「私たちは、犬のことを知っているようで、実は犬がなにを感じ、なんのためにその行動をとっているのか、深く理解しないまま接しているケースがほとんどです。というのも、犬についての科学的な研究が本格化したのは2000年以降になってから。
つまり、この20年ほどの間で動物行動学や、認知科学の見地から得られたデータによって、犬の研究は飛躍的に進んだのです」――と、「人と犬の関係学」の分野で日本初の博士号を取得したドッグトレーナーの鹿野正顕さんはいいます。
この連載では、科学に基づいた愛犬との信頼関係の結び方、効果的なトレーニングについて鹿野さんに語ってもらいます。
※本稿は、鹿野正顕『なぜ犬は全力で私を愛してくれるのか』(小学館)の一部を再編集したものです。
イラスト/しまだなな
犬にとって最高の遊びは「狩り」!?愛犬はいつだってあなたと共同で目標を達成したい
犬との遊びは、狩りを模倣することが基本です。次に挙げる、獲物を得るための5つのプロセスをストーリーに沿って仮想体験させるのがポイントです。
犬種によって好きなプロセスは異なるので、どの遊びに強弱をつけるかは愛犬の傾向を見て判断しましょう。たとえば、レトリーバー犬種は、その名の通り「レトリーブ(取ってくる)」に特化して改良されてきた犬種なので、ボールキャッチなどの遊びを好む傾向にあります。シェパードなどの牧羊犬は、追いかけて捕まえることが好きなので、引っ張りっこなどの遊びに夢中になります。
小型犬の場合、1畳分のスペースがあれば十分に楽しめます。大型犬も引っ張りっこをメインにするなどして応用し、散歩に行けない日などは室内でこの遊びをするだけでもストレス解消になります。
愛犬ときちんと向き合って、「共同行動」の欲求を満たしてあげましょう。
■狩りのプロセスに沿った遊び方の例
1 まずは追わせる(おもちゃを追わせる)
ロープなどのおもちゃを持って追わせる。犬に咬ませる部分は絶対に持たないよう注意。
2 咬ませて捕まえさせる
ある程度追わせたら、おもちゃを咬ませて捕まえさせる。
3 息の根を止めさせる(引っ張りっこ)
おもちゃを捕まえさせたら、すぐに手を離さず引っ張り合いをする。息の根を止めるプロセスを体験。
4 食べさせる(手を離す)
ある程度引っ張り合いをしたら手を離し、捕まえた獲物を食べる体験をさせる。
5 遊びを再開させるには?
咬んでいるほうとは反対側のおもちゃの端を持って遊びを再開する。引っ張り合いの途中でピタッとおもちゃの動きを止めると、つまらないのでおもちゃを離す。離したところでおもちゃを追わせて遊びを再開すると、くり返すうちに動きを止めるだけでおもちゃを渡してくるようになる。
遊びといえば、おもちゃ投げ。犬はおもちゃを投げられたら拾ってくるものだと勘違いしている人も少なくありません。
おもちゃを持って帰ってくるのが楽しいのは、レトリーバー種のような限られた鳥猟犬だけ。ほとんどの犬は、追いかけはするものの、おもちゃを持って帰ってくることはしません。獲物を捕らえたら息の根を止めて自分のものにしたいのです。
介助犬なども指示したものを運んでくるトレーニングをしますが、ごほうびとしておやつがもらえることがモチベーションになっています。
もし、ボール運びを覚えさせたいときは、最初はロープなどを投げ、引っ張りっこをしたいから持ってくるという動機づけで訓練してみましょう。
著者/鹿野 正顕(かの・まさあき)
ドッグトレーナー、スタディ・ドッグ・スクール代表
1977年、千葉県生まれ。スタディ・ドッグ・スクール代表。学術博士(人と犬の関係学)。獣医大学の名門・麻布大学にて「人と犬の関係学」の分野で日本初の博士号を取得する。
卒業後、人と動物のよりよい共生を目指す専門家、ドッグトレーナーの育成を目指し、株式会社Animal Life Solutionsを設立。犬の飼い主教育を目的とした、しつけ方教室「スタディ・ドッグ・スクール」の企画・運営を行いながら、みずからもドッグトレーナーとして指導に携わっている。2009年、犬の行動改善やトレーニングに関して、信頼性の高い知識とスキルを持つと評価されるドッグトレーナーの国際資格CPDT-KAを取得。日本ペットドッグトレーナーズ協会理事長。「犬の行動学のスペシャリスト」としてメディアでも活躍中。最新著書は『なぜ犬は全力で私を愛してくれるのか 飼い主の「なぜ?」に科学ですべて答える本』(小学館)。








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