裁判所のジャッジ
Aさんの敗訴です。裁判所は「どちらの処分も適法!」と判断しました。以下、順に解説します。
■ 免職処分
まず、裁判所は、Aさんの行為を「販売業者を欺いて、他人名義でチケットを取得した」という電子計算機使用詐欺罪に類する行為であり、自衛隊内部の「窃盗・詐欺・恐喝・単純横領等」の懲戒事由に該当する重大な非違行為」と認定しました。チケットは、当選しなければ入手できない希少性の高いものであり、それ自体に市場価値があったからです。
ーー Aさん、ご反論でも?
Aさん
「はい、6万円の赤字だったんですよ。違法性は低いでしょ」
ーー 裁判所さん、どうでしょう?
裁判所
「結果的に赤字であったかどうかは違反の評価に影響をおよぼすものではない。取得したチケットには本質的な経済的価値があり、結果的に赤字になったとしても、本件非違行為の悪質性には影響しない」
さらに、裁判所はAさんにとって有利な事情、すなわち勤務成績についても検討しています。Aさんは、功績があった隊員に授与される「賞詞第5級」の表彰を3回受けていましたが、特別な評価には当たらないとされた。
また、処分に至るまでにAさんが反省や自戒の念を明確に示していなかった点も考慮されました。
以上のような事実から、裁判所は、免職処分に裁量権の逸脱・濫用はなく、免職処分について「違法ではない」と結論付けた。
■ 退職手当の全部不支給
退職金の不支給は、「社会通念上著しく妥当を欠く場合」に限って違法になります。最高裁がそう言っているんです。
全部不支給処分が違法かどうかについては、以下の観点から検討されました。
まず、根拠法である国家公務員退職手当法等は、懲戒免職等を受けた者に対し、非違行為の内容・程度、職務への影響、公務に対する信頼の毀損の程度、勤務成績などを総合考慮して、退職金の支給制限を判断する枠組みを定めています。
また、防衛省独自の運用方針においても、免職処分を受けた者に対しては「原則として全額不支給」とし、例外的に軽減が認められる場合のみ一部支給を可能とする構造になっています。
裁判所は、本件非違行為が自衛隊内部の「窃盗・詐欺・恐喝・単純横領等」に該当する違反行為であり、その態様が例外的に軽減が認められるケースではないと判断しました。
ーー Aさん、ご反論でも?
Aさん
「不起訴処分になっていることや、家族を扶養する必要があることから、全部不支給は過酷です」と訴えた。
裁判所
「そのような事情があるとしても、退職金全部の不支給処分が裁量権の範囲を逸脱しているとはいえない」
■ 民間企業の場合はどうなる?
本件は公務員の懲戒処分に関するケースですが、民間企業においても、懲戒解雇および退職金不支給について、おおむね同様の判断枠組みで審理されます。
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取材・文/林 孝匡(弁護士)
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