2025年「世界で最もクールな街」1位に輝いた神保町。この記事では、神保町の魅力に迫る。書籍やカレーだけじゃない、神保町の真髄を堪能してほしい。
目次
2025年、世界が最も注目する街、東京 神保町。世界有数の書店数を誇る「古書の聖地」としての顔はもちろん、老舗純喫茶の香り、無数のカレー店が競い合うグルメの奥深さ、そして東京の中心という抜群のアクセス。
本の街という一面だけでは語り尽くせない魅力が、この街には凝縮されている。本記事では、そんな神保町の魅力と、ツウな楽しみ方を解き明かしていく。
2025年の「世界で最もクールな街」1位に輝いた“神保町”はどんな街?
2025年、世界的な都市情報メディア「タイムアウト」が発表した「世界で最もクールな街」ランキングで、神保町は名だたる都市を抑え、堂々の第1位に輝いた。
このランキングが評価するのは、単なる観光地としての華やかさではない。タイムアウトの旅行エディター、グレース・ビアード氏は、「今年は地元コミュニティーによって、そして地元コミュニティーのために作られているかに注目した」と述べる。
つまり神保町は、地元住民に深く愛され、その手で育まれてきた本物の文化を持つ街として、世界に認められたのである。
世界有数の書店数を誇る「古書の聖地」としての顔はもちろん、路地裏に佇む老舗純喫茶の香り、無数のカレー店が競い合うグルメの奥深さ。
これらすべてが、訪れる者だけでなく、そこに住まう人々の日常を彩っている。本の街という一面だけでは語り尽くせない、地域に根ざした熱気と魅力が、この街には凝縮されているのだ。
■世界有数の書店数を誇る「古書の聖地」
神保町と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、やはり「本の街」としての顔だろう。そのイメージは決して誇張ではなく、靖国通りと白山通りが交わる一帯には、実に130以上もの書店がひしめき合い、世界でも類を見ない本の集積地を形成している。
毎年秋に開催される「神田古本まつり」の熱狂は圧巻だ。靖国通り沿いに100万冊もの古書が並ぶ「本の回廊」が出現し、街全体が巨大な書斎と化す。この祝祭の期間、愛書家たちは一心不乱に宝探しに没頭する。
神保町にあるのは、専門書、江戸の息吹を感じる和本、感性を刺激するアートブック、そしてマニアの心を鷲掴みにするサブカルチャー。まさに、あらゆる知的好気心に応える「古書の聖地」なのだ。
参考:BOOKTOWNじんぼう
■老舗純喫茶やカレーの名店などグルメも充実
神保町が育んだ、食文化の奥深さもまた魅力の一つ。その筆頭が、昭和の薫りを今に伝える純喫茶の数々だ。丁寧にハンドドリップされるコーヒーの深い香りと、どこか懐かしい洋食メニューが、訪れる者に静かな思索の時間を与える。
一方、昼時には街の至る所からスパイスの香りが立ち上る。神保町は400以上の提供店がひしめく、国内有数のカレー激戦区。老舗の欧風カレーが放つ重厚なコクから、本格的なインドカレーの鮮烈な刺激まで、選択肢は実に多彩だ。
■東京23区の真ん中という抜群のアクセス
神保町の魅力を語る上で欠かせないのが、東京23区のほぼ中心、いわば「東京のへそ」とも呼べるその圧倒的な立地の良さだ。都営三田線・新宿線、東京メトロ半蔵門線の3路線が交差する「神保町駅」をようし、都内のあらゆる場所からスムーズにアクセスできる。
例えば、ビジネスの中心地・大手町や巨大ターミナル新宿駅からは電車で約10分、流行の発信地・渋谷からも約13分という近さ。まさに、思い立った瞬間に都会の喧騒から文化の香り漂う街へとワープできる距離感である。
さらに、JR御茶ノ水駅や九段下駅も徒歩圏内という交通の要衝ぶり。抜群のアクセス性が、古書やカレー、純喫茶といった神保町ならではのディープな文化を身近な存在にしている。
神保町の魅力に迫る!意外と知らないツウな楽しみ方とは

神保町の魅力をひと言で語るのは、土台無理な話だ。単なる「本の街」というレッテルでは、この街の奥深さは到底伝えきれない。ここからは、そんな一筋縄ではいかない街の奥の奥まで、街ブラを愛してやまない筆者独自の目線で案内しよう。
■古書店巡りで運命の一冊を探す旅へ
神保町の真髄は、なんといっても古書店巡りにある。しかし、ここはただの古本屋街ではない。各々が専門分野を極めた“知の専門店”がひしめき合う場所なのだ。
例えば、1902年創業の老舗「北沢書店」の扉を開けると、人文科学系の貴重な洋書が壁一面に並ぶ。海外文学の原書を求める者にとっては、まさに宝の山だろう。一方、理系の探求心を満たしてくれるのが、理工学書専門の「明倫館書店」。趣味や実用書も豊富で、特に数学書やオーディオ・無線関連の品揃えはマニアも唸るほどだ。
映画や演劇の世界に浸りたいなら、100年以上の歴史を誇る「矢口書店」へ。日本の古典文学を深く知りたいなら「日本書房」が最適だ。
自分の専門を深く掘り下げるもよし、未知の分野に足を踏み入れるもよし。自分の探求心に従って店を選び、知の迷宮に分け入るのがツウの楽しみ方なのだ。
北沢書店 https://www.kitazawa.co.jp/kindex.html
明倫館書店 https://www.meirinkanshoten.com/
矢口書店 https://yaguchishoten.jp/
■純喫茶で昭和レトロな雰囲気を楽しむ
神保町の路地裏に足を踏み入れれば、そこはまるで時が止まったかのような純喫茶の世界が広がっている。中でも、神保町の喫茶文化を象徴するのが「さぼうる」だ。駅前の路地裏にひっそりと佇み、トーテムポールが出迎える山小屋風の外観は、訪れる者を異世界へと誘う。看板メニューである山盛りのナポリタンは、昔懐かしい甘めの味付け。心もお腹も満たされる、まさに”喫茶店の王道”を体現した一皿だ。
ほかにも、日本初のウインナーコーヒー発祥の店とされる「ラドリオ」や、情熱的なタンゴが流れる「ミロンガ・ヌオーバ」など、個性豊かな名店がひしめき合う。
古書店で運命の一冊を見つけたら、次は純喫茶の重厚な扉を開けてみてほしい。立ち上るコーヒーの香りに包まれながらページをめくる時間こそ、神保町でしか味わえない最高の贅沢なのである。
さぼうる https://www.instagram.com/sabor_jimbocho/
ラドリオ https://www.instagram.com/ladrio1949/
ミロンガ・ヌオーバ https://www.instagram.com/milonga.nueva/
■400以上のカレー提供店から隠れた名店を探す
古書の香りに混じり、神保町の路地裏から漂うのは魅惑的なスパイスの香り。そう、この街は日本屈指のカレー激戦区という、もう一つの顔を持つ。その歴史は昭和初期、インド独立運動家がこの地にもたらした一皿に端を発するといわれる。
今や400店以上がしのぎを削り、毎年秋には「神田カレーグランプリ」が開催されるほどの熱狂ぶりを見せる、まさにカレーの聖地。じっくり煮込まれた欧風カレーの老舗、スパイスが鮮烈な本格インドカレー、はたまた蕎麦屋の出汁が隠し味の和風カレーまで、その懐はどこまでも深い。
有名店の行列に並ぶのもいい。しかし、神保町ツウの楽しみ方は、古書店巡りの合間にふと迷い込んだ路地で、自分だけの名店を見つけ出すことにある。
神田カレーグランプリ https://kanda-curry.com/
■漫才劇場や小劇場で夜の文化を堪能する
「本の街」「カレーの街」。神保町にそんなイメージを抱いているなら、それは昼の顔に過ぎない。夜の帳が下りると、この街は「演劇の街」というもう一つの顔をのぞかせる。
その中心的存在が「神保町よしもと漫才劇場」である。ここは、ブレイクを夢見る若手芸人たちが日々しのぎを削る、まさにお笑いの聖地。
未来のスターが放つ生の熱気を間近で感じられるのは、劇場ならではの醍醐味だろう。公式サイトで公演スケジュールをチェックし、青田買い気分で足を運んでみるのも一興だ。
もちろん、魅力はよしもとだけではない。路地裏には個性的な小劇場が点在し、実験的な演劇やアングラなパフォーマンスが繰り広げられている。
昼は古書とカレーに舌鼓を打ち、夜はお笑いや演劇で感性を揺さぶる。知的好奇心を満たす一日を過ごせることこそ、神保町の奥深い魅力なのだ。
神保町よしもと漫才劇場 https://jimbocho-manzaigekijyo.yoshimoto.co.jp/
■文豪の聖地を回り、想いを馳せる
神保町は、数々の文豪が愛した街でもある。彼らが通った喫茶店、インスピレーションを得た書店、そして作品の舞台となった場所が、今もなお街のあちこちに息づいている。
例えば、夏目漱石。彼がかつて下宿していた場所の近くには、かの有名な作品にちなんだ「猫の像」がひっそりと佇む。その愛らしい姿は、道行く人々の心を和ませる。
また、芥川龍之介や川端康成といった文豪たちが熱い議論を交わしたとされる「学士会館」は、今もその重厚な姿で訪れる人々を圧倒する。歴史的な空間に足を踏み入れれば、まるで文豪たちの声が聞こえてくるかのようだ。
古地図を片手に、彼らの足跡を辿る文学散歩。それは、ただの街歩きではない。彼らがどのような想いでこの街を歩き、珠玉の作品を生み出していったのか、その創作の源泉に触れる、時空を超えた旅なのだ。
※老朽化による再開発のため閉館(一時休館)。 再開は、2030年頃を予定。
■知られざる猫の聖地で心和むひとときを過ごす
神保町が「本の街」であることは誰もが知るところだが、実は猫好きにとっても聖地となりつつある。その象徴が、姉川書店内に展開する「猫本専門 神保町 にゃんこ堂」だ。
もともとは街の一般的な書店だったが、売上不振を打開するため、店主の娘さんの発案で猫専門へと舵を切った。今や店内には、写真集からエッセイ、小説、自己啓発本、絵本や雑誌まで、ありとあらゆる猫本が常時2000冊以上も揃い、ほぼ全ての本が表紙を見せて陳列されている。
店内は猫の写真や手作りのポップで彩られ、オリジナルグッズも豊富。本を買うと、イラストレーターくまくら珠美氏によるオリジナルブックカバーがもらえるのも嬉しい。二代目の「リクジロウ」くんが看板猫(猫店長)を務めており、その愛らしい姿はSNSでも人気を博している。
猫本専門 神保町 にゃんこ堂 https://nyankodo.jp/
■世界の文化とリアルな変遷を読み解く
古書店の街・神保町の真骨頂は、本の品揃えの専門性と多様性にある。特に、日本の近代史と深く関わるアジア各国の歴史書や文化資料を扱う書店が軒を連ねている点は、他の街にはない大きな魅力だ。
例えば、軍事史専門の「軍学堂」では、戦時中の資料や戦略に関する古書が手に入る。また、「叢文閣書店」は東洋史全般に強く、中国や朝鮮半島の歴史を深く掘り下げたい研究者や歴史ファンにとっては宝の山であろう。
さらに、中国美術や文学に特化した「文華堂書店」のような専門店も存在する。
これらの書店を巡れば、日本の郷土史から始まり、近代化の過程で周辺国とどのような関係を築いてきたのか、多角的な視点を得られる。教科書だけでは見えてこない、生々しい歴史の一端に触れる旅。それも神保町ならではのディープな楽しみ方だ。
軍学堂 https://www.gungakudo.com/
■本を片手に、美酒と物語に酔いしれる
ビール片手にスポーツ誌、ワイングラスを傾けながら文学に浸り、ウイスキーの香りと共に絵本の世界へ。神保町の夜は、本と酒による最高のマリアージュを愉しむ大人の時間だ。
ページをめくる乾いた音と、氷がグラスで鳴る涼やかな音だけが響く空間。ここは、ただ本を読むだけの場所ではない。
例えば、日本のビール醸造発祥の地である神田に近いこの街で、こだわりのクラフトビールと雑誌を合わせる。芳醇な赤ワインを片手に、物語の奥深い世界に旅立つのもいい。老舗の銘酒を嗜みながら、歴史の重みに想いを馳せるのもまた一興だ。
■ここでしか出会えない文具に心躍らせる
神保町には個性豊かな文房具店が点在し、訪れる者を飽きさせない。特に注目したいのが「文房堂」だ。1887年創業の老舗で、画材や文具の品揃えは圧巻の一言。オリジナル商品も豊富で、ここでしか手に入らない逸品を求める人々で常に賑わっている。
カフェも併設されており、購入したばかりのノートや万年筆を早速試しながら、ゆったりとした時間を過ごすのも乙なものである。
小さな路地に佇む個人経営の店も見逃せない。店主のこだわりが詰まったセレクトショップでは、海外の珍しい文具や、作家ものの一点物など、思わぬ掘り出し物に出会えるかもしれない。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
構成/編集部







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