食品をはじめとする商品の物価高騰が続き、価格を気にしながら買い物をする人は多いはずだ。そんな中でセールイベントのブラックフライデーはすっかり定着し、ここ数年はスーパーなどの実店舗でも時期に合わせてチラシ展開などがされるようになった。マーケティング情報システムの『食MAP』を展開するライフスケープマーケティングは、前年度のブラックフライデーに関する振り返りとブラックフライデー以降の購買タイミングについて分析して結果を公開した。そのなかで注目したいのが冷凍の野菜の存在だ。
ブラックフライデーに関連する「ブラック・黒い」と「フライ」の動向
ブラックフライデーは、アメリカ発祥の大型セールイベントで、近年では日本でも浸透してブラックフライデーにちなんだ「黒い食材・商品」や「フライ」の訴求などが行われている。ブラックフライデー当日の黒い食材・商品の出現と夕食における揚げ物メニューの出現を時系列で分析すると、コロナ禍前の2019年度から2024年度にかけて黒い食材・商品TI値(1000食卓あたりの出現数)は横ばいだったが、揚げ物メニューのTI値は2019年度から約1.5倍も増加していた。ブラックフライデーセールの消費者の認知度が高まって、ブラックフライデーの関連メニューの提案に効果があると推測される結果になった。
ブラックフライデーの購入は「ネットスーパー・通販」が増加
『食MAP』モニタのブラックフライデー週の購入場所を24年11月のブラックフライデー週以外の期間と比較すると、食品の購入はスーパーがメインだったが、ブラックフライデー週は「ネットスーパー・通販」の割合が5.4%だった。これは24年11月のブラックフライデー週以外の期間の3.3%より高く、食品購入にもブラックフライデーのセールが活用されているようだ。
ブラックフライデー週に「ネットスーパー・通販」で購入された食品では、分析期間中の上位10カテゴリーはお茶類やミネラルウォーターなどの飲料類が上位だった。飲料類のランクインは、購入後の持ち帰りの不便さ(重さ)やケース買いの影響が予想される。さらに冷凍の野菜や生麺類もランクインしており、特に冷凍の野菜は購入場所に関わらず経年で出現が増えているカテゴリーで、ブラックフライデー週には3位に入っている。生鮮野菜より比較的価格が安定しているので、タイパ・コスパ意識の高まりで調理工程に時間をかけたくない人が増えていることからニーズは高まっているようだ。
生活者の意識変化で冷凍の野菜の出現増加
冷凍の野菜が食卓に出されることが徐々に増えており、『食MAP』モニタの「調理の下処理に対し面倒だと感じる意識」も高まっているという。異常気象で生鮮食品の価格が高騰した環境的要因もあるが、生活者の意識の変化から生まれたニーズに冷凍の野菜がマッチしていたことが出現増加の背景にありそうだ。
2019年度(コロナ直前)と2024年度で購入された冷凍の野菜商品をグラム数の構成比でみると、2019年度から2024年度にかけて500g-1kg未満の商品の構成比が11.4%から24.5%と2倍以上に増加していることもわかった。
在庫ライフサイクル分析からみるブラックフライデー後の購買訴求チャンス
『食MAP』の在庫ライフサイクル分析では、分析期間内で使い切ったJAN捕捉商品を対象に「購入~開封」、「開封~使い切りまでの日数」や何回使用して使い切ったかという「開封~使い切りまでの回数」を把握できる。そこで2019年度から2024年度のブラックフライデー週で購入された冷凍の野菜のうち、「500g-1kg未満」商品を対象に在庫ライフサイクル分析を行った。
ブラックフライデー週に購入された冷凍の野菜のうち、容量「500g-1kg未満」の商品が購入から使い切りまでにどのくらいの期間を要するのかデータでみると、購入された冷凍の野菜商品(500g-1kg未満)のうち、約半数はその後35日以内に使い切られている。ブラックフライデー週に購入された商品の多くがクリスマスから年末頃には使い切られていると予想でき、冷凍の野菜(大容量商品)は、クリスマス前から年末のブラックフライデーから2週間から1か月後にかけて改めて訴求すれば、在庫がない世帯への継続的な購買タイミングになるかもしれない。販売者の立場に立てば、商品の購入から使い切りまでのライフサイクルを把握することで、適切な時期に訴求して継続的な購入・消費をするユーザーを増やすポイントにできそうだ。
構成/KUMU







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