「いつか着るかもしれない」「高かったから」「ラグジュアリーブランドだったから」など、気が付けば何年も着用していないものの、捨てられない洋服がクローゼットに眠っている人もいるだろう。
年末の大掃除のタイミングで、それらを処分すべきかどうか悩ましいのは筆者だけではないはず。そこで、『古着ひとつでおしゃれになります』の著者で、ファッションジャーナリストの宮田理江さんに、タンスの肥やしになろうかという洋服は手放すべきか、活用法があるのかをうかがった。
古着をミックスすることでこなれ感のある着こなしに
古着やヴィンテージアイテムの掘り出し物を探して、コーディネートに取り入れるのも古着の楽しみ方だが、新たになにかを購入する前に、クローゼットやタンスの中を確認してみようと思ったきっかけが、書籍「古着ひとつでおしゃれになります」の中で目にした、『手持ちの服が輝きを増す』というフレーズだ。
クローゼットは満杯なのに、今日着たい服がない。同じようなコーディネートで出かけてしまう筆者の毎日を見透かされている気がした。古着をそのまま着るのではなく、1点投入することで、こなれ感が演出できるだけでなく、なんといっても人とかぶらないというメリットもあるという。
とはいえ、着ていなかったのには、それなりの理由があり、どうコーディネートすればいいのかわからない場合もある。ホリデーシーズンのセールで新しい洋服を購入する前に、クローゼットの洋服たちと対峙してみよう。
タンスの肥やしを見極める

最近、着用していない洋服は、古着として今後もコーディネートを楽しめるのか、それとも人に譲るなど、手放すかどうかの判断をするのが悩ましい人も多いだろう。
「サイズ(体型の変化)、コンディション(黄ばみ・汚れ・ほつれなど)、機能性(デザインは好きでも重たくて体に負担がかかるなど)といった、基本のチェックポイントから、残すべきか手放すべきかを判断できます。」(宮田さん)
ほかにも、現在の生活スタイルにフィットしているか、着る機会を具体的に想像できるかも重要とのこと。
確かに、毎日スーツで出社するのか、カジュアルスタイルが可能なのかどうかで、大きく変わる。オフの日は、アウトドアやスポーツ観戦、趣味の習い事など、その人なりの服装がおのずと見えてくる。現在のライフスタイルと遠いと感じるアイテムは、整理するのもありかもしれない。
「どんな素敵な服でも、お手入れの手間がハードルになる場合があります。例えば、着るたびにクリーニングが必要なシャツは、『今日は着たいけれど、またクリーニングに持っていくのが面倒で……』と、クローゼットに戻しがちです。」(宮田さん)
「そうなんです!」と叫びたくなった。クリーニングとまではいかなくても、アイロンがけも面倒な作業のひとつ。筆者は、数着たまってから、まとめてアイロンをかけるようにしているというのもあるが、朝、着ようと思ったときに、アイロン前だったため着られなかったということもあった。メンテナンスの負担は、確かに大きな判断材料になるようだ。
「判断基準に照らして、着ない確率が高い場合は手放してもよいでしょう。むやみに抱え込んでおく必要はありません。不要な洋服を手放せば、クローゼットに隙間が生まれ、本当に着たい服を把握しやすくなります。」(宮田さん)
確かに、クローゼットがぎゅうぎゅう詰めだと見落としてしまう服も出てくるし、服同士がこすれあって、生地も傷んでしまいそうだ。
具体的には、サイズが合わない場合は、古着店やリサイクルショップなどに持ち込み、ブランド物や状態の良い服は、オンライン買取やフリマアプリに出すと、思いがけず良い価格が付く場合もあるようだ。
ただ、無理やり処分しなければと考えず、次の誰かに渡す循環に乗せるという気持ちで整理すると、気持ちもスッキリするとか。
ほかにも、少しハードルがあがるが、リメイクという選択肢もある。
「Tシャツやスウェットは、カッターナイフで軽くダメージ加工を施すだけでも表情が変わります。ウールやカシミヤのニットは、縮んでしまっても、小物づくりの材料として生かせますし、袖や身頃をくるりと巻けば、ストールやスヌード風にアレンジすることもできます。」(宮田さん)
さらに目からうろこだったのが、カーディガンやシャツのボタンを落としてしまった場合、すべてのボタンを異なるデザインのボタンに付け替えることでおしゃれ度があがるというもの。
お気に入りだったのに、ボタンがひとつないからとあきらめずに、表情を変えて着ることができるアイデアだ。手放す前に、ひと工夫を考えたい。
クローゼットをチェックして手放すかどうかは、今まで先送りにしていただけに判断がつきにくい。まずは、一番判断しやすいサイズチェックから始めてみてはどうだろう。
初心者でも古着を上手に取り入れる方法とは

手元に置いておくと決めたものの、どう着こなせばいいか悩んでしまう。そういう場合は、スウェットシャツ、Tシャツ、デニムパンツなどのカジュアルアイテムから取り入れてみるのがおすすめ、と宮田さん。
メンズのウェアなら、チェック柄のシャツやボタンダウンシャツなどは、古着の方がこなれた雰囲気が出せ、アウターやニットトップスも風合いが楽しめるという。
「古着のミリタリーパンツは、新品よりもこなれ感が自然に出るのが魅力です。シンプルなTシャツやシャツと合わせるだけでサマになります。ワーク系ジャケットは、休日にもビジネスカジュアルにも着やすい万能選手。古着のハットやキャップもヴィンテージ感がでるので、落ち着いた服装にこうした小物を一点投入するとおしゃれ感がでます。」(宮田さん)
ファッションのトレンドは、巡るというが、買った当時と同じ着こなしではなく、まずは、古着を1点だけ取り入れて、あとは現在よく着ている服でまとめてみるのがおすすめだ。
宮田さんの著書の中では、女性がオーバーサイズのメンズアイテムをジェンダーレスで楽しむ着こなしも紹介されている。人気のオーバーサイズの着こなしだが、男性の場合は、少し違うようだ。
「男性の場合は、自分の今のスタイルに『質感・ディテール・経年変化』をひとさじ加えるアレンジがおすすめです。ミリタリーやワークウェア系の古着は、男性が取り入れやすいジャンルです。普段の服装に、古着のアウターやパンツを1点だけ加えるだけでも、こなれた印象になります。」(宮田さん)
具体的な例として、MA-1のような定番的ミリタリーアウター、ワークシャツ、太めのチノパンツなどは、現代の服との相性がよいとのこと。
ほかにも、ロックバンドTシャツなどもビギナーが試しやすいアイテムだと紹介してくれた。これらのアイテムは、流行に左右されるというより、タイムレスで着られるアイテムになっているように感じる。もし、クローゼットに眠っているなら、この機会に1軍として、毎日の着こなしに取り入れてみてはどうだろう。
トレンドミックスやレイヤードで現代風にアレンジ

自宅のクローゼットで眠っていた服を、宮田さんは著書の中で、「セルフヴィンテージ(ファミリーヴィンテージ)」と、表現している。古着と呼ぶより、なんだか服に対する敬意のようなものを感じる。
長年、クローゼットの奥で眠っていたため、これがあったのかと見つかった服は、着ていた当時が懐かしく、そのまま着てしまいそうになるが、それはNG。
「自分が昔買ったお気に入りの服を大事にずっと取っておくのは素敵なことですが、今のトレンドとミックスして着こなすことが古臭く見えないコツです。特に、当時のままの丈感、肩幅、ウエストの絞りなどは『昔の服をそのまま着ている人』に見えやすいポイント。裾上げやウエスト直し、肩パッド抜きなどのアップデートが有効です。」(宮田さん)
筆者が、ヴィンテージを着こなせていない最大の理由がこれだった。袖を通してみても、なんだかしっくりこない。だが、お気に入りで手放せない。肩パッドを外したジャケットはあるが、ウエスト部分のシルエットまでは、アップデートしていなかった。ただ、お直しが難しいデザインもある。そんなときは、レイヤードでバランスを整えるのが正解。
「コンパクトなシャツなら、ニットやカーディガンを重ねて襟や胸元だけを少しのぞかせる。オーバーサイズのジャケットやアウターは、袖をまくって軽さを出す。丈が短いパンツは、思い切ってブーツインするなど、今持っているアイテムと重ねて『見える面積を小さくする』手法がおすすめです。」(宮田さん)
新作と古着を組み合わせると、お互いの角が取れ、全体がこなれて映るなんて、想像もしていなかった。今の空気をどこかに入れることで、古着が現代的に馴染むという。
お財布にもやさしく環境への配慮も
自宅に眠っている古着を見直すことは、お財布にもやさしく、環境負荷も低減することにつながる。
「今では作れないような丁寧な縫製や上質な素材に出会えるかもしれません。今のトレンドと組み合わせれば、新たな魅力が生まれます。日本の古着店で扱われている商品は状態がよく、何軒か回って店内のディスプレイやスタッフの着こなしを観察するだけでも、おしゃれセンスは自然に磨かれます。
全身を新品でそろえるより、古着を1点だけ加える方が、大人の落ち着きとこなれ感が自然に演出できます。流行に左右されないタイムレスな魅力もプラスされ、着こなしに深みが生まれるはずです。
まずは、1点手に取って、今のワードローブと組み合わせてみましょう。小さな挑戦が、着こなしの幅をぐっと広げてくれます。」(宮田さん)
長く着続けること、そして、誰かに受け継いでもらうこと。新しいものとミックスしながら、古きよきものを継承する。クローゼットを見直すことで、新たな循環を生み出すことができる可能性がある。
ファッション産業は、石油産業に続いて世界で2番目に環境を汚染している産業だけに、古着を活用することで、おしゃれを楽しみながら、環境にも配慮できるのは、うれしい限り。「古着ひとつでおしゃれになります」をバイブルに、この年末は、クローゼットの中をしっかり確認しようと思っている。
『古着ひとつでおしゃれになります』
https://hon.gakken.jp/book/2380253600
取材・文/林ゆり
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