革新的な商品やサービスは、閉じた発想からは生まれない。外の世界に目を向け、異なる分野の知恵を取り込み、自らの常識を壊す――そんな挑戦が新しい価値をつくる原動力になる。
ユニクロのSPAモデル、日清食品のユニークな創造性、任天堂のゲーム哲学。世界を変えた企業やクリエイターの思考法をひも解く3冊から、あなたのビジネスに生かせるヒントを探してみよう。

〈選者〉『bookvinegar』編集長 坂本 海さん
ビジネス書の書評メディア「bookvinegar」編集長。大学卒業後、半導体商社、ベンチャーキャピタルを経て、2011年ブックビネガーを設立。これまで2500冊以上のビジネス書を紹介している。
外の世界からアイデアを取り入れる
『ユニクロ』
著/杉本貴司 日経BP 2090円

「ユニーク・クロージング・ウェアハウス」、略してユニクロ。「いつでも誰でも好きな服を選べる巨大な倉庫」というコンセプトが始まりだった。アイデアの原点は、創業者の柳井 正氏がアメリカで見た大学生協。そこでは書店やレコード店のように商品が置かれているだけ。当時は、接客するのが洋服店の常識だった。
ユニクロ1号店の開店から2年後、香港の小さな店で見つけたのが1500円のポロシャツ。デザインを自分たちで行ない、工場から直接仕入れていた。この発見からユニクロは製造小売業(SPA)へと転換していく。柳井氏の思考の根底には、マクドナルド創業者の書籍から学んだ「勇敢に、誰よりも先に、人と違ったことを」という言葉がある。アンテナを立てて情報を集め、アイデアを素早く実行に移す。この思考と行動様式こそが、新たな物事を生み出す原動力だとわかる。
新たなジャンルをつくる
『日清食品をぶっつぶせ 自ら創造し、自ら破壊せよ』
著/安藤徳隆、竹居智久(日経BP) 日経BP 1870円

世界中で当たり前に食べられているインスタントラーメンを世界で初めてつくった日清食品。創業者・安藤百福の孫にあたる3代目社長・安藤徳隆が率いる現在もそのDNAは引き継がれている。
「インスタントラーメンの世界では、技術を磨いてレベルが上がるほど、本物のラーメンに近づけようとしがちだ。しかし、それでは単なる美味しいラーメンになってしまい、記憶に残らない味になる」
本物に近づけるのではなく、他にない味をつくり出す。そうして完成したのが本格的なカレーやレトルトカレーではない新たなジャンル『カレーメシ』だった。商品開発競争の激しいインスタント食品の世界において、ロングセラーを生み出し続ける裏側には、新しいポジションをつくるという明確な意図が存在する。
新たな商品を開発するとはどういうことなのか、改めて気づきを与えてくれる。
本質を突き詰める
『ゲームクリエイター 宮本 茂 世界を変えたゲームづくりの思想とアイデア
「ドンキーコング」「スーパーマリオ」「ゼルダの伝説」』
著/ジェニファー・デウィンター 訳/樋口武志 解説/Jini DU BOOK 2530円

任天堂のゲーム機が成功した大きな要因の一つは、『マリオ』や『ゼルダ』など数々の大ヒットを生み出してきたゲームクリエイター宮本茂氏の存在だ。宮本氏は、何を考えながらゲームをつくってきたのか。
「ゲームをつくるときの僕の方法というのは、そのゲームの楽しさの核とは何なのかを考えることです。それを考えるために、ゲームの個々のパーツではなく、その時ゲームをプレイしている人の顔をずっとイメージしています」
宮本氏のゲームづくりは、「楽しさとは何か」という根本的な問いから始まっていることがわかる。その楽しさをデザインするアイデアの源泉は、宮本氏自身の幼少期時代の喜びの経験などによってもたらされる。
一人の天才ゲームクリエイターを俯瞰的な視点で読み解く中から、ものづくりの本質が見えてくる一冊だ。
撮影/黒石あみ(書籍) 編集/寺田剛治
かつては娯楽の象徴だったゲームも、いまや巨大産業に成長し、文化としての厚みを増している。そんなゲームの多面性を「歴史」「ビジネス」「雑学」という切り口で読み解く…







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