『喉元過ぎれば熱さを忘れる』は、困難や痛みが過ぎ去ると、その苦しさをあっさり忘れてしまう人間の性質を表すことわざです。日常生活での使い方や、類義語・対義語を紹介します。
目次
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」の意味と由来
『喉元過ぎれば熱さを忘れる』ということわざは、人間の心理と記憶の関係を的確に表現した言葉です。まずは、意味や由来、英語での類似表現ついて見ていきましょう。
■困難や苦しみも過ぎると忘れるという意味
『喉元過ぎれば熱さを忘れる』は、苦しみやつらさが過ぎ去ると、その感覚をすぐに忘れてしまう人間の心理を端的に表したことわざです。
例えば、締め切りに追われて徹夜で作業した苦労も、終わってしまえばすぐに忘れ、同じことを繰り返してしまうような経験を持つ人もいるでしょう。
また、苦しいときに助けてくれた人への感謝も薄れていくという意味で、使われることもあります。人はどれほど強い感情を伴う出来事でも、時間の経過とともにその記憶が薄れていきやすいといわれています。
こうした人間の忘れっぽさを、やや皮肉を込めて戒めているのが『喉元過ぎれば熱さを忘れる』です。
■熱い飲み物の生理的反応から生まれた比喩表現
『喉元過ぎれば熱さを忘れる』は、熱い飲み物が喉を通るときには強い熱さを感じても、飲み込んでしまえば、その感覚をすぐに忘れてしまうという体験になぞらえたことわざです。
苦しい経験や受けた恩も、その場を抜け出してしまうと忘れがちな人の性質を表しています。誰もが経験する身近な身体感覚で人の心理を表した、日本に古くから伝わる比喩表現といえるでしょう。
■英語での表現
文化や言語は違っても、『危険が去ると感謝や教訓を忘れてしまう』という人間の心理を戒める表現は、英語など他の言語にも見られます。英語での類似表現には、以下のような言い方があります。
- Danger past, God forgotten.(危険が去ると神を忘れる):困難なときには神に祈るのに、安全になるとその存在や感謝を忘れてしまう
- When pain is gone, it’s soon forgotten.(痛みが消えると、すぐに忘れられる):苦しいことも、終われば忘れ去ってしまう
日常生活での使い方や例文

ことわざは知っていても、日常生活ではあまり使わないという人もいるでしょう。しかし、ことわざをうまく使うことで、状況をより分かりやすく伝えられるケースもあります。ここでは、具体的な使い方を例文とともに紹介します。
■ミスや失敗を繰り返す意味で使う場合
同じミス・失敗を繰り返す人を指して、『喉元過ぎれば熱さを忘れる』が使われることもよくあります。一度は反省したように見えても、時間がたつとそのときの痛みや大変さを忘れ、また同じ行動を取ってしまうような状況を的確に表現できます。
- 大きなクレーム対応で苦労したばかりなのに、数週間たつと喉元過ぎれば熱さを忘れるように気が緩んでしまう
- 体調を崩して反省していたはずなのに、喉元過ぎれば熱さを忘れるのか、無理な働き方に戻ってしまった
■恩義を忘れがちになる意味で使う場合
助けてもらったときのありがたさや、人から受けた恩も、時間がたつと忘れてしまうことに対しても使われます。助けてもらった直後は深く感謝していても、少し時間がたつとその気持ちが薄れ、相手への配慮が欠けてしまうような場面を表すときにも適しています。
- 先輩に助けてもらった経験があるのに、喉元過ぎれば熱さを忘れるのか、感謝の言葉さえ出てこない
- あれほど感動して「一生忘れません」と言っていたのに、今では喉元過ぎれば熱さを忘れるような態度になってしまっている
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」の類義語

次に、似た意味を持つ類義語も知っておきましょう。同様の教訓を持ちながら、独自の比喩や視点で人間心理を表現したことわざを紹介します。
■病治りて医師忘れる
『病治りて医師忘れる』は、病気が治ると、その治療に尽くしてくれた医師への感謝を、すぐに忘れてしまうことを例えたことわざです。
『恩義を忘れる』という意味合いが強く、苦しいときに受けた恩恵も、状況が良くなると当時の苦労や助けてくれた人への感謝を、忘れてしまうことを表しています。
- あれほど助けてもらったのに、元気になると連絡一つしないなんて、まさに病治りて医師忘れるというべきだろう
- 病治りて医師忘れるというが、体調が戻った途端、支えてくれた人への気遣いが薄れてしまうことは意外と多い
■雨晴れて笠を忘る
『雨晴れて笠を忘る(あめはれてかさをわする)』とは、雨が降っているときは笠が必要不可欠でも、晴れると笠の存在すら忘れてしまう様子を例えたことわざです。
困難が過ぎ去ると、そのときに受けた恩・助けを忘れてしまう人間の性質を戒めています。『雨晴れて笠を忘る』は、恩義を忘れる側面に焦点を当てた表現です。
- トラブルのときは助けを求めていたのに、状況が落ち着くと雨晴れて笠を忘るように、協力してくれた仲間の存在を気にも留めなくなった
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」の対義語

反対の心理や姿勢を表すことわざも知っておくと、会話の幅が広がります。最後に、『喉元過ぎれば熱さを忘れる』と対照的なニュアンスを持つ表現を紹介します。
■羹に懲りて膾を吹く
『羹に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく)』とは、熱い汁物(羹)で舌をやけどした経験から、今度は冷たい刺身や酢の物(膾)でさえ、息を吹きかけて冷まそうとする様子を表したことわざです。
中国の古典に見られる逸話に由来するとされ、過去の失敗体験にとらわれて、必要以上に用心深くなってしまうネガティブな心理を表すときに使われます。
- 会議に遅刻して重要な契約を逃した彼女は、羹に懲りて膾を吹くように、今では1時間前に到着するほど神経質になっている
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」を正しく使おう

『喉元過ぎれば熱さを忘れる』は、困難や苦しみも時間が過ぎると忘れてしまうという、人間心理を表したことわざです。熱い飲み物の生理的反応から生まれた比喩表現で、ミス・失敗を繰り返す場面や、恩義を忘れがちになる状況で使われます。
類義語として『病治りて医師忘れる』『雨晴れて笠を忘る』があり、対義語としては『羹に懲りて膾を吹く』があります。ことわざの意味を正しく知り、ビジネスシーンでの会話に活用してみましょう。
構成/編集部







DIME MAGAZINE












