2026年春、佐賀大学が化粧品分野を専門的に学べる「コスメティックサイエンス学環」を開設するという。
これまで、国立大学には専門の課程が存在しなかったコスメ分野。コスメ業界の未来を担う人材を育成すべく、専門的に学べる教育組織を設立するとのことなのだが…実は佐賀県は知られざる「コスメ県」だった。
県内の化粧品生産額は約2.1倍へ
佐賀県では10年以上前から「コスメティック構想」を掲げ、県内における化粧品産業の集積に力を注いできた。さらに県庁内には「コスメティック産業推進室」も設置されるなど、「アジアで最もコスメビジネスがしやすい都市」を目指してきたという。
私たちの日常に欠かせないコスメ・化粧品の世界をさらに拡げ、スペシャリストを生み出す新たな学び舎について、今回、佐賀大学コスメティックサイエンス学環の担当者に話を聞いた。
――佐賀県がコスメに力を入れていることを今回、初めて知りました
「元々、佐賀県では「コスメティック構想」を掲げており、産学官の連携が本格化した結果、県内の化粧品生産額は2014年の64億円から2023年には135億円と約2.1倍まで上昇しているんです。非常に成長著しい産業であるといえます」
――それを後押しするように来年コスメティックサイエンス学環が開講。経緯を教えてください
「開講を正式に発表したのは2024年9月ですが、佐賀大学では2018年に唐津市内の唐津キャンパスをコスメ及びヘルス関連プロジェクトの拠点として体制整備しました」
「そして2021年には佐賀県が進めるJCC(ジャパン・コスメティック・センター)を中心としたコスメ産業の拠点を目指すコスメティック構想推進の一手段として、JCCから人材及び研究費を受け入れ、JCCおよび唐津市と佐賀大学との共同研究をさらに発展させるためのものとして「化粧品科学講座」が開設されています」
「こうした「分野横断型教育のニーズ」「地域との連携強化」「グローバル市場への対応」「化粧品への安全性・科学的根拠への関心の高まり」など、急成長する化粧品産業と社会的背景を踏まえ、地域とともに発展し続けることを目指す理念のもと設立に至りました」
ちなみに、「学環」とは他の学部と連携協力し、さまざまな分野を横断、融合させて学びを深めていく新しい教育の仕組みのこと。佐賀大学では、経済学部、医学部、芸術地域デザイン学部などと連携し、運営していくという。
――具体的なカリキュラムを教えてください
「学環では化学領域や生物学領域を中心に複数の学問分野を横断的に学ぶことができます。例えば、芸術地域デザイン学部からはデザインプロジェクトに関する学び、経済学部からはマーケティングマネジメントに関する学び、医学部からは皮膚科学に関する学びを得られるなど、総合大学であることを活かしたカリキュラムが特徴です」
「また、座学だけでなく「コスメティックサイエンスPBL」という設定された課題(例:10代向けに化粧水をデザインしなさい)に対し、少人数で体験学習的に取り組む科目を1年生から設定しています」
――ちなみにこの学環は男性でも受験可能ですか?
「もちろん男性でも受験可能です。男女問わず、ただ単に化粧品が好きなだけでなく、「化粧品に含まれる成分が人体にどのような影響を与えているのか」「この化粧品の成分は何のために必要なのか」のように、化学的な視点で化粧品について深堀りしたい方や興味がある人に入学してほしいと考えています」
「おしゃれ」という視点だけではない、コスメのスペシャリスト育成を目指す
今年10月、コスメティックサイエンス学環開設を前に大学の研究室や施設などの見学に訪れたのがモデルで女優のMEGUMIさん。
自身でもスキンケアブランドを立ち上げ、起業家でもある彼女は国立大学初のコスメティックサイエンス学環に興味を抱いたという。
「MEGUMIさんは自身のスキンケアブランド「Aurelie./オレリー」を立ち上げており、その関係から同学環に強い関心を持たれました」
「視察では施設見学や研究内容について意見交換を行い、今後の共同研究の可能性についても話し合われるなど非常に有意義な訪問となったと相互に考えています」
――学環では講師として著名人を招く予定もあるのでしょうか?
「例えば授業のゲストスピーカーとして芸能人を呼ぶ等といった予定は現時点ではありませんが、化粧品関連企業で研究職等で活躍されている方に講義を行ってもらうことについて検討を進めています」
地元自治体と企業とともにコスメの未来を切り拓こうとしている佐賀大学。気になるのは卒業後の進路だが?
「卒業後の進路については化粧品メーカーや原料メーカー、その他、研究開発系の企業を想定しています。また、在学中に得た知識を基に地産素材を活かしての地域振興等、公務員として地域に貢献できる人材も育成できると考えています」
最後に改めて学環の魅力、学生さんへのメッセージをお願いします。
「佐賀大学コスメティックサイエンス学環は、化粧品について様々な分野を横断しながら多角的に学べる国立大学唯一の教育組織です。単に“おしゃれ”という視点ではなく、科学的に化粧品を探究したい人は、ぜひこのコスメティックサイエンス学環で学び、日本のみならず世界でも活躍できる人材となってください」
文/太田ポーシャ
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