任天堂とソニーのゲーム事業が好調です。ニンテンドースイッチ2の売れ行きは凄まじく、年間の販売台数計画を当初の1500万台から1900万台に引き上げました。
プレイステーション5は発売から5年が経過したにも関わらず、ソニーの今期ゲーム事業は増収増益。ゲーム機は活況を呈しています。
その一方、モバイルゲーム業界は冴えません。いま、地殻変動が起こっています。
スペック重視の戦略が大当たり
任天堂の2025年度上半期の売上高は前期の2.1倍となる1兆995億円でした。営業利益は1.2倍の1451億円。今期の通期売上見通しを従来予想比18%増の2兆2500億円、営業利益を同16%増の3700億円にそれぞれ引き上げました。
ニンテンドースイッチ2は上期だけで1036万台を販売しました。全タイトルを合わせたソフトウェアは2000万本を突破しています。
新型機の需要は、経営陣の予想を大きく上回るものでした。
ニンテンドースイッチ2は、機能性そのものは大きく変わっていません。スペックが高くなったのです。
半導体企業NVIDIAのCEOが「技術の奇跡」と呼んだ最新型のプロセッサが搭載されたことによる、画像処理能力の飛躍的向上が一番の魅力でした。
任天堂のターゲットはゲームのライトユーザーが中心で、一人でも家族でも楽しめることに最大の特徴があります。これはコアなゲームファンをターゲットとするプレイステーションと異なる点で、2つのゲーム機は顧客の棲み分けを行っていました。
しかし、ニンテンドースイッチ2を発売したことにより、フロム・ソフトウェアの「エルデンリング」や「ダスクブラッド」、カプコンの「祇(くにつがみ):Path of the Goddess」のような、コアファン向けのソフトが移植、または開発されています。
任天堂はスイッチ2の発売に合わせて「マリオカート」や「ポケモン」、「ドンキーコング」の新作などをリリースしています。しかし、スイッチ発売時は「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」や「スプラトゥーン2」などの人気作を発売していました。スイッチ2発売時の自社ソフトのラインナップは力強さに欠けているように見えます。
任天堂は、ライトファン向け自社開発ソフトをヒットさせて稼ぐという独自路線をとってきました。しかし、高スペックのニンテンドースイッチ2のヒットで、他社作品も巻き込んだコアファンの獲得に邁進する可能性があります。フロム・ソフトウェアの「ダスクブラッド」をスイッチ2専用ゲームとして販売することが、それを示しています。
ゲーム機の販売サイクル長期化に成功したソニー
こうなると、分が悪くなるのがプレイステーションのソニー。しかし、すでに新たな道を切り開いているようにも見えます。
ソニーの2025年度上期におけるゲーム事業の売上高は前年同期間比6%増の1兆9832億円、営業利益は同32%増の2683億円でした。
ゲーム機の売上は横ばい。業績をけん引しているのは、ソフトウェアとアドオンコンテンツです。このセグメントの上期の売上高は前年同期間比7%増の1兆602億円。売上全体の実に半分を占めています。
プレイステーション4から5発売までの期間はおよそ6年。これまでであれば、次世代機の話が出てきてもおかしくはありません。しかし、経営陣は5の収益力を伸ばす旨の発言を行っています。
ソニーは戦略的にライブサービスゲームの強化に取り組んできました。ライブサービスゲームは、ソフトウェアの販売後も拡張コンテンツやゲーム内課金で収益を得るもの。プレーヤーはゲームを楽しむのはもちろんのことですが、参加型になっているために他者との交流で新たな体験価値を見いだすことができます。
ソニーのアドオンコンテンツはこの拡張コンテンツ、ゲーム内課金を示すもの。ライブサービスゲームを強化したことにより、収益の長期化を図ることができました。そして、プレイステーションというプラットフォームでユーザーを囲いこむことに成功していると見ることができます。
単純化されたゲームが人気に
モバイルゲームの絶頂期には、ゲーム機が淘汰されるとの見方もありました。しかし、実際はそうなっていません。むしろその逆で、モバイルゲームの低調が際立っています。
かつて業績絶好調だったモバイルゲームの新興企業も、減収による赤字あるいは減益に苦しんでいます。巨額の開発費を投じたタイトルでヒットを打ち出すことができません。
モバイルゲームはファンの固着化が進んでしまい、新たなゲームに手を出すユーザーの数が限られてきたのです。
そうした中で、堅調に業績を伸ばしている会社があります。カヤックです。
2025年1-9月のゲームエンタメ事業は2割の増収でした。カヤックが手がけているのはハイパーカジュアルゲーム。マニュアルやゲームの経験、勘がなくても簡単に楽しめるスマートフォン向けのゲームです。ゲーム内で広告を表示してマネタイズするケースが多く、プレーヤーの獲得もSNSなどの広告から誘引します。
ハイパーカジュアルゲームはスキマ時間で手軽に楽しむことができ、課金要素もあまりありません。ゲームのライトユーザー、初心者に最適なのです。
複雑化し、成熟しきったモバイルゲーム業界が、原点に戻っている動きだと見ることもできます。
文/不破聡
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