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口にくわえるだけで歯みがきが完了する自動ロボット歯ブラシ「g.eN」の革新性

2025.12.05

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

早稲田大学ロボット研究室発のスタートアップ企業「Genics」は、口にくわえるだけで自動的に歯みがきができるロボット歯ブラシ「g.eN(ジェン)」の量産化に向け、12月2日よりクラウドファンディング「Kibidango」にてプロジェクトを開始した。

歯ブラシが自動的に歯にフィットして前歯から奥歯まで丁寧にみがいてくれる

Genics代表で「g.eN」の開発者である栄田源氏は、「アイアンマン」の映画をきっかけにロボット工学に興味を持ち、早稲田大学でロボット工学を専攻。ロボット技術で人々の健康や生活を支援したいと考え、修士課程在学時に全自動口腔ケアロボットのアイデアを着想、研究を開始した。2018年の会社設立後、2019年には世界最大級の家電見本市「CES 2019」(米国ラスベガス)で初披露し注目を集めた。

10年かけて開発したロボット歯ブラシ「g.eN」は、口にくわえるだけで、最短1分で歯みがきが完了する「全自動歯みがき機能」と、口腔の機能を維持・向上させる「全自動口腔内刺激」の2つの機能を持ち、子どもから高齢者、障害のある人まで幅広い層を対象としている。

「歯列形状は個々で異なるものですが、歯の形状に対して歯ブラシが自動的にフィットして歯みがきができるという汎用性のある歯ブラシを開発、歯に沿って自動的に前歯から奥歯までブラシが動きみがいてくれるため、スキルがなくてもダイレクトにきれいにみがくことができます。全自動歯みがき機能は世界初の技術で、複数の特許を出願・取得しています。

全自動口腔内刺激については、口が開かない、口にものを入れるのが大変、口の中を刺激することに慣れてない、意識して噛めないといった口の機能に対する課題を持っている方が相当いることがヒアリングでわかったことから、歯みがきで困っている方々に対して歯みがきの支援ができないかと、アタッチメントを新たに開発しました。

口の中を刺激することによって、身体のトレーニングと同じように口内もトレーニングして機能を維持でき、最終的には歯みがきもしやすくなり、食べる、話す、呼吸の課題解決につなげることができるようになります」(栄田氏)

小学生から高齢者まで200台以上が日常生活で活用された、3Dプリンター製の限定モデルのテスト販売を経て、今回新たにユーザーの意見を反映し改良。新モデルは最大42%小さくなり、重さも約100g軽量化されて子どもでも持ちやすくなった。(※下記画像左が限定モデル、右が新モデル)

動作モードも従来のお手軽モード、ていねいみがきモードの2モードに、重点ケアモード、子どもモードが加わり4モードとなった。

重点ケアモードは特定の歯をより重点的に時間をかけてみがくモードで、子どもモードは子どもの小さい歯列に合わせて動きの範囲を調整したモード。これにより、利用者の口の状態やニーズに合わせた最適な動きを選択できるようになった。また、充電ポートをUSB Type-Cに変更し、より早く充電できるようになった。

歯ブラシは口が大きく開けられない人や子ども向けに、上の歯用と下の歯用が分かれているが、新たに一般向けに、より楽に歯みがきができる上下一体ブラシ(大人用のみ)も登場。マッサージパーツは口の状態に応じて3サイズ(SS、 S、M)用意している。

「g.eN」は歯と歯茎の間など、歯周病につながる部分のみがき効果を検証しており、歯科医師や大学教授の協力を得て論文を発表。2022年の論文では、試作歯ブラシが口腔衛生を保つのに有効であると評価され、歯周病リスク低とされる基準を達成した。

複数の研究機関(歯科)の教授からも口腔ケアに有効な製品として評価を得て、様々な現場で活用され始めている。

昨年12月から、歯科クリニックの事業展開を行う医療法人 芯聖会と提携して歯科ドック・歯科健診の促進や全自動歯ブラシを活用したセルフケアソリューションの提供を開始。

提携している「新宿三丁目駅歯科キースブライトクリニック」院長の仮屋聖子氏はこう話す。

「歯を失う原因の9割は虫歯と歯周病です。歯を失うと認知症リスクは、歯が20本以上ある人と比べて1.9倍高くなります。しかし、これは治療と予防がしっかりできていれば防げるものです。当院では予防のための歯科検診を行っており、歯の正しいみがき方や口腔ケアについて指導しています。

『g.eN』については、最初は機械でみがけるものなのか?と疑問に感じていました。なぜなら、歯科衛生士さんが患者さんに15分以上かけて、みがき方や歯間ブラシの使い方を丁寧に指導しても、指導通りに7割を自身でみがくのは非常に難しいことだからです。

それを機械でどうやるのだろうと思っていましたが、栄田社長が研究、開発を重ねてこられて、性能を確認させていただくと手でみがくより、はるかに効率よく正しくみがけることがわかりました。

また、口腔マッサージができる機能も非常に重要です。乳幼児期と高齢期は口腔機能が低下してしまうため、しっかりと管理することが大切で、口腔機能はお口の中だけでなく、体全体に影響を及ぼします。

当院では旧モデルのときから『g.eN』を使って口腔機能管理を行っており、お口の中をマッサージすることで、口腔機能を維持するだけでなく上げていく、またが下がらないようにすることを大切にしています。

栄田社長は当初は『全自動歯ブラシ』と呼んでいましたが、ロボット技術をこれだけ活かしているのだからと『ロボット歯ブラシ』と呼んだらいいのではと、ご提案させていただきました。

電動歯ブラシや音波振動歯ブラシに今すぐ取って代わるものではないですが、今回のクラウドファンディングで認知が広がり、電動や音波と並ぶくらいの歯ブラシになってほしいと期待を込めておすすめしています」(仮屋氏)

「g.eN」のクラウドファンディングは2026年1月29日まで実施。クラウドファンディング終了後、2026年中に一般量販店での販売開始を予定している。

【AJの読み】ズボラな人こそ利用価値大!将来的には美容系にも?

電動歯ブラシは自身で動かさなくてはいけないので、歯列の状態によってはみがき残しが出てくることもある。「g.eN」はユーザーの歯列に合わせて歯ブラシが自動で動いていくので、効率よく、みがき残しもなく歯みがきができる。

アタッチメントを使えばスマホやテレビを見ながら“ながらみがき”もできる。面倒だからと歯みがきがおざなりになってしまうズボラなタイプには、口にくわえるだけできれにみがいてくれるというまさにもってこいのロボット歯みがきだ。

いつもの歯みがきと同じ要領で、同じ回数をみがいてOK。歯みがき粉は使わなくてもよいとのことだが、使ってみがいても問題ない。

歯ブラシの交換目安は2か月。今後はアプリを使ってスマホと連携しさらにパーソナライズしたり、お風呂の中でも使えるような防水タイプも検討しているという。

実際に口腔マッサージを試してみたが、予想以上に口の中が動かされる感じ。ほうれい線対策で表情筋を動かすトレーニングがあるが、それに近いような感覚でこれは美容にもイケるのではないか?と栄田社長に聞いたところ、将来的には美容系の領域にも応用していきたいとのこと。

取材・文/阿部純子

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