Rグループは、2026年3月13日をもって往復乗車券の発売を終了し、長距離利用で適用されていた往復割引(運賃1割引き)も廃止します。これは、ICカード普及やネット予約増加を受けた転換です。長距離(601km超)利用者で窓口購入に慣れた人は「損」となる可能性がありますが、EXサービスやえきねっとの「早特」など、ネット予約の割引商品を積極的に活用できる人は、1割を上回る割引で「得」になるケースが多くなります。今回の廃止は、利用者にデジタルサービスへの移行を推奨します。
目次
出張や帰省、旅行などで新幹線や特急を利用する機会が多いビジネスパーソンにとって、運賃に関する重要なニュースが飛び込んできました。
JRグループは2026年3月13日で「往復乗車券」の発売を終了する予定です。
この廃止の最大のポイントは、長距離移動で利用されていた「往復割引」(運賃の1割引き)が同時に取り扱いを終了することです。
JRの「紙のきっぷ」をめぐるサービスの転換は、私たちの旅のスタイルやコスト感覚を大きく変える可能性があります。
一体、この廃止は私たちにとって「損」になるのでしょうか?それとも、より便利で「お得」な旅に移行するためのきっかけとなるのでしょうか?
今回の記事では、JRの発表内容を確認し、ビジネスパーソンが取るべき方法を考えてみます。
JRの往復乗車券とは何?
では最初に、JRの往復乗車券とは何か? おさらいしてみましょう。
■そもそも往復乗車券って何?
往復乗車券とは、「ゆき(行き)」と「かえり(帰り)」の区間が同じで、出発地に戻る場合にまとめて購入できる乗車券のことです。

このきっぷの最大のメリットは、片道の営業キロが601km以上になる場合に、「ゆき」、「かえり」の運賃がそれぞれ1割引きになる「往復割引乗車券」に自動で適用されることでした。

また、有効期限が片道の場合の2倍となるメリットがあります。
さらに、乗車券の払い戻しで、片道乗車券を2枚購入した場合はそれぞれの払戻手数料が発生するのに対して、往復乗車券なら1枚分の手数料で済みます。
新幹線や特急を利用する場合、新幹線・特急券(特急料金)には適用されず、運賃部分のみの割引きとなりますが、長い距離で利用するほど割引額が大きくなるため、特に新幹線を利用した長距離出張や帰省時には便利なサービスでした。

■往復乗車券の有効期間と適用される区間
JRグループでは、乗車券の有効期間を決めていて、営業キロによって日数が変わります。
片道乗車券の場合
営業キロが100kmまでの場合と大都市近郊区間内のみの利用では、乗車券の有効期間は1日となります。
営業キロが100kmを超えたり、大都市近郊区間以外を利用する場合、有効期間の計算は以下の式を使うと簡単です。
利用する区間のkm÷200km+1日=有効期間(小数点以下切り上げ)
参考までに、下図をイメージするとわかりやすいでしょう。1001km以上は200kmごとに1日を加えます。

引用:乗車券の有効期間|JR東日本https://www.jreast.co.jp/kippu/04.html
往復乗車券はその2倍
往復乗車券の有効期間は、片道乗車券の2倍にします。
例えば、片道800kmの場合は、10日間有効となります。
これは、出張先で数日間の滞在を伴う場合や、旅程にゆとりを持たせたい旅行者にとって利便性の高い仕組みでした。
廃止の理由って何?
利用期間が倍になり、しかも片道が601km以上の営業キロの場合は1割引とお得なチケットはなぜ廃止になるのでしょうか?
■JR往復乗車券の廃止についての公式発表
JR各社(東日本、東海など)は、2024年12月2日付のプレスリリースで、「往復乗車券」および「連続乗車券」の発売を2026年3月をもって終了することを正式に発表しました。
そして、2025年10月8日のプレスリリースにて発売終了日を2026年3月13日とすることを発表したました。
核となるのは、先に述べた通り「往復割引」の廃止です。
【参考】往復乗車券及び連続乗車券の発売終了について|JR東日本
■廃止の理由とその影響
JRがこの大きな決断を下した背景には、交通系ICカードなどの全国的な普及拡大とインターネットで予約するサービスの利用者が増えていることがあります。
廃止後はどうなるの?
往復乗車券が廃止された後、我々ユーザーはどのようにすれば良いのでしょうか? 確認してみました。
■代替方法はあるの?
往復割引が廃止された後も、代替手段をJRグループ各社はそれぞれ用意しています。
インターネットを利用するなどにより、「お得」になる可能性が高いサービスもあります。
主な代替サービス
・往復乗車券の代わりはあるの?: 従来の往復乗車券が廃止されても、行きと帰りの乗車券・特急券を別々に購入すること自体は可能です。ただし、片道601km以上の場合でも運賃10%割引は適用されなくなります。
・EXサービス(東海道・山陽・九州新幹線):エクスプレス予約(EX予約)やスマートEXで提供される「早特」や「EX旅パック」などの商品があります。早期予約などにより割引率が上がるので、往復乗車割引以上の恩恵を受ける場合があります。

・えきねっと(JR東日本エリアの新幹線や特急など):「新幹線eチケット(トクだ値)」「特急トクだ値」など、えきねっとで予約する割引商品。5〜30%オフ、商品によっては50%以上のオフなど割引率が高く、特に長距離利用においてコストメリットが大きくなります。

・企画乗車券・周遊きっぷなど:満65歳以上の方が入会できる「ジパング倶楽部」や、株主優待割引券、特定のフリーきっぷなど、目的や属性に応じた割引が引き続き利用可能です。
賢いビジネスパーソンは、今回の廃止を機にこれらのデジタルサービスを積極的に活用し、移動の計画を立てるべきでしょう。
■結論:JRの往復乗車券廃止で損するの? 得するの?
JRの往復乗車券廃止が「損」か「得」かは、我々ユーザーの行動によって分かれます。
「損」する可能性があるユーザー
長距離(601km以上)移動で、これまで窓口での購入に慣れており、ネット予約の「早特」などを利用しない人。
急な出張が多く、早期予約が難しいため、自動で適用されていた往復割引の恩恵を受けられなくなる人。
「得」する可能性が高いユーザー
EXサービスやえきねっとの早期割引商品を積極的に活用できる人。割引率が10%を大きく超える商品も多いため、廃止前よりもお得になるケースがあります。
また、きっぷの変更・払い戻しが柔軟になるデジタルサービスへ移行することで、利便性が向上するユーザーもいるでしょう。
結論として、今回の廃止は、利用者に「紙のきっぷ」から「デジタル予約」への移行を促すものです。
この変化に対応し、割引率の高いネット専用商品を使いこなせるようになれば、長距離移動はむしろ「得」に、そしてより便利になることでしょう。
JRの往復乗車券の廃止でよくある質問【FAQ】
Q.JRの往復乗車券はいつ廃止されますか?
A.往復乗車券の発売終了日は2026年3月13日と正式に発表されています。同時に、「往復割引」(運賃の1割引き)の取り扱いも終了します。
Q.往復乗車券の最大のメリットは何でしたか?
A.片道の営業キロが601km以上になる場合に、「ゆき」と「かえり」の運賃がそれぞれ1割引きになる「往復割引乗車券」が自動で適用されることでした。また、有効期間が片道乗車券の2倍になる点もメリットでした。
Q.なぜ往復乗車券は廃止されるのですか?
A.交通系ICカードの全国的な普及拡大と、インターネットで予約するサービスの利用者が増えていることが、JRグループが廃止という決断を下した背景にあります。
Q.往復乗車券が廃止された後、代替手段はありますか?
A.従来の往復割引は適用されなくなりますが、JRグループ各社は代替手段を用意しています。主なものとして、EXサービス(「早特」「EX旅パック」など)や、えきねっと(「新幹線eチケット(トクだ値)」など)のネット予約割引商品があります。
Q.廃止によって「損」をする可能性のあるユーザーはどのような人ですか?
A.長距離移動(601km以上)で、これまで窓口での購入に慣れており、ネット予約の「早特」などを利用しない人、または急な出張が多く早期予約が難しく、自動で適用されていた往復割引の恩恵を受けられなくなる人です。
Q.廃止によって「得」をする可能性が高いユーザーはどのような人ですか?
A.EXサービスやえきねっとの早期割引商品を積極的に活用できる人です。これらのデジタルサービスの割引率は10%を大きく超える商品もあるため、廃止前よりもお得になるケースがあります。
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※当記事に掲載している価格などのデータは2025年11月時点でのものです。
文/中馬幹弘
ガジェット・MONO・マネー編集/ライター。慶應義塾大学卒業後、野村證券にて勤務。アメリカンカルチャー誌編集長、モノ情報誌編集を歴任。iPhone、iPad登場時よりスマホ実務に携わる







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