インフルエンザが全国で流行拡大中だ。高熱や咳、強い倦怠感などの症状が出るインフルエンザだが、薬を飲みゆっくり休めば、1週間ほどで多くの人が回復する。
しかし、重症化したり、最悪命を落としたりしかねないのが、高齢者や基礎疾患がある人だ。このような人達に向けて、強い味方が現れた。
それが、2024年末に製造販売が承認され、今年の実用化が目指されていた高用量インフルエンザHAワクチン(商品名エフルエルダ筋注)だ。
今年こそ実用化がかなわなかったが、来年こそはと期待される「エフルエルダ筋注」とは一体何がすごいのか。ちぐさ内科クリニック覚王山院長の近藤千種先生に話を聞いた。
期待のワクチン「エフルエルダ筋注」
「エフルエルダ筋注」とはフランスの製薬会社サノフィが製造販売するワクチンだ。先日、厚生労働省が来年の10月から、75歳以上を対象として定期接種に位置付けるという方針も決めた。
■高齢者向け、抗原量が従来の4倍

「抗原量が従来の4倍の高容量ワクチンです。インフルエンザのワクチンというものは、そもそもインフルエンザの抗原の元になるものが入っています。その量が単純に多い。抗原量が多いほど免疫応答が強くなりやすく、抗体価の上昇が期待できます」
高齢者はじめ、基礎疾患があるなど重症化リスクが高い人にとって、非常に大きなメリットがあるワクチンだという。
「人間は、年を重ねると〝免疫老化〟が進み、ワクチンに対して体が反応しにくくなります。だから高齢者では、抗原量が多い高容量ワクチンのほうがしっかり免疫がつきやすいのです。逆に若い人は、免疫の老化がそもそもなく、従来のワクチンで十分免疫がつく。高容量ワクチンを打つメリットは少ないです」
■海外では10年以上前から使用実績アリ
このワクチンは、米国では Fluzone High-Dose として2010年に承認され、10年以上の使用実績があり、臨床データなどもしっかり集まっているという。
「高齢者の重症化予防に強いというエビデンスが存在します。通常のワクチンより高齢者の抗体価上昇が強いとされ、発症予防効果も上がり、入院や肺炎のリスクの低下が、大規模研究で示されています」
新たなワクチンにデメリットはないのか
高齢者はコロナやインフルエンザで亡くなってしまう人がいる。これが実用化されれば、非常に強い味方になりそうだ。しかし、ワクチンというと副反応なども気になってしまう。
「打ったあと、腕の痛みが少し強く出たり、赤み、腫れが強く出たりなど、局所反応がやや強いと言われてはいます。しかし、重篤な副反応が増えるというデータは今のところありません」
ほか、デメリットはないのだろうか。
「価格は従来のインフルエンザワクチンより高くなる可能性はあります。抗原量が4倍ということで、製造過程も複雑で、製造のコストも当然増します。また、供給量に限りもあるでしょう。製造過程が複雑ということは、製造する難易度も高いと言えます。つまり、初年度などは特に供給が不安定になるかもしれませんね」
今年は9月末という早い時期から流行し始めたインフルエンザ。高容量ワクチンをすぐにでも打ちたい……という人もいそうだが、今年は従来のワクチンを打ち、しっかりと感染対策を行ってほしい。
海外では10年以上の歴史のある、安全性も高い高容量ワクチン。2026年の実用化が期待される。
近藤千種医師プロフィール
内科学会認定内科医、抗加齢医学会認定専門医。帝京大学医学部を卒業後、総合犬山中央病院、ちくさ病院副院長などを経て2023年10月名古屋市内に「ちぐさ内科クリニック覚王山」を開院。
取材・文/田村菜津季
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