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なぜ今、熱海なのか?移住者が語る「仕事も人生も豊かになる理由」

2025.12.03

「東京の延長」ではない、絶妙な距離感が生む心の余裕

働き方改革やコロナ禍を経て、仕事の仕方や生活スタイルは随分変わりつつある。リモートワークの推進もあり、地方との2拠点生活や移住を始めた人も少なくない。

DIME WELLBEINGでは過去に、東京と静岡県熱海市で2拠点生活を送っている株式会社インテグレート代表取締役CEO・藤田康人氏をインタビューしているが、同じく熱海を2拠点生活や移住先として選んだ人たちがいる。JNEW合同会社・CEOの浦出隆行さんと、国内大手シンクタンクに勤めるAさんだ。浦出さんは2017年に、Aさんは2021年に、東京暮らしから熱海へ移住。露天風呂の温泉・サウナ付きの海が見えるマンションで生活している。

株式会社インテグレート代表取締役CEO・藤田康人氏

◎藤田氏のインタビュー記事はこちら

熱海と東京の2拠点生活、キシリトール・ブームの立役者が実践するウェルビーイングな暮らし

コロナ禍を経て定着しつつある、リモートワーク。新しい働き方から、2拠点生活や移住を始めた人も少なくない。「どこにいても仕事ができる」という環境は、生活拠点の選択…

熱海は静岡県にありながら、東京駅から電車で約1時間45分。新幹線では約45分と、短時間で移動することができる。温暖な気候と豊富な温泉で知られる人気の観光都市だ。市内には源泉が豊富に湧き出て、多くの旅館やホテル、日帰り温泉施設で楽しむことができる。

多様性やウェルビーイングの考え方が定着しつつある今は、“同じような生き方”ではなく「自分がどこで、どう生きるか」を貫き通してもいい時代。そんな中、東京から新幹線で1時間弱という絶妙な距離にある静岡県熱海市は、新しいライフスタイルを模索する人々の「二拠点生活」や「移住」の場として注目を集めている。

ウェルビーイングな生き方・働き方を実現する拠点として、なぜ熱海が選ばれるのか。

今回は実際に熱海で生活している浦出さんとAさんに、熱海の魅力と新しい暮らしの可能性を聞いた。

JNEW合同会社・CEOの浦出隆行さん

「日本にいるときに東京に戻ってくるか、熱海に来るかの違いだけなんです」と語るのは、2017年から熱海での生活を始めた浦出さん。以前は年の半分以上を海外出張が占めるシンクタンクに勤務しており、東京へのアクセスは必須だった。しかし会社から独立した現在は、この熱海の地を生活と仕事の拠点としている。

一方、国内大手シンクタンクに勤めるAさんは、コロナ禍をきっかけに本格的なリモートワークへ移行。「東京に住み続ける必要はないのでは」と考え、移住先を探し始めた。「何かあった時にすぐに東京に行けるアクセスの良さが決め手でした」と語るように、東京との繋がりを保ちながら、豊かな自然環境に身を置ける点が熱海の大きな魅力だという。

2人に共通するのは、熱海が持つ「東京との絶妙な距離感」を最大限に活用している点。物理的に近いだけでなく、「観光気分で帰ってこられる」という浦出さんの言葉通り、日常と非日常を気軽に行き来できる心理的な距離感が、日々の暮らしに心の余裕と豊かさをもたらしている。

自然、食、文化 そして「人との繋がり」が日常を豊かにする

熱海の魅力は、その利便性だけにとどまらない。2人が口を揃えるのは、この地ならではの豊かな生活環境だ。

「毎朝、水平線から昇る太陽が見られる景色は、東京では味わえません」と浦出さん。海辺の散歩を日課とし、気分に合わせて来宮神社まで足を延ばすこともあるという。豊かな自然は、心身の健康を保つ上で欠かせない要素となっているようだ。

また食文化の豊かさも特筆すべき点だ。熱海は新鮮な魚介類はもちろんのこと、近年は実力派のシェフが移住し、飲食店のレベルが格段に向上。「食は多分こっちの方が豊かじゃないかな」と浦出さんは語る。

マンションから見える熱海の海の日の出

そして、2人が熱海生活で最も大きな魅力として挙げたのが「人との繋がり」だった。Aさんは「都内にいた頃は、仕事関係の付き合いがほとんどでした。でも熱海に来てから、地域の方々との交流で世界が広がりましたね」と語る。

「都内のマンションでは顔を合わせたらご挨拶するぐらいで、うちは子どももいないので、コミュニケーションを取ることがなかったです」と振り返り、「でもこっちに来ると、マンションの中でも露天風呂やサウナで会いますから。『一緒に飲み行こう』かとか『ゴルフに行こうか』みたいな話になって、コミュニティが増えてきますよね」と、マンションの温泉やサウナが新たなコミュニティ形成の場になっていると明かす。

「お風呂で会うから、自然と話すようになるんです。会社の肩書ではなく、“個人”として付き合えるのがいいですね」

浦出さんも「ここに来ると起業家やアーティストなど、東京の会社にいるだけでは出会えないような、さまざまなバックグラウンドを持つ面白い人たちに出会えます。年代的にもリタイアした世代の人たちも多いですし」と続ける。多様な価値観に触れることは大きな刺激となり、リタイア後の先輩たちの生き方は、自身の未来を考える上でのロールモデルにもなっているという。

新しい働き方とライフデザインの「実験場」として

終身雇用の時代が終わりを告げ、個々人がキャリアを自律的にデザインする必要性が高まる現代。熱海での移住や二拠点生活は、そうした新しい働き方や生き方の「実験場」としての可能性も秘めている。

Aさんは、「今はもう、終身雇用を会社が保証してくれないじゃないですか。45歳ぐらいで希望退職も始まったりすると、多分今後を考えざるを得ないところがありますよね。実際にもうすぐ役職定年になる友人が、『この先どうするかな』みたいな話をしているんですよね」と明かし、「役職定年してから、『じゃあ、最後どうするか』みたいな人たちが、こういう生活をしてみるというのもいいんじゃないですかね。いろんな働き方をして、いろんな方々と関わって、“100%東京”じゃない環境に置かれてみる生き方も、一つの選択肢になるのでは」と提案する。

しかし現状では、移住や二拠点生活に踏み切れるのは経済的な余裕がある層や、働き方に大きな裁量を持つ一部の人々に限られている。浦出さんは、「決死の覚悟で起業しなくても、もっと気軽に多くの人がこういう暮らしを選べるようになれば」と、今後の課題を口にする。

例えば企業が新幹線通勤の費用を補助するなど、制度面でのサポートがあれば、そのハードルは大きく下がるかもしれない。ただ浦出さんは「企業の側がワーケーションやリモートワークなどを、『社員向けのベネフィット』みたいに扱うのは、あまり良くないと思うんですよね」と指摘も。「要は、『そういうこと“やらせてあげている”』みたいになっちゃうと、やらせてもらう方もついつい“サボる”インセンティブが出てきてしまう。自律的に仕事ができる人じゃないと、そういうものを使いこなせない。だから『ベネフィット』だと考えず、『仕事の質を高める手段』にしないといけない」と語った。

ワーケーションやリモートワークは「ベネフィットではなく仕事の質を高める手段」

単なる福利厚生ではなく、社員のウェルビーイングを高め、ひいては生産性向上にも繋がる「投資」と捉えることが重要なのかもしれない。

移住や二拠点生活に踏み出せない方へのアドバイスを求められると、浦出さんは「決死の覚悟で『お店を開かなきゃ』『起業しなきゃ』と考えちゃうと、多分、ハードルが高くなっちゃうと思うんです」と語り、「Aさんみたいにテレワークで今の会社に勤めながら熱海に住むという選択肢もありますし、週に2、3回ぐらい東京に通うのも現実的な選択肢だと思います。だからあんまり気負わずに、まず週末だけ来てみるところから始めてみるのがいいのかな」と提案。

Aさんも「いきなり移住っていうのは、ハードルが高いと思うので、週末だけ熱海に来てお試しで住んでみるとか、まず二拠点生活から始めてみるのがいいのかなという気がしますね」と同意見。「熱海は東京から新幹線で45分で来られますし、在来線でも2時間弱。気軽に行き来できるっていうのがすごくいいとこだと思うので、そういうところから始めてみるのがいいんじゃないかな」とアドバイスした。

インタビューを通じて見えてきたのは、熱海での移住や二拠点生活が、単なる“リゾート暮らし”ではなく、より深い価値を持っているということ。仕事、プライベート、そしてコミュニティという、人生を構成する大切な要素のバランスを自分らしく再構築し、心身ともに満たされた“ウェルビーイングな状態”を実現するための、一つの具体的な実践例なのかもしれない。

東京の喧騒から少しだけ離れた熱海という場所で、新しい生き方・働き方の可能性が、静かに、しかし着実に広がり始めている。

取材・文/コティマム

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