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渋谷の喫煙実態調査で判明した新課題「はみ出し喫煙」とは?

2025.12.06

喫煙に関して世間が厳しい目で見ている現実はあるが、加熱式たばこに移行する人が増えて、喫煙者自身も周囲に気を配っている印象もある。

そんな中で喫煙を取り巻く環境について、フィリップモリス ジャパン(PMJ)と一般社団法人「渋谷未来デザイン」は、2025年10月30日に開催された『SOCIAL INNOVATION WEEK2025』で、渋谷区の喫煙環境改善プロジェクト「Action for 0」に関するトークセッションを開催した。

「Action for 0」プロジェクト概要

路上飲酒、路上喫煙、ゴミのポイ捨てなど都市課題”ゼロ”を目指す「渋谷グッドマナープロジェクト」の一環の活動で2025年4月に発足。

渋谷未来デザインとPMJが共創パートナーとなり、渋谷の喫煙問題ゼロを目指し、官民連携で取り組んでいる。

・長期目標:渋谷の喫煙環境を次世代型モデルへ変えていく(喫煙所の数、在り方、喫煙者の意識)
・プロジェクトのゴール:喫煙者/非喫煙者が共存できる渋谷都市デザイン案の作成
・たばこに関する都市課題解決を目指すためのマナー改善アプローチは以下の通り:
1.たばこに関わる都市課題の定量的な把握
2.路上・公共空間のクリーンアップ
3.産官学民での課題共有・対話の場の創出
4.国内外の成人喫煙者に対するマナー・モラルの啓発
5.課題解決型の喫煙環境の構想と整備

渋谷の喫煙課題解決に向けた官民連携プロジェクトの始動

渋谷区は、特定のイベント時期に一部の来街者による迷惑行為などによって、渋谷駅周辺地域の安全で快適な秩序が脅かされる事態が発生していたことから、午後6時から翌朝5時までは路上や公園など公共の場所における飲酒を通年で禁止するなどの規制強化をしてきた。

そんな中でも日常的なたばこのポイ捨てや路上喫煙は依然として課題が残っており、行政機関を含む地域住民から改善の要望が寄せられていたという。

こうした声に応える形でPMJと渋谷未来デザインは、2025年4月に渋谷グッドマナープロジェクトの一環として「Action for 0」プロジェクトを共同で発足。

プロジェクトでは、単なるマナー啓発に留まらず、喫煙実態調査に基づいた喫煙環境の根本的な改善を目指しており、その第一歩として2025年4月から2025年8月にかけて渋谷駅周辺8エリアで大規模な実態調査を実施した。

喫煙実態に関するトークセッション「ACTION for 0 始動!!~新しい都市インフラ『GOOD MANNER SPOT』」を開催!

2025年10月30日15時30分~16時30分に「SOCIAL INNOVATION WEEK2025」(会場:渋谷サクラステージBLOOM GATE ZONE A)で行われたトークセッションには、渋谷区副区長の杉浦小枝氏、東京都市大学都市生活学部准教授の中島伸氏、明治通り宮下パーク商店会会長の百瀬義貴氏、一般社団法人「渋谷未来デザイン」ジェネラルプロデューサーの金山淳吾氏、フィリップモリスジャパン合同会社環境開発部部長の鶴岡斉氏が参加。

産官学民の知見を集めて解決策を議論し、喫煙者・加熱式たばこユーザー・非喫煙者が共存できる次世代型ソリューション「GOOD MANNER SPOT」構想も発表された。

さらに渋谷駅周辺で約5か月間にわたり実施した「渋谷駅周辺主要エリアの喫煙実態調査」の結果について、喫煙所の認知不足と数不足が路上喫煙やポイ捨ての主要因であることが実証されたという報告も行われた。

「渋谷駅周辺主要エリアの喫煙実態調査」でわかった「喫煙所難民」の実態

PMJ環境開発部部長の鶴岡斉氏は、渋谷駅周辺エリアで実施した「路上喫煙」、「はみだし喫煙」、「ポイ捨て」に関する実態調査結果を報告したが、「調査から喫煙所が「見つけにくい」、「足りない」、「混んでいる」という実態が明らかになった。これは単なるマナーの問題ではなく、都市インフラの課題として捉える必要があります」とコメントした。

特に注目すべきは、従来の「路上喫煙」や「ポイ捨て」に加えて、「はみだし喫煙」という新たな課題が明らかになった点だ。

喫煙所など決められた場所には行くが、混雑で中に入れずに外や近辺で喫煙する行為を指す言葉だが、過去に喫煙マナー違反をしたことのある満20歳以上の喫煙者のうち、93.4%が「混んでいるから」という理由で「はみだし喫煙」をしていた実態が判明した。

都市課題解決におけるマクロ・ミクロ分析の重要性

東京都市大学の中島伸准教授は、今回の調査手法の意義について次のようにコメントしている。「都市課題の解決には、マクロ視点だけでは不十分です。

今回のようにエリアごと、時間帯ごと、属性ごとに詳細な分析を行うことで、それぞれのエリア特性に合わせた、きめ細かな対応が可能になります。細かい仮説を立てないと、具体的な対策は生まれません」

調査では、地域ごとの特性が明確に浮かび上がった。センター街では20代が64%を占め、外国人比率が約40%と高かったが、渋谷中央街や道玄坂では飲食目的の日本人の30代と40代が多数を占めるなど、エリアによる違いが顕著でした。

これに基づけば、センター街では多言語対応のマナー啓発、道玄坂では飲食店との連携などエリア特性に応じた施策の立案が有効といえそうだ。

東京都市大学の大学院生からは、都市の喫煙課題に対する具体的な提案も発表された。バッドスモーカーをグッドスモーカーに変えるためのデザイン、グラデーションのエリア分けによる喫煙者・非喫煙者の共存、ソーラーパネルを活用した環境配慮型の喫煙スポット、災害時の電源としての活用など、学生ならではの新しい発想は今後の参考になりそうだ。

喫煙の状況に関する行政と地域が抱える課題と期待

渋谷区副区長の杉浦小枝氏は、行政の立場から現状の課題を共有する形でコメントした。「コロナ禍が明け、来街者が激増しており、対策が追いついていない状況です」と述べた上で、「民間企業との連携により、より効果的な喫煙環境整備が実現できます。

喫煙者・非喫煙者の双方が快適に過ごせる街作りは、多様性を尊重する渋谷区の方針とも合致します」 と今回の官民連携に期待を寄せていた。

明治通り宮下パーク商店会会長の百瀬義貴氏は、地域の実情について「路上喫煙やポイ捨ては、店舗前の美観を損なうだけでなく、お客様からの苦情にもつながる深刻な問題です。

しかし同時に喫煙者のお客様も大切にしたい。この両立が地域の大きな課題でした」とコメント。

その上で加熱式たばこ専用喫煙所の実証実験に賛同した理由については、「加熱式たばこ専用であれば、周辺への影響を最小限に抑えながら、加熱式たばこユーザーや喫煙者のニーズにも応えられると考えました」と語っている。

具体的なソリューション他都市の事例と喫煙所の形態

PMJ環境開発部部長の鶴岡斉氏は、2025年1月に大阪市が路上喫煙禁止エリアを全域に拡大した時に、PMJが21か所に加熱式たばこ・紙巻たばこ専用併設型喫煙所を寄贈した事例を紹介し、「設置前後で路上喫煙が大幅に減少し、周辺住民からも高評価を得ています」とコメント。

喫煙所の形態については、「屋内型、パーティション型、コンテナ型それぞれに特徴があり、設置場所の条件や予算に応じて最適な形態を選択することが重要」と場所に合ったものを設置することをポイントとして挙げた。

次世代型喫煙所「GOOD MANNER SPOT 」実現に向けた構想

トークセッションの最後には、全登壇者による「GOOD MANNER SPOT」実現に向けた具体的な議論が展開された。商業施設内の喫煙所が24時間アクセスできない課題や主要動線上への戦略的な喫煙所配置の必要性が指摘されたが、登壇者全員が喫煙問題に対して解像度を上げて取り組んでいくべきだという共通認識と産官学民が連携して一歩ずつ解決策を実現していくことが確認された。

PMJと渋谷未来デザインは、次世代型加熱式たばこ・紙巻たばこ専用併設型喫煙所の実証実験を開始する計画を検討しており、加熱式たばこ専用エリアを設けることで煙や臭いの影響を最小限に抑えて、加熱式たばこユーザー・喫煙者・非喫煙者が快適に過ごせる空間設計を目指しているという。

セッションの進行を務めた渋谷未来デザインの金山淳吾氏は、「渋谷は今、大規模な再開発の途中にあり、大きなチャンスを秘めています。

この喫煙環境の課題解決を起点に、商業施設や商店街と連携しながら、より良い都市のグランドデザインを描いていきたい。デザイナーや地域の方々と一緒に、一歩ずつ解決策を実現していきます」と今後の展望についてのコメントでセッションを締めくくった。

喫煙所の設置や喫煙に関するマナーは、今後も喫煙者を取り巻く大きなテーマとして考えなければならないだろう。喫煙所設置は街作りにも関係することなので、官民の協力体制でよりよい解決策を見つけてほしいものだ。

「渋谷駅周辺主要エリアの喫煙実態調査」概要

調査期間:2025年4月~2025年8月
調査エリア:渋谷駅周辺8エリア(ウェーブ通り、宮益坂、渋谷中央通り、渋谷1-27(高架下)、渋谷リバーストリート、渋谷センター街、道玄坂、明治通り渋谷1-24)
調査方法:
1.ポイ捨て数量調査:月次、各エリア×2回実施
2.路上喫煙者プロファイル調査:四半期+大規模イベント期間、目視チェック
・調査日:4月30日、5月3日、6月11日、6月13日、8月13日、8月16日
・調査時間帯:(1)8時~9時 (2)13時~14時 (3)22時~23時
3.定性調査:paspa宮益坂、恵比寿駅東口でのインタビュー
・paspa宮益坂:2025年4月9日~4月11日
・恵比寿駅東口:2025年4月21日~4月23日
・有効回答数:426名(紙巻たばこ喫煙者205名、加熱式たばこユーザー221名)
主な調査結果
・ポイ捨て数量調査:8日間で合計1万3776本の吸い殻を回収(紙巻たばこ70%、加熱式たばこ30%)
・路上喫煙者プロファイル調査:6日間で3411人の路上喫煙者を確認。日本人20代~30代男性が77%を占め、67%が夜間22時~23時に集中
・定性調査:路上喫煙の理由として「喫煙所がわからない/探すのが面倒」(37.6%)、「近くにない/不便」(38.9%)、「場所が少ない」(11.4%)が上位を占める。喫煙所はみだし喫煙の理由としては、ほとんどの人が「混んでいるから」(93.4%)と回答。

https://www.pmi.com/markets/japan/ja/news/details/20251118-pmj-pressrelease-good-manner-spot

構成/KUMU

30年以上暮らした東京から実家に戻った地方在住フリーライター。得意分野は、ゲーム、アニメ、マンガやIT&デジタル関連など。自宅でリモート取材や自宅作業が増えたので、20年以上ぶりにフル自作PCを作成して活用中。最近の取り組みは、実家で発掘したセガマークⅢ以降の昭和から平成のゲーム機が動くか点検すること。

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