監獄がホテルに！2026年に開業する星野リゾート「奈良監獄ミュージアム」の全貌

「星のや」といえば星野リゾートの最上級ブランドであり、非日常かつラグジュアリーな体験が期待できるホテルだ。

その地域の文化や歴史、食材を盛り込んだ料理やおもてなしも「星のや」の特徴であり魅力である。

そんな星野リゾートから、2026年に9つ目の「星のや」国の重要文化財「旧奈良監獄」（奈良県・奈良市）を活用したホテル『星のや奈良監獄』が開業される。

予約開始日などはまだ公開されていないが、どんな非日常が味わえるのか期待に胸が高鳴る。

それに先立ち、2026年4月27日に『奈良監獄ミュージアム』もオープンする。こちらは日帰りで別世界を体験することができそうで魅惑的だ。

「旧奈良監獄」とは？

旧奈良監獄とは明治41年に完成した五大監獄のひとつである。その赤レンガ造の旧奈良監獄は、歴史的価値が高く意匠的にも優れた近代建築であるとして、平成29年2月に国の重要文化財として指定された。

ちなみに明治五大監獄とは明治期に竣工された五つの監獄のことだ。奈良監獄の他に「長崎監獄」、「金沢監獄」、「千葉監獄」、「鹿児島監獄」がある。

元収容棟は、看守が立つ監視所を全体の中心に据え、複数の収容棟が放射状に伸びているのが特徴的な、ハビランド・システムと呼ばれた建築が取り入れられている。

そんな旧奈良監獄を活用した『奈良監獄ミュージアム』。そこにはどんな非日常が待っているのだろうか…。館長の八十田香枝氏に詳しく話を聞いた。

「問いかけ」に出会う体験

『奈良監獄ミュージアム』は、“特別な「問いかけ」に出会う体験”ができる施設とのこと。コンセプトは、「美しき監獄からの問いかけ」である。

明治時代における近代化の背景と美しい建築（重要文化財）と共に、監獄という「規律」が支配する空間での「問いかけ」を受けて、自由について考えを巡らす体験を提供したいという思いから、このコンセプトを設定したのだという。

「『規律』が支配する被収容者たちの生活を知るうちに、自身も『規律』に縛られているのでは？『自由』とは？と問いを巡らす。見終わった時、今の自分からの解放感を得られるかもしれない。当ミュージアムでは、そんな体験が待っています」（以下「」内、八十田氏）

奈良監獄ミュージアムの見どころ

ミュージアムの見どころについて聞いた。

「当ミュージアムは、当時の状態を残した第三寮や看守所がある『保存エリア』と、展示棟、また、カフェとショップが併設された『展示エリア』に分かれています。保存エリアでは、当時の様子を感じられる独居房が公開されており、展示エリアはA棟、B棟、C棟、と分かれています」

A棟は「歴史と建築」をテーマに赤レンガに刻まれた記憶に思いを馳せ、日本の行刑や奈良監獄の建築的特徴を知るエリア。

B棟は「身体と心」をテーマにし、被収容者の視点で刑務所での生活やルールを紹介。規律に縛られた刑務所の生活を知り、想像し、客観的に見つめることで、自分自身の生き方に通じる「問い」に迫るエリア。
　
C棟は「監獄と社会」がテーマ。「監獄」をさまざまな価値観や切り口で表現するエリアだ。国内外で活動するアーティストが、監獄から受けたインスピレーションとそれぞれの感性で制作した作品を展開する予定だ。

建築としての美しさを堪能したり、当時の様子を学び過去に思いを馳せたりしながら、そこから発展したアートの展示も楽しめるという盛りだくさんな内容という訳だ。

どのようなアーティストが『奈良監獄ミュージアム』に参加しているのだろうか？

「世界的クリエイターが監修、アートディレクションを担当しています」
　
アートディレクターには佐藤卓 氏/TSDO、そしてミュージオグラフィースーパーバイザーはAdrien Gardere（アドリアン ガルデール）氏とのこと。

佐藤氏は「ロッテ キシリトールガム」「明治おいしい牛乳」のパッケージデザインを手掛けるほか、NHK Eテレ「デザインあ」総合指導、21_21 DESIGN SIGHT館長、京都芸術大学学長を務める。

アドリアン氏が主宰するStudio Adrien Gardereは、トロントのアガ・カーンミュージアムや、ルーヴル美術館ランス別館、ロンドンのロイヤル・アカデミーなど、世界13か所以上の美術館の常設展示デザインを手がけている。

「C棟の参加アーティストにつきましては、開業時まで楽しみにお待ちいただけますと幸いです」とのこと。

気になるカフェメニューは？

筆者はミュージアムという非日常に設立しているカフェが大好きなのだが、『奈良監獄ミュージアム』ではどんなメニューがあるのだろうか？まさか当時の監獄での食事が再現されていたり…？

「明治時代の洋食文化を反映したオリジナルのカレーパンやチーズケーキ、ご当地ソーダ等を提供します」

さすがに監獄飯ではなかったが、当時の文化を体験できるラインナップになっている。

2026年4月27日オープンの奈良監獄ミュージアム。予約開始は2026年2月の予定とのこと。

法律上の罪を犯していない人たちは自由な世界に生きているつもりであるが、実は我々も社会の規律や家庭での決まりごと、自分の中のルールなどに縛られて生きている。

客観的に当時の囚人たちを思い浮かべ、現在の自分と見比べてみたりすると、どんなことを感じるのだろうか？是非とも実際に行って体験してみたい。

奈良監獄ミュージアム
所在地：奈良県奈良市般若寺町18
開館時間：9:00～17:00（最終入館 16:00）
定休日：なし　＊メンテナンス休館あり
料金：大人 2,500円～
URL：https://hoshinoresorts.com/nara-prison-museum/ja
予約開始日：2026年2月（予定）

取材協力：奈良監獄ミュージアム
文：まなたろう