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作家・和田竜はなぜ〝戦国最後の怪物〟を描いたのか?待望の最新作「最後の一色」に込めた思いに迫る

2025.12.27

『村上海賊の娘』から12年──。待望の最新作『最後の一色』に込めた思いとは?

和田 竜さん

作家・脚本家
和田 竜(わだ りょう)さん

1969年生まれ。早稲田大学卒。業界紙記者の時に書いた脚本『忍ぶの城』で第29回城戸賞を受賞。同作を小説化した『のぼうの城』で07年に作家デビュー。寡作ながらベストセラーを連発している。

〝一寸先は闇〟の史実に光をもたらす男たちの物語

 織田信長が権勢を誇る戦国時代に同い年の若き武将が激しくぶつかり合う最新作『最後の一色』。〝戦国最後の怪物〟といわれる一色五郎と長岡家当主・藤孝の子である長岡忠興の因縁が描かれる。執筆のきっかけは、和田氏が海音寺潮五郎(かいおんじ ちょうごろう)の短編『一色崩れ』を読んで興味を持ち、15年に京都・丹後へ取材に行ったことだったが、その時点で書くつもりは全くなかったという。執筆を始めるまでにどんな変化があったのか。

「16年に子供が生まれて、2年ほど仕事をストップしたんです。その間に世の中がガラッと変わった感じがあって。それで18年末から次に書くことを考えて取材を始めたら、丹後の史実がまるで違うように思えたんです。一寸先は闇というか、救いのない出来事が逆に光って見えたことで『これは物語にできそうだ』と思い、19年7月から本格的に取材をスタートしました」

 ところが翌年、コロナ禍で外出がままならなくなり、史料を買っては読む生活が続いた和田氏。その執筆スタイルは少々変わっている。徹底的に史実を調べると、物語の設計図となるコンストラクションを作成して話の起伏を設定、そこからシナリオを執筆し、地の文や史実等を加筆して小説の形へと落とし込んでいく。

「普段はシナリオ通りに執筆するんですが、シナリオを書く間に父が他界して、その期間に書いた部分の出来が良くなくて……。連載中、寝ている時に新しいアイデアを思いつき、目覚めて『これだ!』とすぐに机へ向かってワーッとコンストラクションとシナリオを書き換えたんです。執筆中に展開を変えたのは初めてで、僕にとっては綱渡りでしたね」

 また、執筆中は昼過ぎに起床し、食事や散歩をしながら構想を練り、深夜12時から明け方頃まで酒を飲みながら原稿を書くという昼夜逆転スタイルだ。

「子供ができてからの生活は朝型で、執筆時だけ昼夜逆転です。やっぱり夜じゃないと書きにくい、ノリが悪いっていうのはありますね。午後になると子供が学校から帰ってきて、遠慮なく仕事部屋に入ってくる(笑)。なので今は、外で考えていた時間が子供と過ごす時間に置き換わりました。今作には子供が何人か出てくるんですが、子供ができたことでちょっと意識が変わりましたね」

 それにしても前作から12年、作品の完成までに焦りはなかったのだろうか?

「むしろ楽観的に考えていたかな。普通の作家は年に1本か2本は書いているわけだから、僕もできればそうしたいんですけど、自分のやり方を貫いてしっかり調べて、時間をかけて物語を練って書かないと、こうしてインタビューを受けることなんて恥ずかしくてできないし、『つまんないもんできちゃったな』と思っていたら、お話しなんてできません。だからいつも渾身のものを書いているつもりだし、よく調べたなと自分でも思います。大して努力もしてないのに『書けました』みたいなことを言うって、やっぱりできない。『最後の一色』はとにかく調べ抜いて、考え抜いたんで、面白くできてると思いますし、読み終わったら、人に言える何らかの知識がたまっていると思います」

歴史巨編『最後の一色』の読みどころを徹底解説!

あらすじ

『最後の一色』上巻

『最後の一色』上巻
小学館 2100円

『最後の一色』下巻

『最後の一色』下巻
小学館 1900円

信長の命で丹後支配を目指す長岡家の前に、丹後の守護大名・一色五郎が立ちはだかった。いつかこの手で討ち取ると心に決めた長岡忠興だったが、2人は敵と味方とは簡単に割り切れない、不思議な縁と運命に翻弄されていく。

登場人物

登場人物

一色五郎

痩身巨躯(そうしんきょく)で手足が長く、左目が極端に大きい。2本の太刀で勇猛果敢に戦うが、多くを語らず、なぜか時運に逆らわない選択をする。

長岡(細川)忠興

信長の落胤(らくいん)ではと噂されるほど見た目や激しい気性がそっくりで、常に癇癪と怒気をはらむ。正室は明智光秀の娘・玉(細川ガラシャ)。

注目ポイント【1】一騎打ちによる運命の始まり

一騎打ちによる運命の始まり

五郎から「丹波のことは俺とお前で決着をつけんか」と言われ、一騎打ちに負けた忠興が「望むところだ」と返す。2人の運命はここから始まる。

注目ポイント【2】忠興の思いに火をつけた御馬揃え

忠興の思いに火をつけた御馬揃え

信長の催した御馬揃えに武装で参加した五郎はその場の危機を救い、信長の目に留まる。忠興は「一色五郎を討ち取らねば」との思いを強くする。

注目ポイント【3】2人の関係に影を落とす髷落とし

2人の関係に影を落とす髷落とし

本能寺の変後、光秀には味方しないと髷を切り落とし、忠誠を誓う忠興。信長の突然の死は2人の関係に大きく影響し、思わぬ展開へとつながる。

ベストセラー多数!和田 竜氏の名作

『のぼうの城』上下巻

『のぼうの城』上下巻 小学館文庫 各671円
豊臣秀吉の命で武州・忍城を攻める石田三成を相手に、領民からのぼう様と慕われる成田長親が籠城戦を展開する。

『忍びの国』

『忍びの国』 新潮文庫 693円
伊賀国に住む優秀だが怠け者忍者の無門を主人公に、伊賀忍者が織田軍と激突した「天正伊賀の乱」の戦いを描く。

『小太郎の左腕』

『小太郎の左腕』 小学館文庫 869円
雑賀衆の血を引く天才狙撃者でありながら、純真無垢な少年の雑賀小太郎。その腕前ゆえ、戦に巻き込まれていく。

『村上海賊の娘』全4巻

『村上海賊の娘』全4巻 新潮文庫 781円〜
村上水軍当主・村上武吉の娘で長身、怪力の景が、毛利軍と織田軍の戦いに参戦、やがて壮絶な運命を辿る。

取材・文/成田 全(たもつ) 撮影/田中麻以 イラスト/オザワミカ 編集/井田愛莉寿

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