例年ではインフルエンザの流行は10月下旬〜3月頃が中心だ。しかし、今年は9月末頃から流行シーズン入りし、急速に流行が拡大している。
インフルエンザといえば型があるが、いったい感染拡大を起こしているのはどのような型なのだろうか。ちぐさ内科クリニック覚王山院長の近藤千種先生に話を聞いた。
今年流行しているインフルエンザは何型?

インフルエンザの型とは、ウイルスの種類のことだ。大きくA型とB型に分けられ、さらに細分化されるという。
「現在流行しているインフルエンザの型はA型のH3という型が中心です。H3は高熱や倦怠感が強いタイプとして知られています。実際に患者さんと接していても、38度~40度の急な高熱、強い倦怠感、関節痛、咳が長引くという訴えをされる方が非常に多いです」
■インフルエンザが早くから流行っている理由
1か月も早く流行がスタートしたが、それについては「免疫ギャップ」が大きな要因ではないかと近藤先生は言う。
「コロナ対策で数年間インフルエンザウイルスがほとんど流行しない時期がありました。その間、インフルエンザに触れなかったことで、体が敵を忘れてしまったような状態になっている。つまり、抗体を保有している人の率が非常に下がっていて、広がりやすい状況になっているということです。もちろん、急激な寒さや乾燥といった環境要因もそこに重なって、爆発的に流行したと考えられます」
■今年の傾向は同時感染!?
たくさんの患者を診ている中で、他にも今年の傾向として気になる点があるという。
「複数のウイルスに同時感染されている方が、例年より多い印象です。例えば、インフルエンザとヒトライノウイルスとダブルで感染しているという人ですね。同時に感染していると、一つのウイルス単体で感染するよりも、症状が〝上乗せ〟になり、体感的につらくなることがあります」
今からできる感染対策は?

まだまだインフルエンザの猛威は続く。しっかり感染対策を行いたいところだ。
「外出時のマスクや、帰宅した後の手洗いうがいなどを徹底するのは大前提。特に今年は家庭内感染が多いと思います。もし家族の中に感染者が出たら、タオルの共有を避ける、ドアノブなど共有部分は消毒を意識するといったことも非常に大事になります。また、ウイルスの空中寿命は、湿度が40~60%で大幅に減少するという研究もあります。加湿も意識してほしいポイントです」
そして何より、インフルエンザウイルスに対抗できる体を作るうえで「ワクチン」は強力な味方となる。
「今からでもワクチン接種は十分に意味があります。確かに、ワクチンを打ってすぐ翌日から抗体価が高いというわけではなく、ワクチンを打って免疫がつくまでに二週間ぐらいかかるのは事実。しかし、流行は3月ぐらいまでは続きそうなので、今から打っても恩恵を得られるでしょう。発症を予防するだけでなく、かかった場合でも重症化を防ぐ効果が期待できます」
流行のスタートが早かったからといって、終了も前倒しになるということはなさそうだ。
「例年通り、年末から年明けにかけてはA型が中心です。その後、1月の後半~2月頃からB型が増え始め、2~3月にB型のピークを迎えるという流れを辿ると思います。早期流行の年は、シーズン自体が長くなる傾向にあると言われます。A 型の流行のスタートが早かった分、シーズン全体は例年より長くなる可能性が高いでしょう」
もう既にインフルエンザに罹った人もいるかもしれないが、A型B型に両方かかるケースももちろんある。9月から流行しはじめたと考えると、半年近くインフルエンザと戦う必要がある冬になりそうだが、しっかり感染対策をして過ごしてもらいたい。
近藤千種医師プロフィール
内科学会認定内科医、抗加齢医学会認定専門医。帝京大学医学部を卒業後、総合犬山中央病院、ちくさ病院副院長などを経て2023年10月名古屋市内に「ちぐさ内科クリニック覚王山」を開院。
取材・文/田村菜津季
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