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賢く選んだつもりが浪費に? 行動経済学が暴く〝調べすぎ〟の罠

2025.12.26

「行列ができている店に入りたい」「口コミが良い商品を選びたい」――そんな気持ち、ありませんか?実はそれ、あなたの〝損したくない心理〟が働いている証拠かもしれません。

賢く節約しているつもりが、気づけば浪費につながることも……。その裏には、行動経済学が深く関わっています。

本記事では、行動経済学コンサルタントの橋本之克さんの著書『100円のコーヒーが1000円で売れる理由、説明できますか?』から一部を再編集し、企業が仕掛ける心理トリックと、それを見抜くためのヒントを紹介します。あなたの「無意識の選択」を変え、より良い人生を歩むための第一歩になるかもしれません。

大量の情報は「脳疲労」のもと

 今や、買い物の際にネットで情報収集するのは常識と言っていいでしょう。

 もちろん、店頭で実物を見る、店員に話を聞くなどで得られる情報もあります。ただし、その情報量には限界があります。

 ネットならば、すでに商品を購入した人の評点やレビュー、専門家の批評、細かい機能や特徴など、多様な情報が得られます。事前に商品について正確に把握できれば、よりよい買い物が可能になるのです。

 買い物のみならず、ネットからの情報収集は、今や生活のあらゆる場面において不可欠です。いつでもどこでも入手できる便利さや情報量の多さによって、生活のインフラになったと考えていいでしょう。

 振り返れば、過去にネットを通じた情報収集を表す言葉として、「ネットサーフィン」というものがありました。興味のおもむくままにWebサイトを次々と閲覧する行動を、果てしなく広がる海の上を滑るように進むサーフィンになぞらえたのです。

 この言葉は、インターネットが普及し始めた1990年代に流行したものです。

 しかし、この楽しさや爽快感を醸し出すポジティブな言葉は、すでに死語になったといわれます。

 現代では、ネット上の情報が膨大な量となって、便利さが増す一方、必要な情報を選び出すことが難しくなってしまいました。情報の海を軽快にサーフィンするのでなく、むしろ、情報の波におぼれかけてしまう人が増えてきたようです。

 また、ネットの技術や普及のスピードが速く、急激に浸透したこともあり、セキュリティなどの未整備な部分が残されています。ゆえに、利用の仕方は難しくなっています。

 たとえば「ネット依存症」の問題です。ネットを利用する時間を自分でコントロールできない、利用を控えようとするとイライラする、家族や友人との人間関係が損なわれる、仕事や勉強がおろそかになる、などの症状を訴える人が増えてきたのです。

 脳科学者からは、Webサイトを見る行為自体が脳を刺激し、やめられなくなる危険があると指摘されています。脳内で分泌される「ドーパミン」という、動機づけや快感などと関わりの深い神経伝達物質が影響するのです。

 多種多様なWebサイトの情報を目にすることは、脳にとって新鮮な刺激です。これらに注意を引かれて刺激を繰り返し受けるとドーパミンの分泌がうながされます。

 さまざまな色やデザインで工夫され、興味深いコンテンツが含まれるWebサイトを繰り返し見るうちに、以前の分泌量では満足できず、より強い刺激を求めるようになるのです。これは、ギャンブルや薬物の依存症などとまったく同じ仕組みです。

 この状態でさらにWebサイトを見続けると、脳がダメージを受け、過労状態となります。視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感からの情報は、脳内の前頭葉と呼ばれる場所で取捨選択され整理されますが、情報が多すぎると、処理しきれずに未整理の混乱状態になるのです。

 すると、思考や意思決定、記憶や感情を司る脳の前頭前野の機能が低下します。そして、単純なミスが増える、物覚えが悪くなる、イライラして怒りっぽくなる、意欲や興味がわかないなどの問題が生まれてしまうのです。

いつのまにか「見続けること」が目的になる

 買い物での利用にとどまらず、スマホやタブレットなどのデジタル機器によるWebサイトの閲覧は、その刺激によって依存症をもたらす危険性があります。便利な情報収集の方法ではあるけれど、注意が必要です。

 とはいえ、買い物においては、情報収集からネット通販まで、ネット利用は増える一方です。たとえば楽天やアマゾンなどのネット通販サイトで商品を検索すれば、価格はもちろん、機能や特徴まで確認でき、購入者のレビューも読めて、その後にすぐ購入できます。

 こういった利便性の高さによって、米国などでは、アマゾンがさまざまな業界で既存の小売業のシェアを奪う「アマゾン・エフェクト」などの現象も起こっています。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響で、リアルな店舗が営業活動を自粛せざるを得なかった状況をきっかけとして、ネットの影響力は高まっています。

 Webを用いた買い物の情報収集も、頻繁におこなわれるようになりました。しかし、そこで新たな問題が生まれています。情報量が〝多すぎる〞ということです。

 多数のWebサイトを見続けたにもかかわらず、買いたい商品に関して本当に必要な情報が得られない、買うかどうかの判断を下せないという状況が、しばしば起こります。情報の量が多すぎて、本当に必要な情報が探し当てられないのです。

 そのため、多くのWebサイトにアクセスします。そのうちに脳が大量の刺激を受け、やめられなくなるのです。買い物の情報収集が目的なのに、いつのまにかWebサイトを見続けることが目的のようになり、ただただ見続けて、脳は過労状態になってしまうのです。

 実際にWebサイトで情報収集している最中は、脳の疲労を感じにくく、漠然と集中した気がします。しかし、じつは脳内のドーパミンが気分に影響しているだけで、必ずしも有用な情報が収集できていないことが多いのです。

 こうして、時間をかけたにもかかわらず、情報は不足したままという結果に終わり、結局買う決断もできません。

 すると、あらためて次の機会にまたWebサイトを見ることになります。その結果、パソコンやスマホに向かう時間だけが増えていくといった状態になるのです。

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