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補聴器でもイヤホンでもない 〝耳をふさがないオープンイヤー型集音器〟が登場

2025.12.12

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

NTTソノリティは、加齢や生活環境による「聞こえづらさ」に寄り添い、誰もが自分らしく会話や音を楽しめる社会の実現を目指す新ブランド「cocoe(ココエ)」を発表した。

第一弾製品として、世界初の耳をふさがないオープンイヤー型集音器「cocoe Ear(ココエイヤー)」を公開し、クラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING(グリーンファンディング)」にて12月23日よりプロジェクトを開始、2026年春ごろの全国販売を目指す。

補聴器でもイヤホンでもない新カテゴリー「耳をふさがないオープンイヤー型集音器」

cocoeはNTTの音響研究で培った特許技術と、オープンイヤー型イヤホンの開発ノウハウを融合した、NTTソノリティ独自の音響設計によって誕生した、補聴器でもイヤホンでもない「耳をふさがないオープンイヤー型集音器」という新カテゴリーで、周囲の自然音を保ちつつ、聞き取りたい音だけを自然に拡張する体験を提供する。

「日本では2025年に65歳以上の人口が3,619万人に達し、2040年には3,929万人と、国民の3人に1人が高齢者になると予測されています。

こうした状況で、国内の推定難聴者数は1,430万人にのぼり、軽度難聴は認知症リスクを2倍、重度難聴では最大5倍に増加させることが指摘されています。

聞こえ方は大きな課題である一方、補聴器の普及率は欧米の50%と比べて、日本は15%と世界的に見ても非常に低く、聞こえづらい状態のまま生活している方が数多くおられます。

補聴器にポジティブな若者とネガティブなシニア、なぜギャップが生じるのか?

GNヒアリングジャパンが展開している「リサウンド」は、補聴器をしているのを忘れてしまうほど自然であることを目指している。 こうした高性能な補聴器の普及により、難…

家族との会話が聞き取れないため疎外感を覚えたり、テレビが聞こえず大きくすると家族から音量を下げられて一緒に見ることを諦めてしまったり、会話が聞き取りづらく趣味や集まりから遠ざかってしまったりと、生活の質を大きく低下させます。

これまで当たり前にそばにあった音が聞こえづらくなってしまった方へ、もう一度音を耳元へお届けするのが『cocoe』ブランドです。

NTTグループが長年にわたり培ってきた音の技術、知見を活かした、補聴器でもイヤホンでもない新しい音の響き方、聞こえ方で、聞こえづらいと思っていらっしゃるみなさまの暮らしを、もっと楽しく、豊かに、自由にしたいと考えています」(NTT株式会社 常務取締役 大西佐知子氏)

COCOE Earは耳をふさがないことにより、聞こえている音はそのままに、足りない部分を補う自然な聴き心地と快適性が大きな特長。

片耳約10gと一般的なメガネよりも軽い設計で、耳にかけるだけで起動するため、必要な時にサッと使える。集音機能のオン・オフでワイヤレスイヤホンとしても使用可能。見た目はワイヤレスイヤホンなので、心理的なハードルも低い。

「NTTの特許技術と、当社が長年培ってきたオープンイヤー開発のノウハウを掛け合わせて、耳をふさがない仕組みでは音を増幅しにくく、ハウリングが起きやすいとされてきた、これまでの業界の定説を覆しました。音漏れを抑えながら、自然な聞こえと装着感を両立させた耳をふさがない集音器がcocoe Earです。

私たちが特に重視したのは、実際に使う方の声に徹底的に耳を傾けることです。聞こえの課題は、データだけではどうしてもわからず、生活の中の困りごとにその本質があります。

耳の聞こえに課題があっても、まだ大丈夫と感じている層に寄り添うことを大事にしたいと、50名の方たちにヒアリングを行い、開発の当初から操作性や使用感、デザインに至るまで何度もテストを重ね、ユーザー視点の製品開発を実施してきました。

みなさまに気づきと体験の場を作ることから始めたいと思っており、ドコモショップの東京・丸の内店、北海道・札幌店、福岡県・六本松店にてcocoe Earを使用した店頭応対トライアルを実施します。

耳の課題を抱える方は、55歳以上で5人に1人とされ、加えてオープンイヤー型イヤホンの市場成長率は2023年と2024年を比較して154%と伸長していることから、2026年から2027年の2年間で10万台、売上高30億円を目指しております」(NTTソノリティ株式会社 代表取締役社長 坂井博氏)

開発を担当したNTTソノリティ株式会社 cocoeプロダクトマネージャーの中野達也氏は、前職の補聴器メーカーで13年間、補聴器の開発を手掛けた経験がある。

「どれだけ性能の良い補聴器を作ったとしても、本来必要とする人たちになかなか届かない現実がありました。技術の壁ではなく、そこには文化の壁があったのです。

日本では、補聴器をつけることへの抵抗感や、まだ大丈夫という心理的な障壁、価格が気軽に購入しにくいといった課題があります。課題を解決するには、身近に使えるものを開発しなくてはという思いがありました。

こうした中、徐々にワイヤレスイヤホンが普及し、耳に何かを着けることが当たり前の時代がやってきました。この流れに乗って、新しい文化をつくる、それがcocoeプロジェクトのスタートになりました。

まずはユーザー像を深く理解するため、ワークショップやユーザーインタビューを通じて、仮説を検証しながら、製品へフィードバックをしていきました。

その結果、若者が着けているイヤホンと同じような形で、着けていても違和感がなく、ちょっとした耳の困りごとを解決してくれるもの、補聴器や集音器とイヤホンの両方の特長を持ち合わせるプロダクトとして位置づけました。

従来の集音器は、聞こえにくいシーンでわざわざ装着するものでしたがcocoe Earはオープンイヤホンとして日常生活に溶け込みながら、必要な時に周囲の音を大きくすることができます」(中野氏)

世界初のオープンイヤー型集音器であるcocoe Earは、周囲の自然音はそのままに、相手の声や必要な音を自然に拡張する「ハイブリッド伝達」を採用している。

加齢により耳の聞こえが悪くなると高音域が聞き取りにくくなるため、高音域のみ増幅して低音域は直接音で届ける。

しかし、ハイブリッドで自然な聞こえを実現するためには、技術的にレイテンシーとハウリングの2つの大きな課題があった。

「レイテンシーとは、マイクに入った音がスピーカーから出てくるまでにかかる時間のこと。集音器や補聴器は、内部で高度な音声の信号処理をしています。

入ってきた音を分析して、どのくらい音を大きくするかを周波数ごとに計算していますが、その計算にわずかな遅延が発生してしまうのです。人の耳はとても敏感なので、わずか0.0何秒という遅延でも音質に違和感を覚えることがあります。

レイテンシーは音質に非常に重要な要素であり、特にオープンイヤーの場合は、直接音と増幅音のこの時間差が短ければ短いほど、音質が良くなります。

cocoe Earは高性能なチップを採用し、レイテンシーを大幅に低減、約0.0025秒の低遅延音声処理でより自然な音質を実現しました」(中野氏)

マイクをスピーカーに近づけたとき「キーン」という不快な音が発生する現象がハウリング。ハウリングは、スピーカーが音を出力したときに出力した音の一部が漏れ、漏れた音をマイクが拾い、その音を増幅することで起きる。

「ハウリングの元凶である音漏れの解決のため、マイクやスピーカーの部品のレイアウトを最適化しながら、スピーカーからの音漏れ抑制するNTTの特許技術『PSZ(パーソナライズドサウンドゾーン)』を採用して、スピーカーからマイクへのフィードバックができるだけ少なくなるようにしています。

また、ハウリングを抑えようとすればするほど、逆にハウリング抑制機能が誤動作してしまって、ハウリングしていないのにピーという音が出てしまうことがあります。このバランスの調整を何度も繰り返し行いチューニングをしています」(中野氏)

cocoe Ear単体での操作も可能だが、スマートフォン利用者に向け、直感的に操作できる専用アプリ 「cocoe Connect」 を新規開発。スマートフォンの操作が苦手な人でも迷わず使えるよう設計された、シンプルで直感的なUIが特長。

アプリ上では「集音モード」と「TVモード」の切り替えがスムーズに行えるほか、音量や音質などの調整も簡単に操作できる。

「家族と一緒にテレビを見たいけれど、音量を上げると迷惑をかけてしまう」という悩みがシニア世代に多かったことから、自分にあった音量で快適な聞こえを実現するテレビ用のAuracast(オーラキャスト)トランスミッター「cocoe Link(ココエリンク)」も同時に展開。

テレビと集音器がボタン一つでセキュアに接続され、自分にあった音量でテレビを聞きながら、集音器として周囲とコミュニケーションをとることが可能で、一人でも大勢いる中でも、自分に合った音量でテレビ視聴ができる。

cocoe Earはクラウドファンディングを経て2026年春ごろに一般発売予定で、販売予定価格は39,600円(税込)。カラーはホワイト、ベージュ、ブラックの3色。

【AJの読み】集音器、補聴器を敬遠する課題を克服するために開発された製品

cocoe Earは補聴器ではなく集音器のカテゴリーで、集音器はオーディオ機器に分類され家電製品扱いなので、医療機器である補聴器と異なり、調整やアフターケアが必要なく、入手しやすい価格となっている。

cocoe Earも軽度な聞こえづらさを感じる人に使う製品と位置付けられており、自然の音と聞こえづらい音域を増幅するハイブリット伝達になっている。

ユーザー層を対象に徹底したヒアリングを行ったそうで、耳にかけるだけで起動する、ボタンひとつで切り替えてワイヤレスイヤホンとしても使える、テレビの音に対応したトランスミッターの展開、ワイヤレスは落としてしまうという声にも対応して、落下防止に配慮したネックストラップも付けるなど、日々の生活に自然と溶け込むような設計、仕様、デザインとなっている。

筆者の義父も聞こえづらくなっても補聴器を使いたがらず、テレビの音が大きい、テレビを字幕付きで見るので画面が見づらい、玄関チャイムが聞こえず宅配便が不在扱いになってしまうなど、同居している家族は不満を漏らしていた。

会話も大声で話しかけなくてはいけないのが面倒で家族同士の会話も減って、本人も疎外感を覚えているようだった。

米寿を迎えさすがに現在は補聴器を使用しているが、使いたがらなかった理由はやはり見た目だそうで、今でも外出するとき着け忘れることがあると話していた。

イヤホンのような外観で、耳にかけるだけで操作できるcocoe Earだったら、聞こえづらさがここまで進行してしまう前にもっと早い時期から使えて、生活の質も変わっていたかもしれない。

取材・文/阿部純子

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