アマチュアレーサーから女優へ転身という異質なキャリアを持つ高島礼子さん。バイクや車にハマったきっかけは、「もっと色々なところへ行って違う世界を見てみたい」という人一倍強い「好奇心」からだったといいます。その旅心は今も健在です。年齢を重ねさらに心の拠り所になったという「旅」の話を語っていただきました。
【高島礼子のMe Time, Tea Time】
第12回(最終回) 60歳からの「旅」
■「高島礼子のMe Time, Tea Time」記事一覧はこちら
私の旅スタイルは、結構、行き当たりばったりなんです。自分が興味があってそこに行きたい、ではなくて、行ってみて初めて「面白い!」ってハマってしまうような旅。友人が「週末に旅行する」って聞くと、「じゃあ私も一緒に行く」って便乗してついていったり(笑)。ふらっと気軽に、自由に旅するのが好きなんです。
「自由」という感覚を知った16歳の夏
そもそも旅が好きになったのは、16~17歳の頃。バイクに興味を持ったのがきっかけでした。当時住んでいた横浜の実家は閑静な住宅街で、どこに行くにもバスに乗って駅まで行かなければならない不便な場所にありました。人一倍好奇心が強かった私は、「もっと自由に色々なところに行って、違う世界を見てみたい」といつも考えていました。そんな時、出会ったのが50ccの原付バイクです。
16歳になった夏に原付免許をとり、バイクに乗りはじめると、生活は一変。今みたいにガソリンが高くないので、行きたいところにどこでもいけるでしょ。湘南のドライビングコースを走ったり、横浜の山下公園に行ったり。ときには箱根の方まで遠出することもあって、一気に私の行動範囲が広がりました。「自由」という感覚を、このときはじめて知ったような気がします。
還暦を過ぎた今、さすがにバイク旅はやっていませんが(笑)、「旅」熱は今も健在です。旅番組などの仕事であちこち行かせてもらったり、時間があればプライベートでもちょこちょこ出かけています。
じつは「旅って本当に面白い」と思うようになったのは、むしろ50歳すぎてから。それまでは仕事や父の介護のことなどが頭から離れず、素直に旅を楽しめませんでした。そんな私の脳に、「楽しみ」という隙間が、やっとできたような気がします。
好きな旅は、奈良や京都などの歴史探訪や、東北の縄文散策など、歴史がらみの旅。年齢を重ねるたび、海外より日本への興味が強まって、古の歴史に思いを馳せながら美味しいものを食べたり、地元の人と話をしたり。大人の旅を大いに楽しんでいます。
身軽さは旅の最優先事項
快適な旅をするための重要アイテムは、「靴」です。ハイキング、登山、街中のウォーキングなど、それぞれに適応した靴を選んで、中敷も変えたりしています。旅に持参するスーツケースやバッグなどは丈夫で軽いもの。機能重視で購入します。
あとなんといっても旅は「身軽さ」が重要だと思っています。だから荷物は最小限。何泊かする旅でも小型のスーツケースひとつ。とにかく重い荷物を背負って旅するより、身軽に自由な旅がしたいんです。行動範囲が広がると、心に余裕ができて楽しみも倍増しますから。
私にとって旅は、止まりかけた足を動かし前進させる、人生のカンフル剤のようなもの。自分と向き合うためにひとりになる機会を得たり、新たな出会いを呼び込んだり。これからも色々な地を旅して見識を深め、仕事や暮らしの糧にしていきたいと思っています。
高島礼子(たかしま・れいこ)
1964年、神奈川県生まれ。1988年『暴れん坊将軍Ⅲ』でデビュー。以後、ドラマ、時代劇はもちろん、舞台、CMなど、多岐にわたって活躍。2001年3月、映画『長崎ぶらぶら節』で、第24回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。2026年5月新橋演舞場にて新派・松竹新喜劇合同喜劇公演「明日の幸福」に出演。
Instagram:@reico.official
構成/松浦裕子













