若者の間で通用する言葉はいつの時代も生まれてきたが、Z世代では「気まずい」がよく使われる言葉だという。単なるネガティブな感情だった「気まずさ」は、Z世代にとって「共感を生むコンテンツ」や「感情を簡略化するツール」へ変化しており、そこにはZ世代特有のコミュニケーション術があるという。
Fiomが運営しているZ世代の実態や価値観を分析するシンクタンク「Z-SOZOKEN(Z世代創造性研究所)」は、『Z世代の気まずいの感覚』について調査研究レポートを発表した。
この調査は、Z世代の当事者でもある研究員がZ世代にアンケートを実施して、対人関係における「気まずさ」の正体とそれをコミュニケーションに利用する心理を分析。そこからZ世代の特徴が見えてきたという。
「気まずい」の定義と具体的シチュエーション
本来は「相手と気持ちがしっくりせず、具合が悪い」という意味だった「気まずさ」は、Z世代の間では「会話が続かないとき」や「知らない人と帰り道が一緒なとき」など具体的なシチュエーションを表す言葉として使われている。「なんとも言えない微妙な空気」や「沈黙」そのものを指す言葉として定着しており、そういった場面での共通言語になっている。「気まずい」という言葉を従来の辞書的な意味を超えて、独自のコミュニケーションツールとして活用しており、心理的な不快感だけでなく場の空気感そのものを指す言葉へ進化させて使っているようだ。
Z世代独自の「気まずい」の使い方
今回の調査で「気まずいという言葉を使ったことがありますか?」という質問に、93%が「使う」と回答(「よく使う」58%、「たまに使う」35%)している。ここからも日常会話で頻繁に登場するワードになっていることがわかる。
YouTuberとうあ発の「きまZ」が流行語になり、気まずい状況をポーズや言葉で笑いに変える文化も定着し、ネガティブな空気を「ネタ」として共有して場の空気を和ませる回避術としても機能させているようだ。
さらに「不安」、「照れくさい」、「緊張」、「申し訳ない」といった本来なら別々の言葉で表現されるべき複雑な感情を「気まずい」という一言に集約して、「ヤバい」や「エモい」と同様に感情を簡略化して相手に察してもらうための「共感の便利ワード」としても使っているという。
Z世代が「気まずさ」を共有するのは共感重視が理由
Z世代が「気まずい」を多用する背景には、「共感」と「空気を読むこと」を何よりも重視する世代であることが関係しているという。SNSで常につながり、相互監視的な環境に置かれた状況で、場の空気を乱すことやコミュニケーションの不全(沈黙など)は大きなストレスになる。
そのストレスを「気まずい(きまZ)」と言語化してポップに表現することで、ネガティブな状況を客観視して笑いに変えて乗り越えようとしている。複雑な感情をあえて「気まずい」の一言に集約するのは、詳細に説明するリスクを避けつつ「察してほしい」という甘えと信頼の裏返しと見て取れる。
今回の調査を行った「Z-SOZOKEN(Z世代創造性研究所)」の竹下洋平所長は、次のようにコメントしている。
「「気まずい」という言葉がこれほどまでにZ世代に浸透しているのは、彼らが「失敗」や「摩擦」を極度に恐れる一方で、それを共有することで救われたいと願っているからです。かつて「KY(空気が読めない)」という言葉が流行りましたが、今のZ世代は「空気を読む」ことがデフォルト設定です。その中で生まれる微細なズレや沈黙を「気まずい」と名付け、ネタにすることで彼らは自らのコミュニケーションの安全性を確保しています。企業がZ世代と向き合う際、この「気まずさ」への感度を理解することは不可欠です。彼らが何に気まずさを感じ、どう回避しているのかを知ることは、彼らの心地よい距離感(パーソナルスペース)を知ることにほかなりません」
その場の空気を読んでの言動や共感を重視する考え方は、SNS時代に生きるZ世代にとっては当たり前のことかもしれない。そこで摩擦を生まないために発明されたのが「気まずさ」というワードだ。 「気まずい」という言葉は、Z世代が繊細な人間関係を円滑に回すために発明した現代の「免罪符」であり「潤滑油」といえそうだ。
「Z世代のきまずいの感覚についての意識調査」概要
調査対象:全国のZ世代(18歳~24歳)
調査期間:2025年7月~8月
調査方法:インターネットを利用したアンケート調査
有効回答数:n=299
調査分析:Z-SOZOKEN(Z世代創造性研究所 運営:Fiom)
構成/KUMU







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