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なぜ人気ミュージシャンは短命なのか?最新研究が示す「スターは寿命が4.6年縮む」という衝撃の事実

2025.12.21

27歳で夭折したスター名簿「27クラブ」

〝早すぎる死〟として周囲が惜しみ嘆くニュアンスが込められた言葉である夭折(ようせつ)だが、このワードがぴったりとあてはまるのが1970年前後に27歳で命を落とすミュージシャンやアーティストが続いた現象で、そのお悔やみ名簿は「27クラブ」とも呼ばれている。

ローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズは1969年7月3日午前0時ごろ自宅のプールの底に沈んでいる姿で発見され、ジミ・ヘンドリックスはメジャーデビューからわずか4年後の1970年9月18日に滞在先のホテルで急逝。

ジャニス・ジョプリンは1970年10月4日にハリウッド滞在時にホテルの一室で死亡が確認され、ザ・ドアーズのジム・モリソンは1971年7月3日にパリのアパートの浴槽の中で死亡しているのが発見された。

彼ら彼女らの死亡時の年齢はいずれも27歳であった。

ほかにもロバート・ジョンソン(1938年8月16日没)、ニルヴァーナのカート・コバーン(1994年4月5日没)、歌手のエイミー・ワインハウス(2011年7月23日没)なども「27クラブ」に名を連ねている。

スターは一般人に比べて死亡リスクが2倍から3倍高い?

尾崎豊公式HPより

もちろん27歳という年齢はひとつの基準でしかないが、2007年にアメリで行われた研究によると、2歳から25歳の間に名声を博した芸能界のスターは、一般人に比べて死亡リスクが2倍から3倍高いことが突き止められている。ちなみに日本ではシンガーソングライターの尾崎豊が1992年4月25日に26歳で亡くなっている。

近年でもラッパーのマック・ミラー(26歳没)、人気DJのアヴィーチー(28歳没)、ワン・ダイレクションのリアム・ペイン(31歳没)など若手人気アーティストの死が相次ぎ、ファンやその家族は大きな悲しみに暮れている。やはり若くして名声を得ることは死亡リスクを高めているのだろうか。

2011年に「British Medical Journal」に掲載された研究では、若いロックスターは「20代から30代を通じて一般的に死亡リスクが増加する」ことが報告されている。とすれば確かに27歳前後に死亡リスクが高まっていることになる。

有名ミュージシャンは寿命が平均4.6年短い

そして今回新たに発表された研究によると、スターとしての活動体験は寿命を4.6年縮める可能性があることが示されている。

独ヴィッテン・ヘルデッケ大学の研究チームが2025年11月に「Journal of Epidemiology & Community Health」で発表した研究では、名声と死亡率の間に直接的な関連があることが初めて示されている。

研究チームは648人の歌手のデータを解析したのだが、そのうち半数は有名歌手、残りの半数はそれほど有名ではない歌手であった。これらの歌手には、ソロアーティスト、バンドのリードシンガー、バックシンガーなどが含まれていた。

対象となった有名ミュージシャンはランキングサイト「Acclaimed Music」がまとめた「史上最高のアーティスト2000人」の中から選出された。ビートルズ、ボブ・ディラン、ローリング・ストーンズ、デヴィッド・ボウイ、ブルース・スプリングスティーンが、同サイトで最も認知度の高いトップ5に名を連ねている。

研究チームは学者たちは、性別、国籍、音楽のジャンルなどの特徴に基づいて、有名な歌手とあまり有名でない歌手を比較検証した。しかしこの調査は性別に偏りがあり、男性が83.5%、女性が16.5%である。

その結果、あまり有名でない歌手は平均80歳近くまで生きるのに対し、有名な歌手は平均寿命は75歳であった。有名ミュージシャンであることで寿命が平均4.6年縮まる可能性があることが示されたのだ。

有名人であることのストレス

「名声に関連する死亡リスクの上昇は、時々喫煙することなど、他のよく知られた健康リスクに匹敵する」と研究論文では言及されている。

この研究は人気者となる名声を危険因子として切り離し、スターダムにのし上がることがより大きな健康問題をもたらす転換点となり得ることを示している。

研究ではまた、ソロアーティストはバンドメンバーの歌手よりも死亡リスクが高かったことも判明した。これはソロアーティストは身近で精神的、実際的なサポートが得られにくいことに起因するという。

さらにプライバシーの喪失、厳しい世間の監視、パフォーマンスに対するプレッシャーなどが要因として挙げられているが、この研究ではこれらが決定的に関連しているとは指摘されていないようだ。

「有名であることは寿命に影響を与える重要な要素であり、寿命への有害な影響を軽減するための的を絞った介入の必要性を強調している」(研究論文より)

今回の研究では名声が早死に直接つながることを証明することはできてはおらず、またこの結果がたとえば俳優やスポーツ選手といったほかの職業にも当てはまるかどうかも定かではない。しかしながら統計には有意な差があり、有名人で人気者であるという名声によって、寿命を縮める何かが起こっていることが示唆されている。やはり有名人であることは日常的なストレスとして心身に悪影響を及ぼしているのだろうか。

この知見は世間の注目を集めるミュージシャンだけでなく、より広範な人々の健康と幸福を促進するストレス軽減法の考案に役立てられるかもしれない。芸能人や有名人の薬物所持が時折ニュースを騒がせるが、若くして有名になることで高まる心身の健康リスクは広く周知されるべきなのだろう。

※研究論文
https://jech.bmj.com/content/early/2025/11/19/jech-2025-224589

※参考論文
https://www.bbc.com/news/articles/cde6702n4geo

文/仲田しんじ

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北海道生まれ東京育ち。学業ドロップアウト後、小説家を志しつつ広告代理店営業マン、任期制陸上自衛官、家電販売員などを経て経て出版業界へ。アスキーなどで編集者として勤務した後、フリーライターとして活動。科学から心理学まで幅広いテーマを執筆。ネット上の研究論文を読むのが趣味。大型自動二輪免許を持っている。 X: @nakata66shinji

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