1931年に始まり95年間、教育・語学番組を中心に親しまれてきたNHKラジオ第2放送が、2026年3月31日をもって廃止されます。これは経営改善と時代の変化によるもので、NHKラジオは新AM・新FMの2波体制に移行します。リスナー、特に学習者への影響は大きいですが、今後は新FMで語学・学びの番組が提供され、ネット配信も含めた「NHKサウンドメディア」として再編されます。
目次
何と、NHKラジオ第2放送が終わります。
NHKラジオ第2放送、通称「NHKラジオ第2」とは、日本放送協会(NHK)による中波放送(AM放送)です。
こちらが2026年3月に終了することが決定しました。その背景や理由、今後の影響について詳しく解説します。
特に、ラジオ第2が果たしてきた役割や、廃止後のNHKラジオ全体の再編についても触れます。

NHKラジオ第2廃止の背景
NHKラジオ第2放送は、1931年(昭和6年)4月6日に「第2放送」として始まりました。
以来、95年間にわたり多くのリスナーに親しまれてきました。
教育や語学、講座番組などを中心に、全国で放送されてきたこのラジオは、特に学習や情報収集の手段として重要な役割を果たしてきました。
しかし、時代の変化や視聴者のニーズの多様化に伴い、廃止の決定が下されました。
これにより、NHKは新たな放送体制へと移行することになります。
■ラジオの始まりとNHKラジオ第2の始まり
1923年(大正12年)9月1日に発生した関東大震災後、東京・横浜は壊滅状態となり、新聞社は機能停止になりました。
そして、流言飛語が生まれるなど被災地での情報収集と伝達機能が失われた中、磐城(福島県)、銚子(千葉県)、潮岬(和歌山県)の各無線局がいち早く情報提供を行いました。
これは、放送の必要性を明らかにしました。
そこで、電波行政の主管庁であった逓信省は1地域1放送局という方針を打ち出し、社団法人東京放送局が1924年(大正13年)11月、社団法人名古屋放送局が1925(大正14年)年1月、社団法人大阪放送局が同年2月にそれぞれ発足。3大都市での放送体制が誕生しました。
1925(大正14)年3月22日に、「ああ、あー、聴こえますか。ああ、あー、聴こえますか。JOAK、JOAK、こちらは東京放送局であります。……」と、アナウンサーの京田武男氏が東京放送局のコールサインを行いました。
これが、日本のラジオ放送誕生の産声となったのです。3月22日は「放送記念日」となっています。
東京放送局は1925(大正14)年6月に、東京・港区の愛宕山に鉄筋コンクリート造の近代的な新局舎を完成し、7月12日に3放送局の先陣を切り、出力1キロワットでの本放送を開始しました。
その後、政府が主導する形で1926年(大正15年)8月20日、「社団法人日本放送協会」が東京・大阪・名古屋の3局を解散統合する形で発足しています。
1927(昭和2)年2月7日に東京中央放送局が「大正天皇御大喪」の行列通過の模様を中継、同年8月13日に大阪中央放送局が甲子園球場での全国中等学校優勝野球大会(現在の全国高等学校野球選手権大会)で日本初のスポーツ実況を行いました。

大相撲中継やラジオ体操の放送、早稲田大学総長高田早苗の講演番組や、講座番組、語学講座、こども番組、ラジオドラマ、芸能・音楽番組の放送などを行い、ラジオは暮らしの中に浸透していきました。
そして、1931(昭和6)年4月6日に、東京中央放送局は「第1放送」に加えて、新たに「第2放送」を開始することになりました。
日本放送協会は、教育的な番組を重視し、放送を通じて教育の機会均等を図ることを目指したのです。
放送初日は、午後2時20分で、甲子園球場の全国中等学校選抜野球大会の実況中継から始まり、午後6時から「語学講座 独逸語」「普通学講座」「実業講座」を、合間に休み時間を設けつつ、午後10時まで放送しました。
■廃止決定の理由
NHKラジオ第2の廃止は、経営改善の一環として決定されました。
ラジオはメディアの多様化の中、ラジオ放送局の経営は厳しい環境が続いています。
民間の放送局と同様、NHKもラジオ放送の体制見直しが迫られています。特に、AM放送の見直し論は根強く、リソースの集中が求められています。
今回、NHKラジオは現在のラジオ第1・ラジオ第2・FMの3波から、新AM・新FMの2波に生まれ変わります。
その結果、より効率的な運営が可能となり、リスナーに対しても新たな価値を提供することが期待されています。
■NHKラジオ第2の役割と影響
NHKラジオ第2は、教育や語学に特化した番組を広く提供してきました。そのため多くの人々が学びの機会を得てきたのです。
特に、語学学習においては、リスナーが自宅で手軽に学べる環境を整えていました。
廃止により、これらの番組が失われることは、特に学習者にとって大きな影響を及ぼすでしょう。
今後は、NHKがどのように新たな放送内容を提供していくのかが注目されます。
廃止の具体的日程と影響
NHKラジオ第2の廃止は、2026年3月31日をもって終了します。
NHKラジオリスナーはこれ以降、新AM放送と新FM放送へと移行することになります。
廃止に伴い、リスナーにとっての影響や、NHK全体の再編についても考慮する必要があります。
■NHKラジオ第2廃止、いつから?
NHKラジオ第2の廃止は、2026年3月31日をもって実施されます。
日本放送協会(NHK)は2025年10月1日から3日に廃止の申請を行い、電波監理審議会(総務省の諮問機関)の答申を受けて、総務省が2025年11月28日にNHKラジオ第2放送の廃止を認可しました。

【参考】日本放送協会におけるラジオ第2放送を行う特定地上基幹放送局の廃止の認可に係る電波監理審議会への諮問及び答申
■放送終了とその影響
NHKラジオ第2のリスナーは、従来の教育や語学番組を聴くことができなくなります。これにより、特に学習者や教育関係者にとっては大きな影響が予想されます。
NHKは、廃止後のリスナーのニーズに応えるために、新FMを中心に新たな番組編成を検討する予定です。
ただし、AM放送に比べてFM放送は到達範囲が数10kmから100km程度とされ、地形や建物などの遮へいにより電波が届きにくい場合があり、山間部などを中心に聞こえないエリアが発生することが懸念されます。
【参考】AM放送とFM放送の違い|総務省
また、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震などの大地震は停電をもたらしました。そんな中、電気が止まった状態でも手回し発電や電池で稼働するラジオ受信機が情報入手の命綱となったことも事実です。

今後は民間ラジオ局がFM化し、AM放送はNHKの1波だけになるという予測もあります。NHKの新AM放送の重要性が今後、高まる可能性がり、一方で、NHKの音声放送がインターネットなどで、さらに利用しやすくなる必要がありそうです。
【参考】NHKラジオ らじる★らじる
■今後のNHKラジオ全体の再編
2026年4月1日以降、これまで3つあった放送波が整理・統合せれて、新AMと新FMの2波で新たなスタートを切ります。
新しいAMは、ラジオ第1に変わりニュースや教養番組など暮らしに役立つ番組を放送する予定です。
リスナーと距離感が近いラジオならではの良さを生かしつつ、平常時も災害時にも頼れるメディアとして存在感を打ち出す予定です。
一方、新しいFMは、音楽番組や語学番組などを放送し、学びの機会を届ける音声波となります。高品質な音楽・芸能を中心とする音楽ゾーンと、ラジオ第2で放送してきた語学や高校講座などを放送する学びゾーンが設定される予定です。
NHKの音声波が公共メディアとして存在感を示していくためには、アナログ地上波のラジオ放送を維持するだけでなく、ネットラジオやポッドキャストの配信も含めた「NHKサウンドメディア」として、今まで以上に〝信頼される情報・コンテンツを提供〟していくことが求められています。

NHKラジオ第2の廃止でよくある質問【FAQ】
■Q.NHKラジオ第2は主にどのような番組を放送していましたか?
A.主に教育や語学、講座番組などを中心に放送されており、特に学習や情報収集の手段として重要な役割を果たしてきました。
■Q.NHKラジオ第2が廃止される主な理由は何ですか?
A.廃止は経営改善の一環として決定されました。メディアの多様化や視聴者のニーズの多様化に伴い、ラジオ放送の体制見直しが迫られており、リソースの集中を図り、放送内容を充実することが主目的です。
■Q.廃止後のNHKラジオは、どのような放送体制になるのですか?
A.これまでのラジオ第1・ラジオ第2・FMの3波から、新AM・新FMの2波に生まれ変わります。
■Q.新しいAM放送と新FM放送では、それぞれどのような番組が放送される予定ですか?
A.新AM放送は、ラジオ第1に代わり、ニュースや教養番組など暮らしに役立つ番組を放送する予定です。
新FM放送は、音楽番組や語学番組などを放送し、学びの機会を届ける音声波となります(音楽ゾーンと学びゾーンが設定される予定)。
■Q.NHKラジオ第2の廃止は、リスナーにどのような影響がありますか?
A.従来の教育や語学番組を聴くことができなくなり、特に学習者や教育関係者にとって大きな影響が予想されます。また、新FM放送ではAM放送に比べて山間部などを中心に聞こえないエリアが発生する懸念があります。
■Q.NHKラジオ第2の廃止は、どのような行政手続きを経て認可されましたか?
A.NHKは2025年10月1日から3日に廃止の申請を行い、電波監理審議会(総務省の諮問機関)の答申を受けて、総務省が2025年11月28日に廃止を認可しました。
■Q.NHKラジオ第2の開始当初、放送初日はどのような内容でしたか?
A.放送初日は午後2時20分から始まり、甲子園球場の全国中等学校選抜野球大会の実況中継からでした。その後、午後6時からは「語学講座 独逸語」「普通学講座」「実業講座」などが放送されました。
■Q.NHKは廃止後、音声放送をどのように展開していくことが求められていますか?
A.アナログ地上波のラジオ放送を維持するだけでなく、ネットラジオやポッドキャストの配信も含めた「NHKサウンドメディア」として、今まで以上に信頼される情報・コンテンツを提供していくことが求められています。
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※当記事に掲載している価格などのデータは2025年11月時点でのものです。
文/中馬幹弘
ガジェット・MONO・マネー編集/ライター。慶應義塾大学卒業後、野村證券にて勤務。アメリカンカルチャー誌編集長、モノ情報誌編集を歴任。iPhone、iPad登場時よりスマホ実務に携わる







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