世田谷区は「人気が高い一方で価格も高い」と言われる地域だが、2025年には千歳烏山団地建替えへの容積率緩和の初適用や、上用賀三丁目の大規模マンション計画など、住宅市場の構造変化が進み始めている。
マンションリサーチは、マンション市場の長期的な変化を把握するため、全国14万3,000棟のマンションデータを公開している「マンションナビ」 の保有データを用いて、世田谷区の世帯年収や家計支出、マンション価格相場をもとにした最新レポートを公開。
世帯年収データ、物価上昇率を踏まえた支出モデル、そして中古マンション相場を総合的に分析し、「世田谷区ではどの層が実際に購入可能なのか」 を生活実感ベースで明らかにしたので、詳細をお伝えしよう。
世田谷区の平均世帯年収は655万円。世田谷区の家計支出の特徴「教育費×生活費が高水準」
世田谷区は中間層が約7割を占めつつも高所得層が厚い構造が特徴。特に700万円以上の層が31.7%と多く、隣接する杉並区や目黒区と比較しても高所得層の比率が高いことから、区全体の平均年収を押し上げている。
世田谷区の2人以上世帯の年間支出額は、平均472万円。住居費・教育費ともに目黒区よりやや低いものの、杉並区より高くなっていた。
教育費の高さが世田谷区の家計構造を押し上げる主要因であり、“教育と環境に投資する価値志向型” の家計が多い傾向がみられる。
制度変更と再開発がもたらす今後の影響と世帯年収800万円の“買えるライン”
2025年の容積率緩和の初適用(千歳烏山団地)、上用賀三丁目の大規模マンション開発(2028年完成予定)など、供給構造に変化が生じている。これらは 「供給コストを抑えながら供給量を増やす」可能性を持つ施策として注目されている。
世田谷区の中古マンション売買価格相場は6,993万~7,393万円。そこで、想定物件を中古マンション7,000万円とし、以下条件でシミュレーションした。※数値はすべて概算
・マンション価格:7,000万円
・頭金:300万円
・ローン金利1%/ローン返済期間:35年/ボーナス返済:年間50万円
・月々の支払額:約14万円
ここに教育費・生活費(約20万円)が加わると、赤字になるケースも想定される。
しかし、マンションナビのデータによれば、世田谷区の中央値は 6,000万円台後半~7,000万円台前半。築年数と平米数の考慮によって月々の負担は約15万円に収まり、世帯年収800万円でも購入が現実的な価格帯と考えられる。
築年数別の平米単価「世田谷区は“安定相場”」!隣接区との比較 世田谷区は「中間価格」かつ「下落が緩やか」
マンションナビは世田谷区の築年数帯ごとの平均平米単価を公開している。
築年数帯 平均平米単価
築1~15年 121.0万円
築15~30年 98.7万円
築30年以上 70.6万円
築浅と築古の差がわずか22万円に収まり、価格下落が緩やかで資産性が維持されやすい点が大きな特徴だ。また、築30年以上の物件も再販・リノベーション需要が強く、価格は底堅く推移している。
世田谷区と隣接する杉並区・目黒区の築年数帯ごとの平米単価を比較した。
世田谷区のマンションは価格下落が3区の中でもっとも緩やかになっていた。供給は限定的であるものの、築古でも流動性と価格安定性が維持される構造となっている。築年数による価格の差が小さく、資産性の安定した相場と言えるだろう。
世田谷区のマンション売買相場(2025年11月時点)は6,933万円~7,393万円、平米単価99.9万円~105.7万円。23区内で12位と安定している。また、中古マンション価格は過去9年間で52%上昇していた。
引き続き、資産価値の維持力が高いエリアといえる。
まとめ:世田谷区の“買える現実”と将来性
世田谷区は住宅費・教育費ともに高いものの、「住環境・学区・ブランド」への投資価値を重視する層に支持されるエリアだ。
・築年の選択肢を広げれば、世帯年収800万円でも十分に購入可能
・築古市場も価格が安定し資産価値が落ちにくい
・容積率緩和や再開発により供給が増える可能性がある
中長期の資産形成にも適した“堅実な住宅エリア”といえるだろう。今回の調査を参考に、自身のライフスタイルに合った検討をしてみてほしい。
調査概要
調査期間:2020年~2025年のデータを基に分析(マンションナビ過去データは2016年~現在を対象)
データ出典:マンションナビ、LIFULL HOME’S「住まいインデックス」
調査機関:マンションナビ
調査対象エリア:東京都、東京都世田谷区および周辺2区(杉並区、目黒区)
関連情報
https://t23m-navi.jp/magazine/news/navi-report-setagayaku/
構成/Ara







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