12月13日に、「iOS 26.2」の配信が始まった。小数点第一位の番号が上がっただけでマイナーバージョンアップと思われる向きもありそうだが、実はこのバージョンからiOSの機能が大きく変わった部分がある。特に、日本のユーザーはその影響を受けやすい。iOS 26.2は、12月18日に施行された「スマホソフトウェア競争促進法」、通称「スマホ新法」を遵守するためのアップデートという側面があるからだ。
スマホ新法は、その正式名称通り、プラットフォームとしてのスマホの中での競争を、より活性化させるためのもの。アップルがデフォルトとして用意している機能と競合する可能性があるアプリが、より公平な環境で取り扱われるよう、さまざまな禁止措置が設けられている。そのため、デフォルトアプリについての設定関連には、多数の変更が加わっている。
また、このバージョンからアップル以外の事業者が運用する、代替アプリストアの利用も可能になる。こうしたストアには、App Storeにないアプリが用意されていることもある。さらには、アプリ内決済も外部のサービスを利用できるよう、変更が加わる。ここでは、そんなiOS 26.2の新機能を解説するとともに、今後の影響も考察していきたい。
デフォルトブラウザや検索の設定を促すメニューが追加、ナビゲーションも
もっともユーザーが気づきやすいアップデートは、デフォルトブラウザの選択を促されることだろう。これは、スマホ新法を遵守するために必須だった仕掛けで、iOS 26.2にアップデートしSafariを起動すると、初回はブラウザの選択肢が表示される。インストールしているアプリはそのままデフォルト設定ができるだけでなく、未インストールのアプリをタップするとApp Storeに飛ばされる仕様だ。
元々iOSでは、デフォルトアプリを設定する機能が用意されていたが、これをより前面に押し出した形と言える。また、インストールしていないアプリまで表示されるため、別のブラウザという選択肢があることにユーザーを気づかせる効果もありそうだ。初回では決められないという時には、「あとで設定」をタップすると、現状のままで使い始めることができる。
ただ、現状では多くのiPhoneユーザーがSafariを使っている印象を受ける。こだわりのある人やブックマーク、タブをPCと同期したい人などがChromeを選択しているケースはあるが、その場合、すでにChromeをデフォルト設定している人が多いのではないか。知名度に劣るそれ以外のブラウザを周知させるメリットはありそうだが、iPhoneを使う中であえてSafari以外を選ぶ人は少数派かもしれない。
ちなみに、Safariには標準でプライバシーを守る機能などが搭載されており、他のブラウザよりもこうした機能は強力だ。例えば、Safariにはサイトをまたがったトラッキングを防ぐ「インテリジェント・トラッキング防止」機能があり、デフォルトで有効になっているが、そうでないブラウザは多い。選択肢の提示が行われるようになったのを機に、改めてこうした機能の違いは把握しておきたいところだ。
同様に、Safari利用時には検索エンジンの設定変更を促す画面も表示される。これも元々iOSに備わっていた機能だが、ブラウザ利用時というタイミングで表示されるようになり、より目につきやすくなった。ただし、こちらはブラウザ以上にグーグルを使っている人が多く、あえて知名度の低いほかのサービスに変更する人が増えるのかは未知数と言える。個人的にも、この設定はグーグルのままにしている。
デフォルト設定の選択肢が増えたという点では、ナビゲーションアプリをチョイスできるようになった点の方がうれしいユーザーは多いだろう。これまでは、メールやメッセージアプリから開けるマップアプリが、純正の「マップ」に限られていたからだ。ブラウザで住所を範囲指定した際のメニューにも、純正マップが表示されていた。
iOS 26.2では、このデフォルトアプリ設定にナビゲーションという項目が加わり、純正マップ以外を選択することができる。Googleマップもこれに対応しており、切り替えると、メールなどのリンクをクリックした際に立ち上がるアプリがGoogleマップになる。PCとスマホで同じGoogleマップを利用し、検索履歴などを共有している人は多いと思われるが、このような時にデフォルトアプリを指定できることが役立つ。
代替アプリストアの登場はこれから、独自基準のストアが登場するか
もう1つ、iOS 26.2からは、サイドボタンを長押しした際の音声アシスタントを変更する機能が開放されている。現状では、Siriと音声コントロールのどちらかしか選択できないが、対応状況によっては、グーグルのGeminiやOpenAIのChatGPTをサイドキーの長押しに割り当てられるようになるかもしれないというわけだ。
ただし、この機能に対応するにはアプリ側の対応が必要になる。筆者も、GeminiやChatGPTに加え、アマゾンのAlexaも試してみたが、現時点でサイドボタンに設定できるアプリはなかった。また、サイドキーに割り当てるアプリを変更する規制は、現状、日本のスマホ新法だけで海外ではこの機能が利用できない。
グーグル、OpenAI、アマゾンのいずれも、米国に本社を構えるグローバル企業で、全世界でサービスを提供している。こうした事業者が、日本のiPhoneのためだけに、新機能を追加するかどうかは未知数と言えるだろう。Apple IntelligenceによるSiriのアップデートが遅れる中、より高度なAIアシスタントに切り替えたい人は多そうだが(少なくともデフォルトブラウザを切り替えたい人よりは)、何ともチグハグな状況になっている印象を受けた。
逆に、現状では正式にサービスインしているサービスはないが、代替アプリストアについては、登場が期待できる。スマホ新法施行後の対応を表明している事業者が存在するからだ。例えば、App Storeから人気ゲームのフォートナイトが削除されてしまったEpic Gamesはその1社。同社は、欧州でデジタル市場法が導入され、同様に代替アプリストアの提供が義務付けられたのを機に、「Epic Games Store」を導入している。
日本のスマホ新法下では、アップルがセキュリティやプライバシーなどを理由に、他社のストアを拒否できる条項もあるため、「公証」と呼ばれる最低限の審査は実施されるが、アプリのクオリティや表現内容などの基準は代替アプリストアの運営者に委ねられる。そのため、これまでApp Storeでは入手できなかったようなアプリが利用できるようになる。上記のフォートナイトも、その1つになるとみられる。
アップル側としては、一貫したユーザー体験や品質を担保できない点が悩みどころだが、App Storeの審査基準についてはやや厳しすぎるきらいもある。特に、マンガやゲームなどの性的な表現や暴力表現などは、それが違法ではない、時には書籍では特に年齢制限がないにもかかわらず、修正を余儀なくされるケースが見受けられた。ユーザーの自己責任にはなるが、こうした部分を“日本基準”で運用できるストアが出てくれば、一定のユーザーは獲得できるかもしれない。
スマホ新法対応以外も充実の新機能、アップデートは忘れずに
もちろん、iOS 26.2は世界的に配信されているバージョンで、日本特有の事情であるスマホ新法対応以外のアップデートも組み込まれている。iOS 26で導入したLiquid Glassというデザインを、より使いやすくするための調整機能はその1つだ。この設定は、「設定」アプリの「画面表示と明るさ」の中に設けられており、「クリア」と「色合い調整」を選択できる。
後者を選択すると、UIのパーツの透明度が下がり、背景が見えづらくなる。完全に消えるのではなく、ガラスの曇りがより濃くなったという形だ。これによって、アイコンが見えづらいといったことがなくなり、アプリの選択などがしやすくなる。せっかくの透明なデザインが全面に出なくなってしまうのは少々残念だが、使い勝手優先という人は設定してみるといいだろう。
また、フラッシュ通知と呼ばれる機能に、画面フラッシュが加わった。これは、通知が届いた際に、背面カメラのLEDを光らせるという機能。iPhoneの画面を下にして机やテーブルの上に置いた際に、通知が来たことを分かりやすくするために導入されていた。ただし、背面が光るため、画面を上にしているとせっかくのフラッシュ通知が見えなかった。
iOS 26.2では、ここに画面が加わり、背面のLEDか前面の画面か、もしくはその両方かを設定できるようになった。消音モードのときに点滅させるかどうかも、制御できる。これまで、背面のLEDで通知を確認していた人は、それに加えて画面のフラッシュ通知も設定することで通知を逃しにくくなる。設定は、「設定」の「アクセシビリティ」から「オーディオとビジュアル」に進み、「フラッシュ通知」で変更できる。
さらに、リマインダーアプリには、「緊急」という項目が追加されることになった。これは、どうしても見逃したくないリマインダーの時間が来た際に、アラームを鳴らすための機能。通常の通知よりもはるかに大きな音が、長時間鳴るため、見逃しを大きく減らせるというわけだ。さすがにどのリマインダーにも設定するわけにはいかないが、ここぞという予定を登録する際に役立つ。
スマホ新法対応でアプリストアやデフォルトアプリの概念が大きく変わるのはもちろん、細かな使い勝手のブラッシュアップも図られていると言えるだろう。ただし、選択肢が増えるということは、ユーザー側にもそれを比較できる知識が求められるようになる。競争促進とのトレードオフと言えるだろう。こうした機能を使いこなすには、スマホを取り巻く状況をきちんと理解しておく必要がありそうだ。
文/石野純也







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