都合のいい情報だけを集める「確証バイアス」の罠
Web情報が氾濫する状況では、買い物に役立つ情報が欲しいと思いながらも、情報が多すぎて探しきれないという「板挟み」状態に陥ります。
この状況で情報選択をおこなう際、最も気をつけるべきは「自分に都合のいい情報だけを選んで参考にする」という行動です。
行動経済学では、このような傾向を「確証バイアス」と呼びます。

バイアスとは、人の思考や判断に特定の「偏り」をもたらす要因です。確証バイアスとは、自分にとって都合のいい情報ばかりを無意識に集めてしまい、それに反する情報を集めようとしなかったり、無視したりする行動です。
典型的かつ身近な例として、血液型による性格診断があります。
たとえば、「A型は几帳面だ」という先入観がある人は、几帳面なA型の人に接しても疑問を持ちませんが、ずぼらなA型の人に接したときには、「その人は例外的なA型なのだ」と判断するでしょう。それは、自分の思い込みに合う情報ばかりを重視してしまうからなのです。
買い物においても、買うべきかやめるべきかの判断するための情報をネットでチェックしているようで、よく考えると「すでに買うことを決めていて、その背中を押してくれる都合のいい理由を探している」といったことがあります。
似たケースで、自分がすでに買った商品の評判を検索して調べるという人もいます。
一度買ったものを手放したり、買い換えたりするために調べるのではありません。自分の選択が正しかったことを確認するための行動なのです。このときも、買ったことが失敗だったとわかる情報よりも、その商品がよく評価されている情報を積極的に受け入れる傾向があります。
買い物をする際に、膨大な情報をすべて網羅して判断することは不可能ですから、そもそも情報収集時点で偏りが生まれる可能性があります。その状況はコントロールできません。
しかし、情報の取捨選択時に確証バイアスを避けることはできます。その影響を無意識のうちに受ける可能性を、自分で認識しておけばいいのです。
情報収集は「区切り」が肝心
確証バイアスの影響を受けないためのポイントを2点お伝えします。
(1)ネット依存状態での情報収集は避ける
(2)自分に都合のいい情報ばかり集めない
これらに留意すれば、有用な情報を得ることができ、よりよい買い物が可能になるでしょう。
さらに、情報収集をスムーズにおこなうためには、自分なりに、常日頃からチェックするべきWebサイトの目星をつけておくといった準備をすることです。大量のWebサイトからの情報を、効率的に取捨選択するのです。
これらと併せて、認識していただきたいことがあります。買い物の手法以上に重要な大前提です。それは「人は完璧な買い物などできない」という認識です。
買い物に必要な情報収集とは、どんなものでしょう。まず、買うべき商品やブランド、自分に合うタイプやサイズなどを絞り込む必要があります。
さらに、その商品を販売しているECサイトなどをすべてチェックし、在庫の有無、それぞれの定価と値引き後の価格、付与されるポイント、キャンペーンの特典、送料などを、すべてチェックする必要があります。
どこで買うのがいちばん得するかを選択することは、理屈上は可能です。
しかし、そのためには膨大な時間がかかりますし、調べきれず翌日に持ち越した瞬間に、販売条件が変わるといった可能性もあります。したがって、完璧な情報収集は不可能なのです。
ならば、自分自身で情報収集にどれだけの労力や時間をかけるか決めなければなりません。「これ以上の時間をかけるより、ほかのことに時間を使おう」といった割り切りが必要です。
どこまで情報を収集できるかは、個人の状況によって異なるでしょう。自分で意識して範囲を決め、納得すれば、それでいいのです。自分でプロセスをコントロールするのであれば、その結果は決して「ダメな買い物」ではありません。
【ポイントまとめ】ネット依存と確証バイアスは冷静な選択をゆがめる
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いかがだったでしょうか?
「損したくない」と思う気持ちが、無意識に「誘導された選択」を取ってしまう心理トリックにつながっているかもしれません。
行列や口コミに惹かれるのも、企業が仕掛ける〝行動経済学の罠〟の一部かも?知らないままでは、賢いはずの節約が浪費に変わってしまいます。
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行動経済学コンサルタント/マーケティング&ブランディング ディレクター
東京工業大学卒業後、大手広告代理店を経て1995年日本総合研究所入社。自治体や企業向けのコンサルティング業務、官民共同による市場創造コンソーシアムの組成運営を行う。1998年よりアサツーディ・ケイにて、多様な業種のマーケティングやブランディングに関する戦略プランニングを実施。「行動経済学」を調査分析や顧客獲得の実務に活用。
2018年の独立後は、「行動経済学のビジネス活用」「30年以上の経験に基づくマーケティングとブランディングのコンサルティング」を行っている。携わった戦略や計画の策定実行は、通算800案件以上。
昭和女子大学「現代ビジネス研究所」研究員、戸板女子短期大学非常勤講師、文教大学非常勤講師を兼任。『世界は行動経済学でできている』(アスコム)、『世界最先端の研究が教える新事実 行動経済学BEST100』(総合法令出版)、『ミクロ・マクロの前に 今さら聞けない行動経済学の超基本』(朝日新聞出版)などの著書や、関連する講演・執筆も多数。







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