人気お笑いコンビ・EXIT のりんたろー。さんが、絵本『しっぽのみじかいとかげくん』を11月に発売した。初めての制作とは思えないほど柔らかく、かわいらしいタッチで描かれる本作は、なぜか尻尾が短いとかげくんと、短い尻尾が「ふつう」のくまくんとの、心のやりとりを描いたオリジナルストーリー。
この絵本を通して伝えたかったことや、子育てから学んだことなど、絵本作家として、一児の父としてのりんたろー。さんに、話を聞いた。
りんたろー。
1986年、静岡県生まれ。兼近大樹と2017年末にお笑いコンビ「EXIT」を結成。ネオ渋谷系チャラ男漫才と称するしゃべくり漫才のツッコミを担当。ネタ作りも担う。アパレルブランドのプロデュースや音楽活動など、テレビや劇場以外でも活躍中。1児の父。
ちょうどハマった、絵本というコンテンツ
ーー絵のタッチが印象的で、どんな画材を使って描かれたのかなって思いました
絵は全く初めてだったので、実は絵画教室に通ってプロの方にも教えてもらったんです。はじめはぺったりした絵だったんですけど、もっとやわらかい感じにしたいと思って。主線のこの感じがタブレットだと思うように出なくて試行錯誤の結果、主線は黒炭を使って手描きし、色はタブレットで着色する手法に落ち着きました。結果的には1年くらいかかってしまいました。
ーーストーリーもご自身で考えたのですよね?
先に考えたのはストーリーです。伝えたいことはたくさんあるんですが、文章は文字が多いと重たくなるのでそぎ落としつつ、読んだ時のリズムを大事にしたかったので言葉よりリズムを優先した部分もあります。
子どもが生まれてから絵本のお話をいただくことはあったんですが、ちょうど僕の中でも世の中に伝えたいことが生まれてきて。それを文章に起こすとちょっと重たいかなって考えたんです。でも絵本なら感じ取る人は取ってくれるし、そうじゃなくてもそのまま楽しめる。絵本は芸人の僕でも照れずに想いを伝えることができる、ちょうどいいコンテンツだなと思いました。
とかげには人間にも通じる、再生する力がある
ーー主人公に選ばれたのは、子どもにはややマイナーな「とかげ」でした。
とかげって尻尾が切れても再生しますよね。でも絵本のとかげくんは尻尾が短くてみんなに笑われます。自然と尻尾が再生するはずなのに、短いままなんです。
僕たち人間も同じで、傷ついたら心を回復させようとする、空気を読んで周りに合わせていく、そんなことを多くの人が自然とやっています。でもそれが当たり前にできない人もいる。そういった意味で最近生きづらいと感じている人が多いなと僕は思っています。
そんな思いから主人公は尻尾が切れても回復できるとかげがいいなって。しかも擬態ができるので、僕が伝えたいことにぴったりだと思いました。
ーーはじめは子ども向けだと思っていましたが、大人が読んでも考えさせられるストーリーですね
伝えたいメッセージはありましたが、受け取る人にはどう感じてもらってもいいなって。もしとかげくんみたいなお子さんがいるなら親がくまくんになってあげればいいと思うし。子どもでも大人でも、読んでくれる人が自由に僕の届けたい想いを受け取ってくれたら嬉しいです。
ーー絵本の中で、特に制作の際に印象に残っているページや、出来上がったものを見た感想を教えてください。
う~ん難しいけど……最後のとかげくんとくまくん2人が寄り添っているページですかね。色々迷うところはあったんですけど。でも皆さんのおかげでたくさんの人に届けたい、最高のものができたなって嬉しく思っています。
子どもの反応やサインを見逃さないようにしたい
ーーお子さんに読み聞かせをされることはありますか? その際気を付けていることがあれば教えてください。
普段自分も読み聞かせをしていますが、うちの子どもは飛び出す絵本とかが好きですね。子どもも聞いていて僕に伝えたいこととか、気になるところとかがあると思うので、読み聞かせをするときはそのサインを見逃さないようにゆっくり読み進めています。あとは、これはだあれ?とか内容について会話をしたりもするようにしています。
ーーピンク色って相方の兼近さんが関係あるのかなとちょっと思いました。
……関係なくはないですかね。僕らEXITのグッズが家にたくさん置いてあるんですけど、うちの子はピンク色のかねちーグッズばかりかわいがって、緑のりんたろー。人形はその辺にぽいっと転がっています。かねちー人形を一生懸命寝かしつけていますから(笑)
ーー絵本を見てのお子さんの反応が楽しみですね
ピンク色が好きだから、それでとかげくんをピンク色にしたというのもあるんです。だからとかげくんを見て何かしら反応してくれればそれでOKです! 頑張ってよかったなって思えそうです。
ーー子育てで大切にされていること、または子育てにおけるルールなどがあれば教えてください。
そんなにちゃんと決めていることはないんですけど……でも、子どもから発信することを見逃さないようにする、手を差し伸べすぎないようにする、でしょうか。親の自分が先回りして言葉を言い過ぎずに、子どもから引き出すようにしています。言葉のシャワーは海外のシャワーぐらい、ゆるめの水圧を心がけています(笑)
ーー子育てについてはかなり勉強しているのでしょうか。
自分に子どもができたことで子育て番組の仕事をいただいたりもしているため、自ずと知識は入ってくるんです。でも家であんまり言い過ぎないようにしないといけないなって。一度聞いてきたことを「こうした方がいいらしいよ」って妻にいったら、「こっちは現場でやってるんだよ!」って怒られました(笑)。
あとは自分自身も初めての子育てでテンパっていたので、芸人の先輩たちはこんな状況にいながらあんなに面白くいられたのかっていうのが衝撃でした(笑)。 まず寝られないじゃないですか。みんなどうしてるの?って驚いたし。でもとんでもない幸せも押し寄せてくるから、そこの気持ちの整理がつかないっていう感じです。
39歳にして子育てから学ぶことは多い
ーーお子さんから学ぶことはありますか。
子育てしながら日常生活をしていると、大きな駅なのにエスカレーターが少ないなとか、駅のエレベーターを自分が気にせず使っていたなとか。そういった社会での気付きがいっぱいありました。心無い人の行動が目につくこともあるし、逆に助けられるとすごく心に沁みたりするし。39歳にしてそういったことに気づかせてくれて、学べたのは子どものおかげですね。
今たくさんある「子育て便利グッズ」とか僕もいろいろ使っていますけど「僕の親世代はこれら無しで子育てしてたのか?」って思ったりもします。だから自分の親からの愛情も今になってより気付くし感じますよね。
ーー今後も絵本を描いてみたいと思いますか?
また伝えたいことがあればやるかもしれない。でも今は大変すぎたのでわからないですけどね(笑)
書籍情報
『しっぽのみじかいとかげくん』
作・絵:りんたろー。小学館
物語の主人公「とかげくん」のしっぽは切れても生えてこず、短いまま。とかげのしっぽが短いのはおかしいと、みんなは遠巻きに笑いますが、「くまくん」はただひとり寄り添います。でもくまくんは「みんなが怒っているより笑っている方がいい」という、とかげくんの気持ちがよくわかりません。そして「ふつうってなに?」とばかり聞くとかげくんに、くまくんは次第に嫌気がさして…。ふたりはどのように心を通わせていくのでしょうか。
取材・文/苗代みほ ヘアメイク/chiSa(SPEC) 撮影/田中麻以(小学館)







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