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ストレス発散のための「衝動買い」をなくす方法

2026.01.26

「行列ができている店に入りたい」「口コミが良い商品を選びたい」――そんな気持ち、ありませんか?実はそれ、あなたの〝損したくない心理〟が働いている証拠かもしれません。

賢く節約しているつもりが、気づけば浪費につながることも……。その裏には、行動経済学が深く関わっています。

本記事では、行動経済学コンサルタントの橋本之克さんの著書『100円のコーヒーが1000円で売れる理由、説明できますか?』から一部を再編集し、企業が仕掛ける心理トリックと、それを見抜くためのヒントを紹介します。あなたの「無意識の選択」を変え、より良い人生を歩むための第一歩になるかもしれません。

今すぐ欲しいという心理に働く「時間割引率」

 下の「ビジネスパーソンの疲れとストレスに関する調査」をご覧ください。

 ビジネスパーソンが「ストレスが溜まりすぎたときに、思わずやってしまったこと」ベスト5において、1位は「やけ食いした」(27.9%)、2位は「お酒を飲みすぎた」(21.9%)、3位は「買い物で散財しすぎた」(19.8%)、4位は「号泣した」(17.2%)、5位は「家族に暴言を吐いた」(11.8%)という結果です。

 ストレスが溜まりすぎた状態での「買い物」は、予定にもとづく行動ではないでしょうから、「衝動買い」と考えられます。

 過食、飲酒、号泣、暴言といった行動と並んで、衝動買いは、ストレスが限界に至ったときに起こしてしまう行動の一つです。読者のみなさんも、経験があるかもしれません。

 買い物の行動は、大まかに「計画購買」と「非計画購買」に分かれます。事前に品質や価格などを調べ、十分な準備をしておこなう買い物は「計画購買」です。

「衝動買い」は、買う予定はないのに、思いつきや一時の欲求にしたがって、よく考えずに買ってしまう「非計画購買」の一つです。衝動買いのような、買いたくなったときに我慢ができない心理には、行動経済学における「時間割引率」が関わっています。

 もし、何か価値あるものを手に入れるならば、早いほうがいいと考えるのは万人に共通する心理でしょう。先延ばしすると、何らかの障害が生じて手に入らなくなるリスクがゼロではないのですから。

 このように、手に入るタイミングにより、人が感じる価値は変わるのです。

 将来、手に入る場合の価値が、今すぐ手に入れる場合の価値と比べて、どのくらい低くなったか(割り引かれたか)を示す率が「時間割引率」です。仮に「1年後に1万円を渡します。1年待てない場合は9500円に減ります」と言われて、「今すぐ欲しい」と考えたならば、1年後の1万円の価値は500円分割り引かれたことになります。

 時間割引率は人によって、また状況によって変わります。9000円に減ってもいいから、とにかくすぐに欲しいと思う人もいれば、それだけ減るならば1年後まで待つという人もいるでしょう。また、もらえる額が9000円ではなく9800円ならば、金額が減っても今もらうという人は増えるでしょう。

 待つことができる人は、9000円に減っても今すぐ欲しいという人よりも「時間割引率が低い」人です。時間割引率が低い人は、自制心が強い人といえるかもしれません。逆に時間割引率が高いのはせっかちな人です。

目の前の価値を過大評価していないか?

 さらに「現在志向バイアス」も影響しています(「現在志向バイアス」については、本章で後ほど詳しく説明します)。人は目の前にある事柄を実際以上に評価してしまうのです。現在志向バイアスは時間割引率にも関係していて、この影響を受けやすい人は、時間割引率が高い人だと考えられます。

 たとえば、目の前の酒や煙草を楽しむことの方が、将来の健康よりも高い価値があると考えてしまう人です。ほかに「夏休みの宿題のやり方」でも時間割引率を判別できます。宿題を早く終わらせ、夏休み後半をのびのび過ごそうとする人は、将来の時間の価値が高いと判断する人です。つまり、現在志向バイアスの影響を受けにくく時間割引率が低い人です。

 逆に、今すぐ遊びたいと考えて宿題を後回しにする人は、現在志向バイアスの影響を受けやすく、時間割引率が高い人です。

 では、買い物で考えるとどうでしょう。先まで我慢するのでなく、今すぐ手に入れようとする買い方が衝動買いです。したがって、衝動買いをしやすいのは時間割引率が高い人と考えられます。あなた自身はどうでしょうか?

 普段、時間割引率を意識することはないかもしれません。ただ、もし自分が、せっかちすぎるとか、我慢強くないと思うのであれば、自身の時間割引率を意識するといいかもしれません。時間割引率が低い自分になるよう想像するのです。

「今やりたいことや欲しい物は、本当に今でなければダメなのだろうか」「先になったとしたら、大きく価値が下がるのだろうか」と自分に問いかけるのです。

 自分の目の前にあるものから、一度目をそらして考えることにより、衝動的な買いたい気持ちを抑えられるでしょう。

衝動買い=絶対的な悪ではない

 さて、ここまで衝動買いはあまりよくない行動であるかのように述べてきました。

 もちろん、衝動買いによって、お金を使いすぎたり、不要な物を買ってしまったりするのはよくないことです。

 しかし、衝動買いは、絶対的に悪い行動ではないと私は考えています。衝動的に買ったからといって、すべての買い物が誤りであるとは限らないのです。

 買い物というものは、何かを買ってしまえばすべてが終わるわけではありません。買った時点とは、買った物を実際に利用する時間の始まりでもあるのです。

 その買い物がよかったか悪かったかは、利用した結果で判断されるべきです。事前にきちんと計画を立てて買う場合でも、失敗はあります。逆に、衝動買いで買ったとしても、利用した結果が満足ならば、それは悪い買い物ではなかったといえるのです。

 このように買い物の「結果」は重要なのですが、買い物の「過程」における満足も無視はできません。

 そもそも買い物は、単に必要なものを調達するためだけの行動ではありません。買い物すること自体が人にとっての楽しみであり、心理的な快楽です。

 望むモノやコトを探して手に入れる行為、自分の暮らしや人生に役立つ何かを見つけ出す行動は、もしかしたら、生きる糧を得る狩猟行為などにも通じるかもしれません。

 買い物が快いからこそ、冒頭のデータで紹介したように、ストレスが溜まりすぎたときに、思わず衝動買いをしてしまうのでしょう。買い物の楽しさがストレスを中和してくれるのだと考えられます。

 ストレス時の衝動買いは、家族への暴言より害はありません。健康を損なう過食や飲酒よりも、マシな行動と考えてよいでしょう。

 であれば、金額や頻度が過度になりすぎない限り、ある程度は認めてもいいとも考えられます。

買い物のプロセスをコントロールしよう

 最も重要なことは、手に入れたものの利用まで含めて最終的に満足して買い物を終えることです。そのために、買い物のプロセスを自らコントロールできれば理想的です。

 プロセスの中心は、情報収集や、買うかどうか判断するまでの検討作業です。簡単にいえば、買おうとする商品についてよく知り、よく考えることです。

 当たり前のように聞こえるかもしれませんが、人は意識せず偏った思考をしてしまいがちです。情報もないまま、ひたすら悩むことがあるかもしれません。

 また、商品のことがわかってきたけれど、欲しいかどうかわからなくなってしまうこともあるでしょう。

 そのような事態を避けるために、マーケティングにおける知見「AIDMA理論」を活用してはどうでしょう。1920年代の米国において、販売や広告の実務書著作者だったサミュエル・ローランド・ホールによって提唱された概念です。

 これは、買い手の購買決定プロセスを説明するためのフレーム(考え方の型)で、Attention(注意)、Interest(関心)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(行動)と、それぞれのプロセスの頭文字を取って名付けられています。

 この理論は、マーケティングに携わるビジネスパーソンなら、ご存じの方が多いかもしれません。しかし、一般の人にはあまり知られていないでしょう。

 本来は、ビジネスで売り手が買い手の意識や行動を分析し、販売戦略を組み立てる際に活用する理論です。商品を売るために注意を引き、関心を持たせ、欲しいと思わせ、記憶させて、店頭に向かわせて購買行動に至らせるステップなのです。

 売り手が使う場合は、このフレームをもとに販売促進の戦略を構築します。

 たとえば、商品のどの特徴をアピールすれば注目されるか、どんなイメージをつければ欲しいと思ってもらえるか、どのような売り場にすれば買いやすいかなど、方策同士の関連を考慮しながら組み立てるのです。

「AIDMA理論」を活用して買い物の質を上げる

 ここでは「AIDMA理論」を、買い手側が自分の行動をコントロールするために活用することを提案します。よりよい買い物をするため、意識的に活用するのです。

 まず、自分が注意を引かれ、関心を抱いた商品について調べていきます。知識が増えるとともに、自分が本当に欲しいかどうかがわかってきます。

 もし欲しいと思えれば、自然と記憶に残ることでしょう。最終的に買おうと決心したならば、実際にどこで買えるか、いくらで買えるかといった、現実的な情報を手に入れて購買に至るわけです。

 このプロセスを経るなかで、自分が目を引かれた商品にはどんな特徴があるのか、類似商品はあるのか、どこで買えばいい条件で入手できるか、といった有用な情報を得ることになります。

 この情報収集の過程で、注目すべき商品か、関心を持つに足るか、本当に欲しいのか、といったことも自然に考えるはずです。

 考えるうちに、じつは必要がなかった商品だったとか、さほど欲しくなかった商品だったと気づくこともあります。一時的に盛り上がった気持ちがおさまって、冷静に判断できるようになるのです。プロセスの途中でストップした場合、実際に買うほどの価値はなかったのだと判断していいでしょう。

 欲しい商品の情報を調べて買おうと判断しても、価格や付帯サービスなどの条件が悪く、実際の購入を保留することもあるでしょう。それでも一度、情報収集しておけば、何かの拍子に好条件のものを見つけて、即座に買うことも可能です。

 その場合、傍から見ると衝動買いに近いかもしれませんが、情報収集のプロセスを経ているので悪い買い方ではありません。買うまでに至るプロセスを大切にすることで、最終的に満足できる買い物につながります。

 ただし、若干時間はかかりますので、すべての買い物で、こうしたプロセスをたどるのは無理があります。

 買い物の中でも、よりよい商品、より自分に合う商品を探し回って買う「買い回り品」の場合に活用するのがいいかもしれません。たとえば、車、パソコン、家電など長く使うものです。

 逆に、買いやすい近所での購買が多い「最寄り品」と呼ばれる商品の場合は、時間をかけて調べても発見が少ないかもしれません。典型的な商品は、洗剤、石鹸、歯磨き粉などの日用品で、機能がシンプルで、メーカーやブランドごとの違いが比較的少ないからです。

 結論として、衝動買いが単純に悪いわけではありません。ただし人の心理には「時間割引率」が影響することを認識しておく必要があります。もし、自分自身の時間割引率に問題があると感じるならば、これを低くしていくよう試みるのがいいでしょう。

 繰り返しますが、買い物において重要なのは、最終的な利用まで含めての満足です。買い方という入り口が衝動的であっても、買った物に間違いがなければいいのです。

 そこでの間違いを減らすためには、ある程度の時間や手間が必要になります。自分なりにメリハリをつけて、重要な買い物においてはAIDMAのプロセスを使ってみてください。

【ポイントまとめ】「時間割引率」を意識すると衝動買いの失敗を減らせる

☆ ☆ ☆

いかがだったでしょうか?

「損したくない」と思う気持ちが、無意識に「誘導された選択」を取ってしまう心理トリックにつながっているかもしれません。

行列や口コミに惹かれるのも、企業が仕掛ける〝行動経済学の罠〟の一部かも?知らないままでは、賢いはずの節約が浪費に変わってしまいます。

自分の思考のクセを知り、仕掛けを見抜く力を身につけるためのヒントが詰まった一冊をぜひ書店やオンラインでチェックしてみてください!

『100円のコーヒーが1000円で売れる理由、説明できますか?』
橋本之克 著
アスコム刊
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著者/橋本之克
行動経済学コンサルタント/マーケティング&ブランディング ディレクター
東京工業大学卒業後、大手広告代理店を経て1995年日本総合研究所入社。自治体や企業向けのコンサルティング業務、官民共同による市場創造コンソーシアムの組成運営を行う。1998年よりアサツーディ・ケイにて、多様な業種のマーケティングやブランディングに関する戦略プランニングを実施。「行動経済学」を調査分析や顧客獲得の実務に活用。
2018年の独立後は、「行動経済学のビジネス活用」「30年以上の経験に基づくマーケティングとブランディングのコンサルティング」を行っている。携わった戦略や計画の策定実行は、通算800案件以上。
昭和女子大学「現代ビジネス研究所」研究員、戸板女子短期大学非常勤講師、文教大学非常勤講師を兼任。『世界は行動経済学でできている』(アスコム)、『世界最先端の研究が教える新事実 行動経済学BEST100』(総合法令出版)、『ミクロ・マクロの前に 今さら聞けない行動経済学の超基本』(朝日新聞出版)などの著書や、関連する講演・執筆も多数。

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