『煮え湯を飲まされる』の正しい意味と誤用例、ビジネスでの使用場面を解説します。また、使用時の注意点や、似た意味合いで使われるほかの慣用句との使い分けも確認しましょう。
目次
「煮え湯を飲まされる」の意味と間違った使い方
まずは、『煮え湯を飲まされる』という慣用句が、本来どんな意味を持つのかを確認しておきましょう。また、どのような使い方が間違いとされているのかも気になるところです。
文化庁が公表している世論調査の結果や、実際によく見られる誤用例も併せて紹介します。
■信頼していた人からの裏切りを表す
『煮え湯を飲まされる』は、信頼していた人から裏切られ、ひどい目に遭わされることを表す慣用句です。単なる敵対者ではなく、心を許している相手であるからこそ、無防備な状態で受ける衝撃が何倍にも増幅されます。
例えば、親しい友人に秘密を暴露されたり、頼りにしていた上司に手柄を横取りされたりするような状況が該当します。重要なポイントは、『信頼関係があったからこそ生まれる裏切り』という点です。
由来は、信頼していた人から勧められた飲み物を疑わず飲んだら、実は煮え立つ熱湯でひどい思いをしたことから来ているとされます。
熱湯とは気付かずに飲んでしまう激しい痛みと、思いがけない裏切りによる心の痛手を重ね合わせた比喩として、この慣用句が使われるようになったと考えられています。
■よくある誤用パターンと間違い例
文化庁の『令和5年度 国語に関する世論調査』によると、『煮え湯を飲まされる』の意味を『敵からひどい目に遭わされる』と回答した人は24.4%です。
『信頼していた相手からの裏切り』と回答した人は68.5%であり、全体では正しい意味を理解している人の方が多いものの、誤用も少なくありません。
若い世代ほど、誤って理解している傾向があります。16〜19歳では、正しい意味である『信頼していた相手からの裏切り』と回答した人が43.4%であるのに対し、『敵からひどい目に遭わされる』と回答した人は51.8%と、誤用の方が多い結果でした。
ビジネスシーンでの使用場面と注意点

職場や取引先との関係で『煮え湯を飲まされる』を正しく使うには、どのようなポイントに注意すべきなのでしょうか。ここでは、具体的な使用場面や注意点について詳しく解説していきます。
■職場での上司・部下・取引先関係における使用例
職場での上司・部下・取引先などの関係において『煮え湯を飲まされる』を使用する際は、信頼関係があることが前提となります。
【例文】
- 信じていた部下が競合他社に情報を売ったという話を聞き、煮え湯を飲まされる思いだった
- 親身になって話を聞いてくれていたはずの上司が、実は周囲に適当なことを言いふらしていたと分かり、煮え湯を飲まされたように感じた
一方で、単に上司から理不尽な扱いを受けたり、元々関係性の薄い同僚から嫌がらせを受けたりした場合は、信頼関係が構築されていないため『煮え湯を飲まされる』の使用は不適切です。
いずれにしても職場で発言する場合には、悪口や言いがかりと捉えられないよう配慮が求められるでしょう。
■使用時のマナーと相手を不快にさせない表現方法
『煮え湯を飲まされる』を使用する際は、相手を不快にさせない表現方法が重要です。この言葉には強い感情が込められており、使い方次第では周囲にネガティブな印象を与えてしまう可能性があります。
第三者に話す場合は、「信頼していた相手との関係が悪くなり困っている」といった穏やかな言い回しを使用した方が、スムーズに経緯を説明できるでしょう。
特に注意した方がよいのが、公の場での発言です。会議や報告書では『予期せぬ事態に直面している』など、より客観的な表現に言い換えることが大切です。また、相手が特定される可能性がある状況では、この表現自体を避ける配慮も求められます。
「煮え湯を飲まされる」と類似の意味を持つ慣用句

『煮え湯を飲まされる』と似た意味を持つ表現は数多く存在しますが、それぞれニュアンスや使う場面が少しずつ異なります。最後に、類似表現の意味と使い分けについて詳しく見ていきましょう。
■目下の相手からの裏切り「飼い犬に手を噛まれる」
『飼い犬に手を噛まれる』は、普段から世話をしている者や、目下の者から裏切られることを表す慣用句です。この表現は『煮え湯を飲まされる』とよく似ていますが、重要な違いがあります。
『煮え湯を飲まされる』が信頼関係全般における裏切りを指すのに対し、『飼い犬に手を噛まれる』は自分が目をかけて世話をしている人からの裏切りを表現する言葉です。
『飼い犬』という表現から、相手を自分より下に見ていると捉えられる可能性があるため、使いどころには注意しましょう。
■別れ際の裏切り「後足で砂をかけられる」
『後足で砂をかけられる(あとあしですなをかけられる)』は、恩を与えたにもかかわらず、去り際に迷惑をかけられることを表す慣用句です。犬や馬が走り去るとき、後ろ足で砂を蹴り上げて、周囲を汚す様子を例えたのが語源だとされています。
『煮え湯を飲まされる』と異なる点は、『後足で砂をかけられる』が特に『去り際』『別れ際』の行為に焦点を当てていることです。
単なる仕返し・復讐とは異なり、世話になった人や恩義のある関係であるにもかかわらず、去り際に迷惑をかけるような行動を指します。
■世話をした相手からの裏切り「恩を仇で返される」
『恩を仇で返される(おんをあだでかえされる)』は、親切・恩恵を与えたにもかかわらず、害や迷惑という形で返されることを意味する慣用句です。
恩を受けた側が加害者となる点で『煮え湯を飲まされる』と共通していますが、強調しているポイントには違いがあります。
『煮え湯を飲まされる』は、裏切られた側の驚き・ショックといった被害者の感情を強く表します。一方の『恩を仇で返される』は、恩を無視して害を与える、加害者の道徳的な問題を批判するニュアンスが強い表現です。
「煮え湯を飲まされる」の正しい使い方を覚えよう

信頼していた人からの裏切りを表す『煮え湯を飲まされる』の正しい意味と、よくある誤用パターンを解説しました。文化庁の調査では、若年層ほど誤用が多い傾向にあるため、正しい意味を理解しておくことが重要です。
職場での人間関係において、この表現を適切に使用することで、より豊かなコミュニケーションが可能になります。ビジネスシーンでは相手を不快にさせない配慮を心がけ、類似表現も把握しておき、必要に応じて言い換えも検討しましょう。
構成/編集部







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