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2026年秋にスタート!モバイルSuica・モバイルPASMOが連携した「teppay」に感じる一抹の不安

2025.12.04

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

JR東日本は、キャッシュレス決済の普及に伴う利用者の「疲れ」や「不安」という課題を解決するため、モバイルSuicaのアップデートを行い、新たなコード決済サービス「teppay(テッペイ)」を2026年秋より開始する。

2027年春にはモバイルPASMOにおいてもteppayの提供を開始予定で、新サービスは、Suica・PASMOの既存の強固な顧客基盤と高い信頼性を活用し、より高額な決済や広範な加盟店ネットワークを提供することで、利用者の決済体験を統一し、利便性を向上させることを目指す。

モバイルSuica・モバイルPASMOのアプリがあれば新たなDLや登録は不要

teppayは、モバイルSuica・モバイルPASMOのアプリさえあれば、新たにアプリのダウンロードや登録をすることなくteppayの機能として「コード決済」「残高の送付」「オンライン決済」等のサービスが利用可能となる。また、特定の地域で利用できる「地域限定バリュー」機能も提供する。

「他のコード決済にはないteppayの大きな特徴は、すでにモバイルSuica、モバイルPASMOをご利用の方は新たなアプリをダウンロードしたり、登録をしたりすることなく、すぐにご利用いただくことができるということです。

さらにアプリを超えてつながることができ、モバイルSuicaだけでなく、モバイルPASMOでも同一の機能を提供します。モバイルSuicaとモバイルPASMOの間で、相互に残高を送り合うなど、アプリを超えてつながることが可能です。

teppayはこの2つの特徴に加えて、従来の電子マネーだけでなく、コード決済、オンライン決済などの多様な決済シーンをカバーすることで、モバイルSuica、モバイルPASMOをより便利に進化させます」(東日本旅客鉄道株式会社 常務取締役 中川晴美氏)

〇teppayの機能

モバイルSuica・モバイルPASMOのトップ画面がリニューアルされ、追加されたteppayボタンを押すと画面が切り替わる。

teppay残高には、銀行口座・ATM(現金)などのほか、ビューカードでの入金ができ、teppay残高からモバイルSuica・モバイルPASMOの交通系ICへチャージが可能。モバイルSuicaとモバイルPASMOの間でteppay残高を「送る・受け取る」ことができる。

〇コード決済で高額の買い物が可能に

コード決済では、モバイルSuicaとモバイルPASMOの交通系ICの上限2万円を超える最大30万円までの買い物が可能となり、teppayにビューカードを連携すると、チャージ不要で買い物ができる。決済時には買い物にも利用できるteppayポイントが付与される。

teppayマークのある店舗のほか、JCBのSmart Codeマークがある全国約160万か所で利用可能となる予定。

〇teppayユーザー同士で残高を送る・受け取る/交通系IC へのチャージ

teppayユーザー同士で、teppay残高を送る、受け取ることが可能となり、モバイルSuicaとモバイルPASMOでアプリを超えたやり取りができるようになる。

teppay残高から交通系IC残高へのチャージや、モバイルSuica・モバイルPASMO定期券等の購入も可能。

〇オンライン決済機能

teppay残高をインターネットでの買い物に利用できる「teppay JCBプリカ」をアプリ内で発行することが可能(※利用はオンラインのみ)。タクシー、飲食店などのモバイルオーダーの利用もできる。

〇地域限定バリュー(通称:バリチケ)

バリチケは特定の地域に限定して利用できるバリュー(残高)で、teppay残高と組み合わせての支払いが可能。各地の自治体のプレミアム商品券、キャッシュレス還元事業などに活用してもらうことで、地域内への移動・消費の活性化を目指す。

「バリチケは地域貢献に寄与する機能です。例えば(サンプルにしている)はやぶさ市のバリチケを獲得したユーザーははやぶさ市でお買い物をし、地域の消費を促進します。はやぶさ市に行くために発生する移動も促し、私たち交通事業者にとってもメリットになりますので、Win-Winの取り組みといえます」(中川氏)

新サービスでSuicaと連携した、株式会社パスモ 代表取締役執行役員社長 町田武士氏はこう話す。

「JR東日本のお客様の困りごとの解決や地域貢献といった基本サービス構想に共感したことや、交通領域、電子マネー領域でキャッシュレス化を共に進めてきたことからteppayでの提携に至りました。PASMOとSuicaで別々にコード決済を構築するよりも、共通のプラットフォームを採用することで、経済的合理性も高くなると考えています。

地域限定バリュー『バリチケ』も、PASMO沿線のSuicaユーザー、JR沿線のPASMOユーザーと、PASMOとSuicaの分け隔てなく、より多くのお客様、より多くの地域でのアプローチができるようになり、 沿線や居住地に関わらず多くの利用者に提供できることも大きなメリットであると考えています」(町田氏)

【AJの読み】キャッシュレス疲れを解消するための新サービスだが本当にストレスフリーになるのか?

2001年に導入されたSuicaは、2003年にはクレジットカードとSuicaが一体になった「ビュー・スイカ」カードが誕生し、20年以上にわたりキャッシュレス化を推進してきた実績がある。

JR東日本が1,500名を対象に行った調査によると、人生で初めて利用したキャッシュレスサービスとして、Suica・PASMOはクレジットカードを抑えて1位で5割を超える。特に30代以下に関しては約7割に達した。

現在のモバイルSuicaとモバイルPASMOの合計利用者数は約3,500万人にのぼり、強固な顧客基盤を形成している。

一方で、キャッシュレスの多様化、複雑化に対して約9割が“キャッシュレス疲れ”等の何らかのストレスを感じており、3人に1人がキャッシュレス決済の急速な普及に不安や抵抗感を抱いていることが同調査から判明した。

一都三県の生活者の約8割がSuica・PASMOを所有しており、交通・電子マネーの領域で多くの生活者になじみのあるモバイルSuica・モバイルPASMOで決済手段をまとめて、キャッシュレス決済をストレスフリーにしたいという潜在的なニーズに応える形で、コード決済サービスteppayが来年秋にリリースされる。

しかし、Suica・PASMOの交通系IC残高とteppay残高は共通ではなく、交通系IC残高を「送る・受け取る」ことができない、teppay残高の銀行口座やATMへの出金はできない、交通系IC残高からteppay残高への移行はできない、鉄道やバスの利用は交通系IC残高での利用となる、といった制約もあり、本当の意味でのストレスフリーになるかは不透明なところ。また、teppayで貯まるポイントはJREポイントとは別で、交換可能になるかどうかは検討中の段階とのこと。

余談になるが、現在はまだ開発途上で、正式リリースの際には今回掲載したteppayのUIが変更される可能性もあるが、2026年末に“卒業”するSuicaペンギンがteppayのモバイルSuicaアイコンに使われている。teppayがリリースされるのが来年秋だが、来年末までSuicaペンギンが使われるのか、それとも正式リリース時から後継キャラクターになるのか気になるところ。

取材・文/阿部純子

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