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「ヨガ」と「着物」が出会うとどうなる?心と体を整える新感覚レッスン体験記

2025.12.23

心と体の軸を纏い直す1日——。そんな言葉がぴったりの時間だった。

窓向こうに日本庭園を思わせる庭が広がるピラティススタジオ「I_PILATES」で、ヨガと瞑想、そして着物を纏うコラボレーションレッスンが開催された。

前半はヨガ瞑想講師・原川めぐみさんによるヨガと瞑想。後半は着物家・伊藤仁美さんの「纏う会」。全く別の世界にあるようにも思える、二つのレッスン。

それが、レッスン終了後には一つの答えにつながっていった。

呼吸から始まり、ヨガが導く“体の軸”との再会

セッションは、ヨガ瞑想講師・めぐみさんの明るく澄んだ声とともに始まった。最初のワークは、右脳と左脳のバランスを整える片鼻呼吸。

左から吸って、止めて、右から吐く。右から吸って、止めて、左から吐く。呼吸のリズムが整うにつれ、参加者の表情がゆっくりとほどけていく。めぐみさんは、しなやかに参加者を誘導していく。

「思考が生まれてきたら、そのまま流していきましょう。体中の老廃物やいらないものを呼吸ともに外に流していきます」

呼吸が深まるほど、体の中心にある軸が次第に輪郭を帯びていく。

そこからさらに、体の感覚を深めるストレッチへ。股関節、肩周り、お尻など「今日、硬く感じるところはどこだろう?」と、体に問いかけながら。深い呼吸とともに体を動かしていくこの時間は、単なる柔軟を超え、体と対話をするひとときとなっていた。

太陽礼拝から静寂へ。瞑想で自分の内側へと沈んでいく時間

太陽礼拝へと動きが変わる。このときも意識するのは、先ほど見つけた体の軸。

「太陽を感じて」。ポーズを変えるたび、めぐみさんが“どこで太陽を感じるか”を言葉で導いていく。動きと呼吸が滑らかにつながり、体の内側まで温まっていく。

一連の動きを終えたら、シャヴァーサナ(亡骸のポーズ)へ。この時間は「受け取る時間」と、めぐみさん。

「太陽からのエネルギーを細胞一つひとつに届け、自分の足場を感じていきます」

そこからは、静かな瞑想へ。呼吸の行き先と流れだけを感じ、浮かんでくる思考は「そのまま流す」。参加者たちがそれぞれの静かな宇宙へ潜っていった。

集中を解き、温めた指先で額、鼻、胸……と体に触れながら、エネルギーを送る。自分の存在を感じ、自らを慈しむ時間。そして自身と、地球に生きる物すべての平和を祈り、前半のレッスンは終了。

参加者からは「平和という言葉を初めて体感した気がする」、「自分を整えているつもりで、自分自身に集中できていなかったのかも」と口々に語り、すっきりとした表情を浮かべていた。

「心身の中心を感じられたことが、次の着付けにも生きてきます」とめぐみさん。後半のレッスンにバトンを渡した。

鏡を見ない着付け。身体感覚で纏うということ

後半は、着物家・伊藤仁美さんによる身体の感覚に意識を向ける「纏う会」。

「前半のレッスンの最後に、体の各場所にエネルギーを送りましたよね。今度は着物を纏うことを通して、さらに内側へと入れていきます」

まずは長襦袢を纏う。首の後ろに生地をぴったりと添わせ、背縫いと背骨が重なるように指でなぞる。

「こうすると、鏡を見なくても背中心が整っていきます」と、仁美さん。そう、スタジオには鏡が一つもない。仁美さん自身が着物を纏うときも、普段の纏う会でも、鏡は使っていないのだそう

鏡を見ずに、体と対話をしながら着物を纏うこと。たとえば、襟合わせの交差する位置を伝えるときも「喉のくぼみ1センチ下」という一般的に言われる目安を、「人差し指の第一関節分」と“体基準”で伝える。左右の重ねの対称性は、バストトップに対する布の位置を感じて確認をする。

「普段は意外と使っていない手の感覚や関節の感覚が蘇ってくるはずです」

そう言いながら、すーっと長襦袢の上から体をなぞるように布の位置を確認する仁美さん。その後、紐と伊達締めを締め、指を使ってシワをとっていく。

「生地と体の間の空気を抜き、密着させていきます。これをしておけば紐を強く締めなくても着崩れないし、長い時間着物を着ていても楽で気持ち良いんですよ」

体と布がぴたりと寄り添うと、「守られているみたい」という声が。苦しいイメージだった着物が、温かく包み込んでくれる存在へと、真逆のイメージに変わった瞬間だった。

“骨で着る”哲学と、布から感じる日本の知恵

着物を纏う段になっても、仁美さんのレクチャーはさらに深くなる。曲線の体に直線的な着物を密着させる方法、シワができやすい体の場所を感じること、骨盤の位置を基準におはしょりの下線を決めること

着付けを進めるうちに、自分の骨の位置、体の形にいつも以上に意識が向いていることに気づく。

「洋服は“肉で着る”ように作られていますが、着物は“骨で着る”もの。体型が変わっても骨の位置は変わらないので、年齢を重ねても美しく着続けられます」

さらに和布のストーリーにも話は広がる。

かつて主流だった紅い長襦袢を染めていた紅花は血流を促す効能があるとされていること。藍染めの藍には抗菌作用、紫根(しこん)には解熱作用などがあり、かつては着るものと健康は密接だったこと。

着古した着物は帯に、草履の鼻緒にと姿を変え、最後は灰にして染料となり、また布へと巡っていたこと。

ただ「着る」を超える、循環の物語が「纏う」という言葉に内包され、静かに胸に宿っていく。

心地良さを軸に選ぶ。纏うことで鍛えられる瞬発力

レッスンの締めくくりに、仁美さんはこう語った。

「着物を纏う時間は、自分の“心地良さ”に意識を向ける時間。世の中の判断基準に流されず、自分の心地良さで判断できる瞬発力が養われます。日常や仕事をする上でも、その人の強さにつながると思っています」

ヨガと瞑想で自分の内側に目を向け、体の軸を思い出し、纏うというかたちでそれを可視化していく。参加者の一人は、「前半後半を通して、自分に意識を向けることの大切さを感じた」と振り返る。

纏うことは、身体性をともなう瞑想なのかもしれない。

仁美さんに帯を結んでもらった参加者たちは、それぞれの心地良さに包まれ、レッスン後のランチ会へと着物姿のまま向かっていった。

次回は、めぐみさんと仁美さんの対談をお届けする。ヨガと着物、一見まったく違う2つの世界が、どこでつながったのか。答え合わせの時間になりそうだ。

原川めぐみ
I PILATES代表。2011年にピラティス スタジオを、東京・駒沢に設立。クライアントに真摯に向き合い、その人らしい輝きを引き出すI_PILATES Method®を実践。コンディショニングピラティス独自のメソッドを体系立て、インストラクターの指導育成も行っている。身体を整え、さらにその先にある思考と心を整える瞑想にシンパシーを感じ、資格を取得。瞑想家として、新たなる活動もスタートしている。

伊藤仁美
着物家。京都の禅寺である両足院に生まれ、日本古来の美しさに囲まれて育つ。長年肌で感じてきた美を、着物を通して未来へ繋ぐことをテーマに活動。20年に渡り各界の著名人への指導やメディア連載、広告撮影などに携わる。主宰する「纏う会」では、古来より受け継がれる技術を軸に、鏡を使わない独自の着付けメソッドを通して、感性を開く唯一無二の着物の世界を提案。オリジナルブランド「ensowabi」を発表するなど、着物の可能性を追求し続けている。

取材・文/福田真木子 撮影/杉原賢紀(小学館)

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