ダイソーで購入できる本『今から伸ばす!IQトレーニング』に注目が集まっている。価格はもちろん税込110円だ。
著者は、株式会社バランス&チューニングでIQトレーニング講座を主催する秋谷光輝さん。秋谷さんは、IQ185を誇るJAPAN MENSA会員でもある。
「IQは生まれつき決まっている」という常識を覆し、トレーニングで伸ばせることの証明に挑戦する秋谷さんに、書籍に込めた工夫と今後の展望を聞いた。
IQテスト全国1位の実績が、トレーニング講座の出発点に
著者である秋谷光輝さんは、大学院卒業後、ソニー株式会社でオーディオ設計のエンジニアとして16年間勤務した。その後独立して起業し、現在10年目を迎える。元々は「目に見えない物事の仕組みを、数式や図式で見える化する」という学びを提供してきた。今年からはIQトレーニングの講座を本格展開している。
秋谷さんがIQに注目したきっかけは、36歳の時だ。キャリアアップのために自分の強みを知りたいと考え、幼少期を知る母親に尋ねた。すると、小学4年生の時に受けた全国一斉知能テストで、全国180万人以上の同学年の中で1位だったことが判明した。
そもそもIQとは何か。秋谷さんが定義するIQは、一般的なイメージとは異なる。物事の変化パターンを見抜き、先を予測する力であり、学力とは直接的に紐付いていないという。秋谷さんは、スポーツIQという言葉を使って、この能力をわかりやすく説明する。
「例えばサッカーはわかりやすいんですが、敵も味方もボールも常に変化しています。その変化を瞬時に察知して、今ここに移動するとチャンスが生まれる、ここにパスを出すと得点につながるだろうと予測して実行する。こうした物事を見抜いて先を予測する力は、経営でも様々な仕事でも、どの分野にも必要な土台の力だと思っています」
もちろん、知らない物事は見抜きようがない。経験や知識の積み重ねは重要だ。しかし秋谷さんは、記憶力を元にたくさん覚えることと、その情報を元に新たな発想を生み出せる力を区別する。後者がIQ、つまり知能だという。
自身のIQテストの結果が全国1位だったという事実と、IQは鍛えられるという確信。この2つが、秋谷さんをIQトレーニング講座の開発へと動かした。
「私の感覚では、IQはスポーツや勉強と一緒で、やればやるほど鍛えられるものだと思っていました。ただ、物事の変化パターンをどうすれば見抜けるのか、IQをどうすれば伸ばすことができるのかを、他の人たちに伝えてこなかったんです」
秋谷さんは、IQをトレーニングで伸ばせることを証明する活動を始めた。
IQは本当に伸ばせるのか?MENSA合格率62%の実績
一般的に、IQは生まれ持ったもので変わらないと考えられている。その象徴が、MENSAの入会テストだ。MENSAはIQ上位2%の高知能者で構成される国際グループで、入会テストは生涯で3回しか受けられない。
秋谷さんはこのルールに注目する。
「生涯で3回しか受けられないというのは、3回受けて無理ならもうIQは伸びないという前提の表れなんです。でも実際には、IQはトレーニングで伸ばせる。それを証明したかったんです」
秋谷さんの講座では、この常識を覆す結果が出ている。今年5月から7月にかけて実施した第一期の講座の受講者のうち、MENSAのテストを受けた34人中21人が合格した。合格率は約62%。中には、IQ100〜110程度からMENSA入会基準に近いIQ140を超えるまで伸びた受講者もいる。
なぜこれほどの成果を出せるのか。秋谷さんによれば、MENSA会員の多くは直感で問題を解いているが、それを言語化できないという。そこに突破口があった。
「実際にMENSA会員の方々と話をしてわかったんですが、6〜7割の人は直感で問題を解いています。自分は解ける、自分はわかる。でも、どうやって解いているのかを言語化できないんです。説明できないから他の人に教えられない。教えられないから、他の人のIQを伸ばすこともできない。ここが今までの一番のネックでした」

秋谷さんは、この問題を法則の体系化で解決した。直感ではなく、法則として体系化することで、誰でも学べるようにしたのだ。
秋谷さんが講座で伝えているのは、物事を見抜くための6つの法則だ。複雑に見えるIQの問題も、実はこの6つの法則が入り交じっているだけで、分解すれば一つ一つはシンプルな変化しかしていないという。
ダイソーから出版された『今から伸ばす!IQトレーニング』は、税込でも110円という手に取りやすい価格。いわゆる入門編であるため、6つの法則を全て詳しく解説することはしていない。しかし解説の中でその考え方は示されており、読者はこの法則を通じて、物事を見抜く力を広げていくことができる。
小学校の同級生との再会が生んだ110円のIQ本
このIQトレーニングの書籍化は、偶然の再会から始まる。秋谷さんと大創出版の代表である西田大さんは、小学校時代の同級生だ。社会人になってから久しぶりに再会し、近況を語り合う中で話が動き出した。
当時、大創出版は大人向けの商品強化に取り組んでいた。それまでダイソーの書籍は、脳トレ系や子供向けドリルが売れ筋の中心だった。大人向けのラインナップを充実させるため、教養・雑学系という新ジャンルへの着手が進む。クイズ作家でMENSA会員でもある近藤仁美さんの本も、この流れの中で企画が進行していた。
西田さんは当時の状況をこう振り返る。
「ちょうど商品を開発している時に、新しい題材をもっと増やしたいという話をしていました。そのタイミングで彼と再会して、IQを伸ばすための講座を広げていこうと思っているという話を聞いたんです。これはいいなと思いましたね」

IQをトレーニングで伸ばせるという切り口は、脳トレとも違う新しいアプローチだ。しかも110円という価格で、誰でも気軽に試すことができる。西田さんはすぐに出版を打診し、その場で話がまとまった。
ダイソーの商品開発では本社承認が大きなハードルとなるが、今回はスムーズに通った。近藤さんもMENSA会員で、秋谷さんは以前から面識があった。このつながりが、企画を円滑に進める要因の一つとなった。
110円で本格トレーニングを実現した制作の工夫
110円という価格帯に合わせて、編集と執筆の両面で様々な工夫が施された。編集を担当した大創出版・編集者の木下さんはこう語る。
「110円という価格帯だと、ライトユーザーの方も手に取ることが多いんです。なので難しくなりすぎないよう配慮しました。法則を完全には見抜けなくても解けたり、直感で解けたりする問題も多数あります。ただ、IQを伸ばすという点では解説が重要で、解説を読むと『こういう考え方ができるんだな』と、理解を深めることができます」
問題は解きやすく、解説で学びを深める。この設計が鍵となった。
一方、秋谷さん側にも工夫があった。
「もともと私が展開しようと思っていたのは、MENSAのテストで出題される3×3のマスの問題が中心でした。ただ、それだけだと偏りがあると思いました。大創出版さんからリクエストをいただいて、この本のために新しい切り口の問題も作ったんです」
問題のバリエーションを広げることで、より幅広いトレーニングを実現した。制作過程はスムーズに進んだという。
木下さん自身も、制作を通じて学びがあった。
「もともと私は本能的に判断するタイプなんですけど、秋谷先生とお話しして、切り分けて考えるということを学べました。変化のどこに注目すべきか、こっちを見てみる、違うならこっちを見てみるという思考法ができるようになりましたね」
IQの向上が、人の生き方にも良い影響を与える
販売は順調な滑り出しを見せている。ダイソーの販売力もあり、すでに複数回の再販が実施されている。
読者からの反響も上々だ。木下さんはパズル誌の担当も兼任しており、そこで広告を出したところ、予想以上の反応があったという。IQ本を購入した読者から「パズル誌にもこのタイプの問題を入れてほしい」という要望が寄せられており、IQトレーニングへの関心の高さがうかがえる。
今後について、西田さんは2〜3年後のリニューアルのタイミングでの展開を視野に入れる。脳トレや雑学・教養はテレビのクイズ番組でも注目されており、ニーズに応じて広げていきたいという。
一方、秋谷さんの視点はさらに先を見据えている。書籍を様々な切り口で出していくとともに、学びを世界中に広げたいという。
「IQが伸びると自分に自信が持てるようになります。そうすると他人を批判したり攻撃したりすることも減って、お互いに分かち合える関係が生まれる。大袈裟な話かもしれませんが、一人一人のIQが高まることで、社会全体がより穏やかになっていくと信じているんです」
110円から始まるIQトレーニング。その先に秋谷さんが見据えるのは、一人一人の自信と、それが生み出す穏やかな社会だ。
※店舗により商品の取扱が異なります。
取材・文/宮﨑駿
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