企業が発表するプレスリリース。その中に散りばめられた言葉を集めて紐解けば、世相が見えてくる。
PR TIMESはこのほど、運営するプレスリリース配信サービス「PR TIMES」において、2025年1月1日~2025年10月31日に企業が発表したプレスリリース総計38万2296件を対象に、データ分析と総括、業界分析と各種ランキングを発表した。
「AI」は僅差の年間総合2位、急上昇では上半期に続きAI関連ワードがTOP3
上半期の発表の勢いのまま、2023年以降の上昇傾向がありながら、「AI」は急上昇ワードとして前年比1.68倍のランキング1位となった。急上昇ランキングでは、2位「生成AI」が前年比+3579件(1.63倍)、3位「AIエージェント」が前年比+2535件(57.3倍)と上半期と同じ並びであるもののさらにその上昇傾向を増している。
「業務効率化」が前年比+2021件で4位と5位の「万博」を超えて上昇しており、13位の「AI活用」や15位の「DX推進」といったキーワードと併用されることも多く、企業の働き方の生産性向上に関連する商品やサービスが多く発表されている。
5位の「万博」、6位の「大阪・関西万博」も併用されるケースがほとんどで、パビリオンへの出展や協力など今年を象徴するイベントへの関与を発表する企業が多くあった。これに加えて、7位に「大阪」が入っており、お土産や飲食店、宿泊施設など周辺の経済へポジティブに影響し、企業活動が活発化していることを発表の増加からも読み取れる。
ネクストAI関連ワード「AX」「AIO」…企業発表の傾向は、相談相手からビジネスパートナーへ
日々、「AI」を取り巻く環境の変化を示すように企業発表においてもその件数の増加に加え、新たなキーワードが登場している。
AI関連のキーワードとして新たに使われはじめるキーワードも多く、AIを活用した開発手法である「AI開発」(2024年:154件→2025年:403件で2.61倍)、SEOとともに重要視されはじめる「AIO」(2024年:5件→2025年:165件で33倍)、 AIトランスフォーメーションの略である「AX」(2024年:24件→2025年:191件で7.95倍)とこれまでのビジネスシーンで活用されてきたワードの派生系のようなキーワードの出現も目立っている。
そのほかにも「AI面接」「医療AI」「AI創薬」といった多分野での活用を示すキーワードも増えている。「AI〇〇」「〇〇AI」のようにAIと何かを掛け合わせたワードは、イメージがつきやすく今度も様々な分野で新たなワードが登場していくと考えられる。
また、「生成AI」や「LLM」といった人間の要求を受けて回答する機能を活用するAIよりも、「AIエージェント」や「AI活用」のキーワードが前年比で大きく増加している。対話による相談相手から、ビジネスパートナーとして業務を代わりに実行してくれる存在に変わってきていることをプレスリリース件数から考察できる。
月別キーワードランキング発表|1位は「イベント」と「AI」が占める
月別のランキングを見ると、総合1位の「イベント」2位の「AI」がどの月も1、2位を占める中で、2月の2位には「新商品」がランクインした。SS(Spring Summer)、AW(Autumn Winter)と呼ばれるシーズン新商品の2月、8月9月は「新商品」が上位に来ている。
急上昇ランキングでも4位の「業務効率化」は10月に17位で初のTOP20入りとなり、それ以前も1月:25位、2月:32位、3月:29位、4月:24位、5月:24位、6月:21位、7月:21位、8月:22位、9月:22位と着実に順位を上げていた。
件数を伸ばすキーワードの一方で、2022年には総合1位となり企業発表の定番となったと思われた「SDGs」が、今年は総合TOP20内でも唯一の前年比で件数減となっており、月別順位も10位以内となったのは10カ月中5カ月のみとなった。一方で安定して上位にランクインしており、大きなブームは去ったものの、引き続き企業発表での活用は続いている。
そして、例年から安定して上位にある「プレゼント」と「ギフト」は、いずれも新商品の利用シーンの一つに提案することを目的に、発売の発表に際して使用されてきた。順位では大きく変化がないように見えるが、件数を見ると変化が見られる。「プレゼント」が2022年:5091件、2023年:5707件、2024年:4945件、2025年:5452件と上下する中、「ギフト」が2022年:3568件、2023年:4047件、2024年:4066件、2025年:4773件とその差を徐々に縮めるように右肩上がりを続けている。
この2つのワードは、ほとんどのプレスリリースで共通して使われることが多いものの、企業から生活者に向けて商品提供を伴うキャンペーンなどの場合には「プレゼント」のみが使われることが多く(「キャンペーン」のキーワードと併用される件数「プレゼント」:1689件、「ギフト」:252件)、「プレゼント」の件数が多い理由と考えられる。
一方で、「ギフト」は急上昇キーワードでも12位になった「体験」消費商材でも使用されるケースが増えているほか、「クリスマス」や「ホリデーシーズン」、「バレンタイン」「母の日」といった季節イベントの贈り物に関する発表において単独で使用されるケースがあり、その件数の差を徐々に埋めている。今後、「ギフト」が「プレゼント」以上に一般的に使用されるようになることも考えられる。
また、こうした「バレンタイン」「母の日」「クリスマス」といった季節イベントが少ない夏場には、相対的に「プレゼント」「ギフト」に関連する発信件数が少ない傾向にあった。
(「プレゼント」1月:16位、2月:15位、3月:17位、4月:12位、5月:17位、6月:19位、7月:27位、8月:25位、9月:23位、10月:18位/「ギフト」1月:19位、2月:20位、3月:25位、4月:16位、5月:20位、6月:28位、7月:43位、8月:31位、9月:24位、10月:22位)







DIME MAGAZINE


















