2025年9月2日(火)に「BHC PDII MUSEUM(バンダイホビーセンター プラモデザインインダストリアルインスティチュートミュージアム)」がオープンするなど、いま全国各地のプラモデル好きから熱視線を集めている「静岡県静岡市」。
日本全国のプラモデル製造品出荷額の8割以上を占めている“プラモデルの街”だが、静岡市役所には日本唯一の「プラモデル振興係」まで設けられているのはご存知だろうか。
現在4人が在籍しているプラモデル振興係では「静岡市プラモデル化計画」を掲げ、官民連携で「模型の世界首都・静岡」のプロモーションを促進。
静岡市役所のプラモデル振興係 係長 杉村一行さんに、プラモデルで街おこしをはじめた経緯や現在の活動を伺った。
日本唯一の「プラモデル振興係」。静岡市ならではの文化の継承と観光に貢献

2020年に「静岡市プラモデル化計画」をスタートし、2022年に「プラモデル振興係」を立ち上げた静岡市役所。
静岡市には魅力的な観光資源がほかにもあるものの、静岡ならではという目線では「プラモデル」=「静岡」でしかできないという確固たる自信のもと、「プラモデル振興係」を立ち上げたという。
「プラモデル」は日本プラモデル工業協同組合所有の商標登録ながら、了承を得てこの名をつけており、日本全国の行政で「プラモデル振興係」が設けられているのは静岡市だけだ。
杉村さん「静岡市は徳川家康の時代に神社仏閣の建設に関わる職人が集まり、木工産業が盛んになりました。
そこから静岡で木製模型が発展していきますが、1950年代に海外からプラスチックを原料としたプラモデルが輸入されると国内の木製模型産業が徐々に勢いを失っていきます。
青島文化教材社、タミヤ、ハセガワといった昔からある静岡市の木製模型のメーカーは、多くの苦難を経てプラモデルへの大転換を成し遂げ、静岡がプラモデル・模型の聖地と呼ばれるようになったという歴史があります。
そんな歴史あるプラモデルの文化を活かすことで、静岡らしさが発信できるのではと考え、プラモデル振興係が立ち上がりました」

静岡市プラモデル化計画の柱は「環境づくり」、「人財づくり」、「コンテンツづくり」の3つ。
「環境づくり」の活動の一つが、「プラモニュメント」の設置だ。組立前の巨大なプラモデルをイメージして作られた遊び心あふれるモニュメントで、現在は静岡市内に16基が設置されている。
杉村さん「プラモニュメントを設置するほか、プラモニュメントを巡るデジタルスタンプラリーを開催するなど、静岡市がプラモデルの街であることを認識してもらうための環境づくりを行なっています。
現在の目標設置数は、30基。しかし、行政だけでは限界があるので、民間企業の協力を得て設置しています。
今まではNTT西日本株式会社静岡支店による実際に使える公衆電話、サントリービバレッジソリューション株式会社による自動販売機とベンチなどさまざまなプラモニュメントが設置されています」

「人財づくり」ではプラモデル文化を担う、未来の子どもたちの育成を実施。例えばプラモデルメーカーと一緒に年間15校ほどの小学校へ向かい、プラモデルの出前授業を実施しているという。
また、年に1度開かれている「静岡ホビーショー」では「小・中・高校生招待日」を設定し、バス送迎も行い2025年度は静岡県内の児童・生徒が3,000人以上参加した。
杉村さん「バラバラのパーツを自分で組み立てて、1つのものができる楽しさを感じてもらう機会を増やすことが一番だと考えています。
パーツとパーツをつなぐランナーを切り離して、接着剤でつけていく。そんなプラモデルづくりを本当に楽しそうに、目をキラキラさせながら体験してもらえているのはとても嬉しいですね。
スマートフォン時代の今は説明書を読んで、作るという経験も少ないようで、読解力向上にも繋がると思います」
サッカーの国立のように、高校生が目指す場所に。「全国プラモデル選手権大会」

杉村さんがプラモデル振興係の係長に着任したのは2025年4月。初代係長だった石川直哉さんよりバトンを受け継ぎ、2代目係長となった。
杉村さんが何より今注力しているのは、プラモデルの高校生への普及だ。プラモデルは小学生で卒業してしまう子どもが多く、それは杉村さん自身もそうだったという。
杉村さん「小学生の頃はミニ四駆を走らせたり、ガンダムを作ったりと楽しんでいました。しかし、私自身も大人になるにつれてプラモデルから離れてしまいました。
今の中学生や高校生は特に、暇があるとプラモデルではなくスマートフォンを触る世代。10代~20代の模型離れは、産業的にも課題です」

若年層の模型離れを止めるべく、3柱の一つである「コンテンツづくり」の一環として2024年からスタートしたのが「全国プラモデル選手権大会」。
民間が行なっている全世代対象のプラモデルの大会はすでにあるが、この「全国プラモデル選手権大会」は高校生を対象としているのがポイントだ。
2024年は25校が参加し、2025年12月13日~14日に開催される第二回は50校を目標としていたが、65校から申し込みがあり、目標を大幅に超える結果となったという。
杉村さん「大会では自分たちがこの作品に込めた想いや意気込みをプレゼンテーションしてもらい、一般投票も加味されて入賞高校や入賞作品を決めます。
プラモデルは今の高校生たちにとって、残念ながら明るいイメージを持ちにくく、プラモデルが趣味ということを当たり前に言えるような雰囲気がない高校もあるようです。
しかし幼い頃からプラモデル作りを続けている高校生は『自分の作品を見て欲しい』という想いを持っているので、それを披露できる場を設ければ自信を持ってプラモデルが好きと言ってもらえるのではないかと考えました」
今年の参加校は北海道から沖縄までの全国規模。観光における経済効果を増やすためにも、今後「全国プラモデル選手権大会」の規模をさらに拡大していきたいと、杉村さんは意気込む。
杉村さん「主としての狙いは高校生へのアプローチですが、大会には生徒だけではなく引率の先生、保護者などたくさんの方が静岡市に来ていただき、宿泊や観光も楽しんでもらっています。
今後は参加校を増やし、さらに多くの方に来てもらうことで、観光面にも繋げられたらと思います。そのためには大会自体の価値をあげ、“サッカーの国立”や“ラグビーの花園”のように、プラモデル好きな高校生が目指すべき場所・静岡といったイメージをもってもらえたら嬉しく思います」
それまで培ってきた歴史や文化を活かしながら、新たな観光価値を創出している静岡市のプラモデル振興係。
もともとプラモデルファンには知られていた街だが、それが広く認知しはじめられたのはプラモデル振興係の取り組みの成果だ。
ほかの地域にもあるものではなく、その地域の突出する魅力を熱意ある専任担当者が民間企業と一緒に伸ばしていくーーそれが、地域活性化に繋がる一つの鍵なのかもしれない。
・静岡市プラモデル化計画
HP:https://www.city.shizuoka.lg.jp/s2746/s005065.html
取材・文/小浜みゆ
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