賃貸物件を借りる上で大きな障壁となる「敷金・礼金」。この支払うことが慣例化している2つの出費のせいで初期費用が膨れ上がることから、片方、あるいは両方が「0」の物件を選びたいという人は多いのではないだろうか?
不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME’S」はこのほど、住まい探しの初期費用を抑えたいと考える人に向けて、首都圏の「敷金・礼金」の最新動向を調査し、その結果を発表した。
【敷金】の動向について
(1)「敷金0物件」割合の推移: 全賃料帯で「敷金0」物件の割合がさらに増加、 10万円以上15万円未満は2年で12.6ポイント増
LIFULL HOME’Sに掲載された賃貸物件のうち、敷金0(ゼロ)の物件の割合を賃料帯別に出した。全ての賃料帯で増加している。賃料10万円未満の物件は63.3%と前回調査(2023年)の53.2%から更に上昇した。
また、賃料10万円以上15万円未満の物件は2023年では33.8%だったところ、2025年には46.4%と約12.6ポイントと最も増加している。一方で、20万円以上の物件に関しては2023年に踊り場に差しかかっていたところから2025年には18.6%と8.4ポイントの増加がみられるが、賃料帯別の増加としては最も小さい結果となった。
(2)敷金平均の推移:全賃料帯において緩やかに減額・停滞し、1.03~1.10ヵ月の幅に収まる
LIFULL HOME’Sに掲載された「敷金あり」物件の平均を賃料帯別に算出したところ、全賃料帯において前回調査(2023年)から緩やかに減少、停滞している。
特に賃料20万円以上の物件では、2023年は1.18ヵ月分に対し、2025年には1.10ヵ月分と0.08ヵ月分の減額がみられ、敷金は1.03~1.10ヵ月の幅に収まっている。
【礼金】の動向について
(1)「礼金0物件」割合の推移:賃料 20万円以上で礼金0物件は4割に上昇するも、10万円以上15万円未満はシェアが高まらず3割に留まる
LIFULL HOME’Sに掲載された賃貸物件のうち、礼金0(ゼロ)の物件の割合を賃料帯別に出した。礼金0物件の割合は前回調査(2023年)から全ての賃料帯において増加した。20万円以上の物件では2023年は31.4%だったが、2025年には42.3%と10.9ポイント増加している。
10万円以上15万円未満の礼金0物件の割合は30.2%と、2020年以降の賃料帯別でみてもシェアはいずれも低く、「礼金あり」物件の割合が多い賃料帯であることがわかる。
(2)礼金の平均値の推移: 直近は全賃料帯において微増、中間帯で増加幅が目立つ
LIFULL HOME’Sに掲載された「礼金あり」物件の平均を賃料帯別に算出したところ、全賃料帯において前回調査(2023年)よりも微増傾向にあることがわかった。賃料10万円未満と20万円以上の物件では礼金の月数が微増だったが、中間賃料帯となる賃料10万円以上15万円未満では0.04ヵ月、15万円以上20万円未満では0.05ヵ月の増額していることがわかった。
LIFULL HOME’S総研チーフアナリスト 中山登志朗氏 考察
敷金のルーツは意外にも古く、江戸時代まで遡ります。婚姻の際に妻側の家が新婦に持たせた“持参金”を敷金(しきがね)と言い、離縁することになった場合はその持参金を夫側の家が返却する習わしがありました。これが住宅の賃貸にも援用されたと考えられます。
一方の礼金は、1923年の関東大震災が起源との説が有力で、地震や火事で自宅を失った多くの人が、賃料とは別に礼金を包むことで家を貸してもらったことが契機となって、商慣習として定着したと言われています。
それから100年以上を経過した現代では、賃貸住宅退去時の“原状回復ルール”について法律で明確化され、それに伴うコストも敷金として預ける必要があるか検討する余地があります。また、最近ではクリーニング費用を契約書に記すのが主流になりつつあります。
全国に約2,400万戸もあるとされる賃貸住宅を借りるのに大家さんサイドが“選んでくれてありがとう”ということはあっても、“貸してくれてありがとう”という意味での礼金制度は既に形骸化していると言わざるを得ません。
今回の調査では、このような時代背景を経て、現在では“敷金ゼロ”を謳い文句とする賃貸住宅が年を追うごとに増加していること、また敷金が必要とされる賃貸住宅でもその金額が年々減少していることが明らかになりました。
また“礼金ゼロ”物件は賃料帯によって異なり、明確な拡大状況にはないものの(月額賃料10万円未満ではシェアがやや縮小しています)現状では4割弱が“礼金ゼロ”であり、礼金自体は概ね賃料1か月相当が定着していることがわかります。
最近では敷金・礼金ゼロだけでなく、保証金ゼロに加えて電気代や水道代などの光熱費込みで借りることができる“サブスク賃貸”が増える一方、借りてくれたユーザーに毎月の美容院&ネイルサロン無料、近隣の飲食費用毎月5,000円まで無料などの“サブスクサービス付き賃貸”も登場しています。
さらに、賃貸ユーザー同士の交流や自己啓発を重視した“ソーシャル・アパートメント”も増えるなど、賃貸物件は賃料上昇を契機として多様化の一途を辿っています。このような時代に“敷金ゼロ&礼金ゼロ”で対抗・差別化することには限界があるため、敷金・礼金制度を見直すことに加えて、賃貸住宅の断熱・省エネ性能を高めるなど“賃料が多少高くても借りたくなる高品質&付加価値の高い物件”を提供するべき時期に差し掛かっています。
<調査概要>
・対象エリア:一都三県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)
・対象物件:LIFULL HOME’Sに掲載された居住用賃貸物件
・対象期間: 2018年1月~2025年10月
出典元:LIFULL HOME’S
構成/こじへい







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