2025年11月21日、高市早苗首相はコロナ禍以降では最大規模となる21.3兆円規模の総合経済対策を閣議決定。その内容は数日前からニュース等で伝えられており、財政規律の悪化という予測も招いていた。
そんな中、19日には米連邦準備制度理事会(FRB)が米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を明らかにしたことで、利下げ観測が後退する。これらの要因により、11月20日に約10か月ぶりのドル高・円安水準となった。
そんな直近のドル円相場に関する分析リポートが三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏から届いたので、概要をお伝えする。
ドル円は先週、約10カ月ぶりのドル高・円安レベルに到達、今後の相場の方向性について考える
ドル円は11月20日の取引時間中に、一時1ドル=157円89銭水準をつけ、約10か月ぶりのドル高・円安レベルに達した。
その後は、政府・日銀による為替介入への警戒感や、米金融当局者の発言を受けた12月の米利下げ観測などを背景に、ドル売り・円買いが徐々に優勢となり、11月25日は155円80銭水準までドル安・円高が進行。
そこで、今回のレポートでは、テクニカル分析などを参考に、今後のドル円相場の方向性について考えたい。
ドル円は、2023年12月28日安値(取引時間中、以下同じ)の140円25銭水準と、2024年9月16日安値の139円58銭水準、そして2025年4月22日安値の139円89銭水準を結んだ、おおよそ140円のラインが、ドルの下値支持線となっている。
一方、2024年7月3日高値の161円95銭水準と、2025年1月10日高値の158円87銭水準を結んだラインが、ドルの上値抵抗線となっている(図表1)。

■ドル円は下降型三角保ち合いを形成、テクニカル分析ではこの先ドル安・円高方向の動きを示唆
図表1のように、下値支持線と上値抵抗線が三角形のようになる状態を、テクニカル分析では「三角保ち合い(さんかくもちあい)」と呼ぶ。
また、今回のように、下値支持線が水平で、上値抵抗線が右肩下がりとなる形状を、「ディセンディング・トライアングル(下降型の三角保ち合い)」といい、下値が一定水準で下げ止まるなか、上値が徐々に切り下がっていく局面で、よくみられる形状だ。
ディセンディング・トライアングルの一般的な解釈に従って、この先のドル円相場を展望すると、ドル円はしばらく下値支持線と上値抵抗線の間での推移が続くも、次第にドルの上値が重くなり、三角形の頂点付近で(2026年末頃)、下値支持線を下抜け、ドル安・円高が加速するということになる。
もちろん、実際のドル円相場が、必ずしもテクニカル分析通りに推移するとは限らない。
■ただ高市政権のリフレ的な政策運営はドル高・円安の材料、三角保ち合いは参考程度の動きか
三井住友DSアセットマネジメントは、米連邦準備制度理事会(FRB)による25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げ時期について、従来の12月から2026年1月に変更したが、追加利下げはあと1回で、米景気の持ち直しにより、その後は据え置きとの見方は維持している。
また、日銀の25bpの利上げ時期について、2026年1月と7月の予想は変わらず、国内経済は高市早苗政権の総合経済対策で、一定程度、支えられるとみている。
これら日米の金融政策と経済見通しを踏まえると(図表2)、ドル円がドル安・円高方向に大きく振れるリスクは比較的限定されており、むしろ高市政権の積極財政と緩和的な金融環境を志向する「リフレ」的な政策運営が、ドル高・円安方向の強い材料になると考えられる。
実際、足元のドル円は、すでに上値抵抗線を上抜けており、ディセンディング・トライアングルは参考程度にみておいた方が良いと思われる。

構成/清水眞希







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