今では三菱自動車のフラッグシップとなった、2021年発売のクロスオーバーSUVが3代目アウトランダーPHEV。「日常ではEV、遠出はハイブリッド」というコンセプトのもと、電動車ならではの力強く滑らかで静かな走り、様々な天候や路面でのドライブを安全・安心かつ快適に楽しめる電動SUVとして絶大なる人気を誇る1台である。
もはや高級車の乗り味だと断言できるほどの進化
2024年10月には大幅な商品改良を行い、「洗練」と「上質」をテーマとし、駆動用バッテリーの刷新によるEV航続距離の伸長や加速性能の向上、内外装デザインの変更や機能追加による質感の向上、ヤマハ株式会社と共同開発したオーディオシステムを全グレードに採用するなど、さらなる進化を遂げている。
そのときには、エクステリアではフロントグリルのオープニングラインを始め、ボンネットの素材をアルミからスチールに変更。前後スキッドプレート、20インチアルミホイールのデザイン、LED化されたスモークレンズのリヤコンビランプも新しくなっている。
ボンネットの素材変更は、欧州市場への再投入が理由。超高速域の走行に対応(ボンネットの浮き上がり防止)するためと説明される。バンパーとスキッドプレートのデザイン変更は、バッテリー容量、出力アップに伴うバッテリーの厚み増しによるもので、最低地上高は5mm高まった。
より分かりやすい大幅改良は、インテリアに見いだせる。センターディスプレーを12.3インチに大型化するとともに、メニューデザインも刷新。
さらにレザーシートが標準装備される最上級のPエグゼクティブパッケージとPグレードの前席にシートベンチレーション機能を追加。暑い時期にエアコンの冷風をシートのパンチングされた小穴に吸い込むことで、太腿、お尻、背中部分が涼しくなり、汗をかきにくくなる効果がある。
実際、汗と摩擦によるシャツやパンツのシワも軽減される超快適装備なのである。同時にPエグゼクティブパッケージとPグレードは後席にもシートヒーターが備わり、Pエグゼクティブパッケージに至っては前左右席にリラクゼーション機能(背もたれ部分のマッサージ機能)まで用意されるのだ。
PHEVユニットも大きく進化。2.4Lエンジン(98ps、195Nm)、モーター(最高出力F 85kW R100Kw、最大トルクF225Kw R195kW)のスペックはMC前のモデルと変わらないが、バッテリーの容量、出力を約10%高めた20.0kWhから22.7kWhに増強。
システム出力は以前の250psから300psとなり、EV走行可能距離はMC前モデルから約20%延長した102~106kmだ(グレード別。WLTCモードによる)。0-100km/h加速についても2秒短縮されているという。
加えて、エンジンが始動しづらい制御に改められたほか、急速充電80%までの充電時間も約6分間短縮されている(約32分)というから進化は著しい。航続距離にしても、ガソリン満タン、フル充電で1000kmオーバ―も可能となっている足の長さも大きな特徴となる。
走行性能では、三菱自慢のS-AWCの制御見直しやサスペンションの再チューニングがポイント。ハイレベルでの操縦性と乗り心地の向上を両立させることが狙いである。さらに、タイヤの名柄変更も効いているはずで(BSエコピア→SUV専用のBSアレンザ)、荒れた路面、段差などもじつにしなやかにいなしてくれるのだ。もはや高級車の乗り味だと断言できるほどの進化を見せつけてくれたのである。
そして、大幅改良前のアウトランダーの最上級グレードはP。しかし5人乗りが選べず、3列シートの7人乗りのみだった。しかしMC後のアウトランダーは最上級のPエグゼクティブパッケージと、それに次ぐPグレードでも5人乗りと7人乗りが選べるようになっている(Gグレードも。Mグレードは5人乗りのみ)。
3列シートは不要だが、上級グレードに乗りたい・・・というユーザーにとってこれは嬉しい仕様変更と言っていい。
さて、本題である。アウトランダーPHEVは2025年9月4日に2026年モデルを発売。そこで改良されたのが、インテリアのセンターコンソール部分だ。
まず、改良前のセンターコンソールと2026年モデルのセンターコンソールを見比べていただきたい。
間違い探しのようだが、センターコンソールをより高級感あるデザインへと刷新されているとともに、シフターとドライブモードダイヤルがセンターコンソール上の左側から、運転席側の右寄りにレイアウト変更されているのだ。

それに合わせてコンソールボックス上部の肘置きスペースを拡大。よりゆったりと肘がかけられるように改良されている。

また、コンソールボックスの大容量化と、ボックス内にUSB type-Cの充電ポートを追加しているのも細かいながら、使い勝手を向上させるポイントに(充電コードの通し穴もある)。
さらにドリンクホルダーの位置も見直され、利便性を向上させている。なお、広大なラゲッジルームについては変更なしである。


先進運転支援機能も進化し、踏み間違い衝突防止アシストは、後退時に従来の超音波センサーに加えて新たにリヤビューカメラも活用することで、歩行者の検知も可能としている。
車重を感じさせない走りやすさ、運転のしやすさを体感
そんなアウトランダーPHEVの2026年モデル、Pエグゼクティブパッケージで東京~霞ヶ浦付近を往復。まず感じたのは、すでに説明したシフターとドライブモードダイヤルの位置。よりドライバー側に近づいたことで、とくに使用頻度の高いシフターの操作性の向上を実感。以前の配置は「左ハンドル用?」とさえ思えてしまうほどだった。
今回のロングドライブでは高速道路で高速道路同一車線運転支援機能の「MI PILOT」機能を使う場面も多かったのだが、全車速追従機能付きACCと車線維持支援機能を統合した制御により、車間距離と車線中央をキープ。
さらにナビゲーションの地図情報を用い、カーブや分岐などで適切な車速に自動調整してくれるため、ロングドライブでも運転のストレスは最小限。そのときにはセンターコンソールの肘置きスペースの前側への延長による肘の置きやすさを体感。なるほど、よりゆったりとしたACCを使ったクルージングが可能になっていた。
帰路、首都高速で経験した渋滞では、停止後約30秒以内であれば自動発信できる渋滞追従機能に助けられ、運転操作の負担が低減。元気ハツラツなまま、家にたどり着けたというわけだ。
そしてもちろん、3代目アウトランダーPHEVとして熟成の域にある2026年モデルの走行性能そのものにも大満足。素晴らしく滑らかに、静かに、高級感たっぷりに走り、大迫力の20インチタイヤを装着していながら、乗り心地の良さはなるほど、三菱自動車の現在のフラッグシップモデルの名に恥じない快適感、心地よさがあったのである。
PHEV、電動車としてEV走行領域のねばり強さはもちろん、モーター/エンジンと右足が直結しているかのようなアクセルレスポンスの良さ、視界の良さもあって、大柄なボディ、2tを超える(具体的には2140kg)車重を感じさせない走りやすさ、運転のしやすさを体感できたのだった。
東京から霞ヶ浦までの距離は約90kmだが、そのほとんどをEV走行のまま走れた印象もあり(WLTCモードで102kmのEV換算走行距離を誇る)、往復したあとに給油しても、ガソリンの消費は微々たるものであった。
付け加えれば、後席のエアコン吹き出し口は温度調節もでき、2025年の夏のような酷暑でも、後席で快適なドライブが可能。愛犬を後席に乗せてドライブするにも最適と言っていい。
また、PHEVであるアウトランダーPHEVには2つのAC100V/1500Wコンセントが備わり、アウトドアではもちろん、災害時にも大活躍。
最低地上高200mm(Mグレードのみ195mm)、ツインモーター4WD×S-AWCのあらゆる路面状態で意のままに操れ、安心・安全なドライブを可能にしてくれるオールラウンダーなアウトランダーは、これから本格的に迎える冬の雪道も、誰もが自信を持って走り、ドライブを楽しむことができるに違いない。
なお、新型デニカミニに初採用されたドライブモードは5モードだが、こちらはノーマル、エコ、パワー、ターマック(ここまでがオンロード用)、グラベル、スノー、MUDの7モードとなり、ありとあらゆる走行シーン、路面に対応してくれるから、頼りがいがある。
2024年度、日本でもっとも選ばれた、ハイブリッドと電気自動車のいいとこどりをしたPHEVがこのアウトランダーであることも、納得である。
文/青山尚暉
写真/雪岡直樹(2025年モデル、2026年モデル)







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