲げるのは、従来の成功体験に安住しない「体験価値の再構築」。メディア向け発表会で語られた構想からは、ステーキ業態の未来を見据えた強い意志が伝わってきた。
いきなりステーキが貫く“メインディッシュ至上主義”
2013年、銀座で産声を上げた「いきなり!ステーキ」は、前菜や付け合わせを省き、いちばん食べたい主役=ステーキを、いきなり味わうという明快なコンセプトで一世を風靡した。コース料理でありがちな「メインに辿り着く頃には満腹」という不満を解消し、日本に新しいステーキ文化を根付かせてきた。
今回ニューオープンを迎えた神田店でも、その哲学は揺るがない。
厳選されたアメリカ産・オーストラリア産牛肉を使用し、店舗での下処理によって肉の個性を最大限に引き出す。なかでも代名詞である「ワイルドステーキ」は、米国農務省の厳格な基準を満たしたCAB認定ビーフのみを採用。
一方で、時代の変化も直視する。原材料高騰や消費スタイルの変化により、かつて主流だった300gから、現在は200g前後がボリュームの中心に。だからこそ「量」だけに依存しない、満足度と体験価値の再設計にチャレンジする必要があった。
ステーキ店の倒産件数が過去最多を記録、リーズナブルだった米国産牛肉の値上がりで苦境に
帝国データバンクは「ステーキ店」の倒産発生状況について調査・分析を実施。結果をグラフと図表にまとめて発表した。 2024年に判明したステーキ店の倒産は13件、前…
ランチ激戦区の神田に挑む!DXと空間設計のこだわり
新店舗の舞台に神田を選んだ理由は明快だ。サラリーマンが行き交い、限られた昼休みに“確かな満足”を求めるエリア。ここで勝てなければ、次の展開はない──そんな覚悟がにじむ。
注目すべきはDXの取り入れ方だ。スマホオーダーやセミセルフレジを導入する狙いは、単なる省人化ではない。待ち時間を短縮し、客席稼働率を高めることで、限られたランチタイムでもストレスなく食事を楽しめる環境を整えることにある。
さらに、店舗デザインも一新。従来なら50席以上詰め込める空間を、あえて38席に抑えた。カウンターでも一人あたりのスペースを広く確保し、隣席との距離感に配慮。木材を基調とした落ち着いた内装とセミクローズドキッチンが、ステーキに集中できる“没入空間”を生み出している。ランチだけでなく、ディナータイムではより存分にその没入感を味わえるだろう。
焼きの常識を覆す、“スチームコンベクション”という選択
最大の変革は調理工程だ。いきます!ステーキの店舗の象徴である従来のチャコールブロイラーを廃し、スチームコンベクションオーブンを導入した。これにより、260度の高温を安定的に保ち、3~4分で一度に20食分を焼き上げることができる。
また、職人の経験値に左右されがちだった焼きムラも解消した。
人材の入れ替わりが激しい飲食業界において、一定水準のクオリティを担保し、「いつ来ても同じ満足」を叶える姿勢が見えてくる。
【実食】定番の「ワイルドステーキ」&新メニュー「骨付きリブロース」
ここからは実食パート。まずは王道のワイルドステーキ(右)。
赤身主体ながら、噛むほどに肉汁が広がり、ペッパーベースソースとの相性は健在だ。スチームコンベクション調理により、表面は香ばしく、中はしっとり。従来よりも火入れの均一さが際立ち、安定感のある一皿に仕上がっている。
わさび・塩をちょこっと乗せて食べると、脂の甘みがより引き立った。
そして今回の目玉が骨付きリブロース(左)。
正直、価格はいきなり!ステーキの中では高めだが、その存在感は圧倒的。
ゆず醤油とにんにくペーストとの相性が抜群で、骨周りの旨みとリブロース特有のコクが増した。ディナータイムで、シェアして楽しむにも最適だ。
「量」から「価値」へ、第二章で再び選ばれるブランドへ
500店舗規模から169店舗へとスリム化を経たいきなり!ステーキは、いま財務基盤を安定させ、新たな成長フェーズに入った。
過度な拡大ではなく、マーケティングと体験設計に基づく出店。その象徴が、この神田店だ。量で驚かせる時代は終わった。
これからは、限られた時間の中でどれだけ満足できるか。その問いに、同店は明確な答えを提示している。
神田のランチ激戦区で、この“新ステーキ体験”がどこまで浸透するのか。第二章の行方に、注目したい。
構成/DIME編集部







DIME MAGAZINE




















