イギリス発のシティガイドメディア「Time Out」が例年発表している「世界で最もクールな街」ランキングの1位に東京・神保町が選ばれた。
好きな本を見つけたり、美味しい食べ物がたくさんある街だが、なぜこんなにも愛されるのか。神保町の隠された魅力の一つにあげられるのが、美しい建物の存在である。Time Outの記事のトップに紹介されている写真も、矢口書店の美しい外観だった。
神保町界隈は戦災の被害を受けず、今では珍しいレトロな建築物が多く残されている、稀有な街のひとつでもある。
本の醸し出す空気と、この古い建物が絶妙にマッチしている。そして、よく見ると建物には個性があり、装飾も細かく工夫されている。
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神保町界隈の建物探索は、水道橋駅を下車して、神田カトリック教会を見学後、誠心堂書店の前を通り、神保町交差点からすずらん通りを抜けて、文房堂前からお茶の水方面へ行き、最後にニコライ堂まで行くルートがお勧め。
外装も内装も見どころ満載の誠心堂書店
古書店など店舗兼住宅の建物の正面を銅板やモルタル、タイルなどで美しく装飾した看板建築と呼ばれる建物が、神保町には残されている。看板建築は特に昭和初期に多く造られた、日本独自の建築様式のひとつ。商業活動が活発化し、差別化を図るために、店舗ごとに凝ったデザインに仕上がっている。歴史的に価値のある建物である。
誠心堂書店もその一つで、タイルは旧帝国ホテルで使われていたものと同じだと教えてくれた。
さらに、店主によると、創業者は美しい外観にしただけでなく、店内の装飾にもこだわった。「創業者の祖父は、とても凝り性な人で、外観だけでなく、店内の天井の木造部分の彫りまで、手づくりなのですよ」と教えてくれた。
最近では通りかかった外国人観光客から「なんと美しい建物でしょう」と声を掛けられることが多いと言う。外国人でなくても、声を掛けたくなる建物である。
多くの人から「残してほしい」との声を受けた文房堂の外観
創業明治20年の老舗画材店・文房堂の建物も、神保町を代表する美しい建物のひとつ。平成2年に改築工事のため、店舗部分は改修されたが、関東大震災でも焼失しなかった外側部分を残している。この外観に愛着のある人は多く、改修時に多くの人から「残してほしい」という声が上がったという。
4連のアーチ型の窓や彫刻的な装飾は印象的で、建物好きな人にはたまらない個性的な外観である。表面に貼られたタイルは重厚なスクラッチタイルで、飾られた陶器の花飾りがちょっとロマンチック。画材店らしく石膏像もあり、ずっと見ていられる美しい建物である。
紹介した建物の他にも、うなぎ今荘や大丸やき茶房など、美しい建物はたくさんある。
一誠堂書店の窓枠の緑のグルグルはなんだか楽しい気分にさせてくれるし、東京堂の外壁のフクロウもとびきり可愛い。東京堂はブックカバーも素敵なので、建物散策につかれたら、ぜひこちらの書店で本を買って、一階のカフェでひとやすみしてみては?
お腹が空いている人は東京堂近くの立ち食いの名店、小諸そばを。この店舗入り口の上部には、かまぼこ型の飾りが施されている。雨風に耐えた跡がくっきりと見える装飾で、柱の部分には街頭か看板が設置されていたような跡もある。建物を見ながら当時の姿を想像してみるのも楽しい。小さく意匠を凝らしたデザイン見つける楽しさを、ぜひあなたも体験してみてほしい。
文/柿川鮎子
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