「行列ができている店に入りたい」「口コミが良い商品を選びたい」――そんな気持ち、ありませんか?実はそれ、あなたの〝損したくない心理〟が働いている証拠かもしれません。
賢く節約しているつもりが、気づけば浪費につながることも……。その裏には、行動経済学が深く関わっています。
本記事では、行動経済学コンサルタントの橋本之克さんの著書『100円のコーヒーが1000円で売れる理由、説明できますか?』から一部を再編集し、企業が仕掛ける心理トリックと、それを見抜くためのヒントを紹介します。あなたの「無意識の選択」を変え、より良い人生を歩むための第一歩になるかもしれません。
「3」がマジックナンバーと呼ばれる所以
前項において、買い物における選択について解説しました。そこでは、決定麻痺や決断疲れによって、人は必ずしも正しい選択ができない状況があると述べました。
選択には、手間や労力がかかります。その負担を減らすため、スティーブ・ジョブズ氏のように、つねに同じ服を購入する行動には一定の合理性があります。
前項では買い手自身の意識に関し、さまざまな留意点や、有用な知恵を紹介しました。その一方で、売り手が用意する選択肢に関しても、知っておくべきことがあります。
選択において、人には明らかなクセがあります。一定の条件を整えれば、買い手に意識させず選択を誘導することも可能です。売り手が商品の選択肢に関して、そのクセを利用するテクニックを使えば、買わせたい商品を選ばせることも可能なのです。
まず、選択肢の数に関する知見を知っておく必要があります。人は「3つからの選択」に関して心理的バイアスが働きやすいと言われています。
「3」は日本のみならず、世界においても「マジックナンバー」とも呼ばれる特別な数字です。
たとえば「日本三景(松島、天橋立、宮島)」のように、突出したものを網羅する際に使われます。
また「三種の神器」「三人寄れば文殊の知恵」という形で、3つの集まりの完璧さや強さを表現する場合にも使われます。「上中下」「松竹梅」「金銀銅」のように、ランクづけに用いられることもあります。
ほかにも「うまい、安い、早い」という牛丼のキャッチフレーズも、3つの特徴を並べた結果、理解しやすく、覚えやすいフレーズとして浸透していると考えられます。
3つ未満では、十分ではない、網羅されていない印象を与えます。逆に4つ、5つと選択肢が増えるとともに、個々の要素を把握しにくくなっていきます。3つの要素の組合せは、安定していてちょうどいい、という印象になりやすいのです。
選択肢が3つならば、選択の幅がありながらも違いを認識しやすく、結果的に選択しやすいといえます。
「極端回避性」により人は中間を選んでしまう
3つの選択肢を前にした際、人は「中間を選びたくなる」心理に駆られます。
たとえば、品質と価格に関して、ともに低い選択肢、ともに中間の選択肢、ともに高い選択肢の3段階があったとします。すると、品質も低く価格も安い商品や、品質が高いけれど価格も高い商品は、避けられる傾向があります。両極にある選択肢ではなく、中間の無難な商品を選ぼうとするのです。
このような心理を「極端回避性」と呼びます。行動経済学者のエイモス・トベルスキーらは、カメラ購入の実験で、この心理を明らかにしました。
まず、品質も価格も低い167ドルのカメラと、それより品質と価格が若干高い240ドルのカメラから選んでもらった結果、ほぼ50%ずつに分かれました。ところが、さらに品質も価格も高い467ドルのカメラを選択肢に加えると、57%が中間の240ドルのカメラを選んだのです。
残りの22%が167ドルを、21%が467ドルを選びました。2つの選択肢に1つ加えて3つにしたとたん、中間の選択肢がほかの2倍以上の人気となったのです。
「3つの選択肢」に関しては、行動経済学者のダン・アリエリーが、また別の実験をしています。米国マサチューセッツ工科大学の学生を対象に、A、Bという異なる2タイプの顔写真を比べて人気投票をしたのです。タイプは違うものの、ともに高い人気を得そうな2人です。
その際さらに、もう一つ新たなパターンを加えました。どちらかの顔写真の画像を加工して、バランスを崩し、少し不細工にしたパターンA´とB´を作ったのです。そのどちらかを加えてA、A´、Bという選択肢、またはA、B、B´という選択肢を作り、人気投票をしました。すると、A´を入れるとAの人気が高くなり、′Bを入れるとBの人気が高まるという結果になりました。この選択をする確率は、75%と顕著に高い数値です。
つまり、3択の中にあえて魅力のない選択肢を入れることで、それと似た別の選択肢の魅力を高められることが示されました。この心理は「おとり効果」と呼ばれています。
これらの実験からわかるように、人の選択は、「選択肢の作り方」に影響されやすいのです。3種類から選択するメニューや商品ラインアップは、実際にネットショップや飲食店などでしばしば見かけることができます。それらの選択肢において、売り手が意図的な調整を加えている可能性があるのです。







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