数々のヒット商品を紹介しつづけてきた『DIME』は、2026年春に40周年を迎える。そこで2025年11月14日に発売したDIME1月号では「【完全保存版】僕たちを夢中にさせたヒット商品クロニクル」と銘打ち、創刊となった1986年前後を基軸に、時代を彩ったエポックメイキングなモノ&サービスを振り返る特集を展開した。そこから見えてきたのは、ユーザーの「暮らしを便利にしよう」「楽しくしよう」という作り手たちの〝思い〟だった。
本記事では間もなく40周年を迎える富士フイルムの『写ルンです』をピックアップ。2025年5月のスマホアプリ登場に至るまでの経緯やこれまでの取り組みを、ふたりの担当者に聞いた。
同じような見た目やサイズ感で使える用途を徐々に拡大!
1986年 『写ルンです』

24枚撮りフィルムと焦点距離25.6mmのレンズを採用した、世界初のレンズ付フィルムとして、3種類のパッケージで登場。当時の価格は1380円。発売から1年で約300万本が売れた。
1987年 『写ルンですFLASH』

屋内でも明るく撮影したいというニーズに応え、フラッシュを搭載。夜間の撮影もできることによって、利用シーンが広がった。
1989年 『写ルンです望遠』

2.5倍相当の望遠レンズを採用し、離れた場所にある被写体の撮影が簡単に。表現の幅を大きく広げるきっかけになった。
1990年 『写ルンですパノラミックHi』

L判の長辺を2倍の長さにすることによって、パノラマ撮影を実現。広い景色や集合写真が撮りやすくなり、人気を博した。24枚撮り仕様。
1991年 『写ルンです防水』

深さ3mまでの耐水性能を備えたタイプ。水中撮影に加えて、水や汚れが付きそうな場所でも安心して使えることが支持された。
1996年 『写ルンですGolf』

8つのレンズを備え、8連写した被写体を1枚の写真に収めてプリント可能。ゴルフのスイングを連続して撮れることを主に訴求した。
2003年 『写ルンですNight&Dayフラッシュ』

昼も夜もきれいに撮れるというコンセプトで登場。内蔵フラッシュや高感度フィルムを採用し、夜景も背景が黒つぶれせず写せた。
接写対応から手ブレ軽減まで
みんなの「撮りたい」ニーズを『写ルンです』はかなえた!
初代発売の翌年以降、多彩な機種が次々に登場。接写仕様や日付の写し込み対応、望遠アダプター付き、手ブレ軽減タイプなどが登場してきた。

初代から変わらないのは〝実感を伴う体験〟の喜び
高井 『写ルンです』を発売した1980年代当時、カメラは〝1家に1台〟でした。そんなカメラをより身近にするべく、目を付けたのがポケットカメラ用のカートリッジフィルム『110フィルム』でした。当時の開発者がそれを触りながら「これにレンズを付ければいいのでは?」と閃いたことがきっかけと言われています。
植松 ただし、実現はひと筋縄でいかなかったみたいですよね。
高井 そのようです。幅広い層を対象に価格を抑えつつ、写真品質も担保しなければいけない。コストを抑えるために部品の品質を落とすと、写り全体に大きな悪影響が出る。コストと品質の〝せめぎ合い〟の中、特にレンズとフィルムの組み合わせには苦労したそうです。商品化の鍵となったのが、高性能なプラスチック製レンズを開発できたこと。これに高感度で質感描写に優れたカラーネガフィルムを合わせて、手軽にきれいに撮れるコンセプトを実現しました。
植松 1986年7月に発売された初代『写ルンです』は、当初の年間販売目標100万本をわずか半年で達成。1年後には約300万本まで販売が伸び、大ヒット商品になりました。
高井 1990年代に入ると、テレビCMが『写ルンです』の人気を大きく後押ししました。
植松 やはりデーモン小暮さんのインパクトが強い! 子供役の女の子が「パパ、パパ!」と言いながらバチッと写す。あのCMで、小さな子供でも簡単に撮れることが広く印象づけられたと思います。2000年代に入ると携帯電話やデジカメが普及し、撮影の主流はデジタルへと移行しはじめますが、それでも『写ルンです』には根強いニーズがありました。
高井 具体的には学校行事ですね。学校内や修学旅行にデジカメの持ち込みが禁止でも『写ルンです』ならOKのところがたくさんありましたから。こうした需要は今も変わらず続いています。その後は、ノベルティーやプレゼントとしての需要が伸びる一方で、実はアジアの若い世代にも広く使われるようになりました。さらに近年はフィルムカメラの人気が再燃し、日本の若い世代でも『写ルンです』で撮れる写真を特別に感じる人が増えています。
植松 そんな時流をふまえ、弊社では2025年5月にスマホアプリ『写ルンです+』をリリースしました。『写ルンです』で撮った写真の現像はアプリで依頼し、画像データをアプリ上で受け取れます。保存された画像データは、スライドショーでも楽しめるようにしました。最近の若い世代はリアルな体験に楽しさを求める傾向があり、アプリの反響をいただいているのは20代が中心です。最新アプリを含めて『写ルンです』のブランドが約40年も続いてきたのは、撮影や写真を受け取るという実感を伴った体験で得られる喜びが大きいと思います。アプリでもそれを大切にするとともに、現代のニーズや生活シーンなどに合わせた機能や利便性を提供しています。
高井 初代『写ルンです』は今見てもすごい商品。誰でもどこでも簡単に使えて、しかも写真の品質が担保されている。こうした良い物だからこそ、やはり時代を超えて愛されてきたのだと再認識しています。

デジタルの写真が主流の時代だが『写ルンです』の味わい深い写真は、ワールドワイドで支持を獲得。現在60か国以上で販売中だ。
2025年配信の最新スマホアプリはココがすごい

『写ルンです+』
『写ルンです』で撮った写真の現像や管理に対応。アプリで注文後に『写ルンです』をコンビニから発送すると、約1週間でデータがアプリ内に届く。現像注文時と現像後にはプリント注文も可能だ。

受け取った画像は、写真フィルムごとに自動で整理される仕組み。画像には名前やコメントを入れられる。画像を使ったフォトムービーも作成可能だ。

富士フイルム
イメージングソリューション事業部
コンシューマーイメージンググループ
統括マネージャー
高井隆一郎さん
『写ルンです』や『instax〝チェキ〟』をはじめ、プリント関連サービスの商品企画およびプロモーションも含めた全体戦略を統括している同社のキーマン。

富士フイルム
イメージングソリューション事業部
コンシューマーイメージンググループ
植松美里さん
最新スマホアプリ『写ルンです+』の開発に携わり、新しい写真の楽しみ方を提案。『写ルンです』の新しいキービジュアルもディレクションした。
文/高橋 智 撮影/横田紋子 取材・編集/田尻健二郎
昭和、平成を彩った歴代のヒット商品を総まとめ!50ページ超の大特集でお届けするDIME1月号
ソニーの初代ウォークマン、パナソニック「ブレンビー」、シャープ「書院」、NEC「PC-9800」シリーズ、ドコモ「ポケットボード」、au「INFOBAR」、シャープ「ザウルス」、アップル「iMac」、理想科学工業「プリントゴッコ」、マルマン「禁煙パイポ」、ナショナル「ジョーバ」、任天堂「バーチャルボーイ」、ホンダ「シティ」などなど、全300商品・サービスをピックアップ!
さらに『ダンシング・ヒーロー』40周年の荻野目洋子さん、ファミコン少年のスター高橋名人、アイドル40周年を迎えた南野陽子さん、元祖平成カリスマギャル安西ひろこさんなどにもインタビュー。デビュー当時のお話や年齢を重ねた今、見えて来たことなどを伺いました!
そのほかにも懐かしのCMやヒット商品に学ぶ〝温故知新〟など、令和の時代に役に立つ情報も満載です!







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