クレカのタッチ決済を利用すれば、スムーズかつお得に公共交通機関を利用できます。チャージの必要がなく、利用のたびにクレカのポイントが貯まる点にも注目です。クレカとICカード、それぞれの違いを知ればライフスタイルに合った決済方法を選択できます。
目次
電車やバスなど、公共交通機関の決済方法はICカード決済が主流でした。そんななか、近年普及しつつあるのがクレジットカードやスマートフォンによるタッチ決済です。
本記事では、クレカタッチ決済乗車と交通系ICカードとの違いを解説します。
普及が進むクレジットカードやスマホのタッチ決済乗車

公共交通機関の決済方法といえば、SuicaやPASMOなどの交通系非接触ICカードが主流です。近年は、クレジットカードを使った「タッチ決済」を導入する交通事業者が増加しています。
クレカのタッチ決済乗車は、タッチ決済機能が付帯したカード、またはカードと紐づけたスマートフォンを端末にかざして利用します。
2020年7月に茨城交通で初導入されて以降、全国に普及しつつある乗車手段のひとつです。
■タッチ決済乗車の普及状況
2020年7月、タッチ決済乗車は、茨城交通の交通バス路線で初めて導入されました。インバウンドを含む利用客の利便性向上や、新型コロナウイルスの感染予防、乗務員の業務負担軽減などが主な目的です。
以降、利用は各地に広がり、2021年4月には南海電鉄が日本初となる改札機におけるタッチ決済を導入します。2022年には、福岡を基盤とする西日本鉄道でも試験導入がスタートしました。
関西では2024年10月29日以降、大阪メトロ・近畿日本鉄道・阪急電鉄・阪神電気鉄道4社のほぼ全駅となる計548駅で、タッチ決済乗車を利用できます。
関東でも、2025年9月10日からタッチ決済による乗車サービスの実証実験が拡大しました。都営地下鉄全106駅中、タッチ決済サービスを利用できるのは55駅です(2025年11月時点)。
さらに、今年春の展開をめどに、鉄道事業者11社の路線を相互利用するための整備が進められています。これが実現すれば、カード1枚で都内をシームレスに移動できます。
■タッチ決済乗車が普及する背景
タッチ決済乗車の普及に大きな影響を与えているのが、インバウンド観光客の増加です。日本初となる改札機でのタッチ決済を導入した南海鉄道も、以前はインバウンド観光客に対する課題を抱えていました。
関西国際空港へつながる路線をもつ同社では、切符の引き換え窓口がインバウンド観光客で混雑しやすく、利便性低下を招いていました。
タッチ決済導入以降、乗客の利便性は向上し、従業員の業務負担も軽減しています。さらに、同社は2025年の大阪・関西万博開幕を受け、タッチ決済利用可能駅をほぼ全駅へと拡大しました。
世界の主要都市に目を向けると、クレカによるタッチ決済乗車は、すでに普及が進んでいます。
今後もインバウンドの需要が続くとみられる現代社会において、クレジットカードによるタッチ決済は、スピーディかつ安心安全な交通手段として普及が進むと考えられます。
タッチ決済乗車の仕組み

2026年1月現在、日本国内のタッチ決済システムには三井住友カードが提供する「stera transit」が活用されています。
公共交通機関向けソリューション「stera transit」を導入すれば、タッチ決済サービスの提供だけでなく、利用者のデータ分析が可能です。2020年に11社だった導入事業者数は、2025年には43都道府県189社にまで増加しています。
利用者がタッチ決済機能付きのカードを専用端末にかざすと、カード情報がチェックされ、利用日の深夜に1日の合計額が換算されます。
後日、売上データが三井住友カードの決済プラットフォームに送信され、カードのその他の利用額とともに決済されるという仕組みです。
同社は2025年3月、総合交通アプリ「Pass Case」の提供をスタートするなど、利便性向上に向けたさらなる取り組みを進めています。
参考:stera transit – 公共交通機関向けコンタクトレス決済
参考:三井住友カード Pass Case(パスケース)
タッチ決済乗車のメリット

タッチ決済乗車の利用には、以下のようなメリットがあります。
・チャージが不要
・利用がスムーズ
・ポイント付与
・海外利用可能
ここからは、クレジットカードに関係する、それぞれのメリットについてみていきましょう。
■チャージが不要
クレジットカードまたは対応スマートフォンを専用端末にかざすタッチ決済は、基本的に後払い方式です。そのため、チャージ不要でスムーズに乗車できます。
オートチャージ機能を備えた交通系ICカードもありますが、利用にはクレジットカードが必要です。また、対象路線は限られ、オートチャージ機能対象路線外に出てしまうと、利用できません。
ただし、クレジットカードではなく、デビットカードによるタッチ決済の場合は口座に残高が必要です。後払い方式のクレジットカードとは利用方法が異なるため、注意してください。
■利用がスムーズ
クレカのタッチ決済乗車は、対応カードがあればすぐに利用できます。一方、交通系ICカードの一部には登録手続きが必要です。
たとえば、記名式の「My Suica」は、利用時に氏名や生年月日、性別などを登録することで、紛失時の補償が受けられます。
クレカのタッチ決済であれば事前登録は必要なく、乗車までの流れがスムーズです。
■ポイント付与
タッチ決済乗車は、利用のたびにクレジットカードにポイントが付与されます。条件や還元率などは、カード会社によりさまざまです。
交通系ICカードの場合は、クレジットカードでチャージをしたとしても、乗車ごとのポイント付与はありません。
「カードのポイントを効率的に貯めたい」、「カードを利用してマイルを貯めている」という人にとって、クレカのタッチ決済はよりお得な乗車手段となり得るでしょう。
■海外利用可能
SuicaやPASMOなどの交通系ICカードは、日本国内のサービスです。一方、クレジットカードの多くは海外利用に対応しています。
対応カードを保有していれば、現地で切符を購入することなく、スムーズな移動が可能です。海外出張や旅行が多いほど、クレジットカードのメリットは大きくなります。
タッチ決済乗車に関する注意点

タッチ決済乗車をより便利に利用するためには、以下の点に理解が必要です。
・利用可能なクレジットカードが必要
・対応駅や改札機が限られる
移動時にトラブルが生じないよう、それぞれ確認しておきましょう。
■利用可能なクレジットカードが必要
タッチ決済乗車には、「タッチ決済」対応のクレジットカードが必要です。対応カードには、電波のような「リップルマーク」が付いています。
スマートフォンで利用する場合も、タッチ決済機能が付いたクレジットカードの設定が必要です。これから設定する場合は、手持ちのカードの機能を今一度確認してください。
■対応駅や改札機が限られる
2025年11月現在、タッチ決済乗車は日本全国で利用できるわけではありません。とくに、首都圏では対応駅や改札機が限られます。
日々の移動でタッチ決済乗車を利用する場合は、生活範囲内の路線が対応しているか、事前に確認しておきましょう。
タッチ決済乗車とどう違う?交通系ICカードのメリット

ここからは、タッチ決済乗車との違いを中心に、交通系ICカードのメリットについてみていきましょう。
・利用範囲が広い
・予約すれば新幹線に乗車できる
出張などで新幹線を利用する場合は、交通系ICカードのほうが利点が多いケースもあります。それぞれの違いを参考に、状況に応じた使い分けを検討してください。
■利用範囲が広い
交通系ICカードは、国内ほぼすべての鉄道やバスで利用できます。Suicaをはじめ、PASMOやICOCAなど種類も多彩です。
店舗によっては、電子マネーとして買い物に利用できます。クレカのタッチ決済と同様、スマートフォンへの取り込みも可能です。
■予約すれば新幹線に乗車できる
交通系ICカードを利用すれば、新幹線のチケットレス乗車が可能です。オンラインで予約する際、手持ちの交通系ICカードを登録することで、紙のきっぷを発券する手間が省けます。
乗車時は交通系ICカード、またはカード設定済みのスマートフォンを使って改札を通ります。改札機からは、予約内容が記載された「EXご利用票」が出力されるため、必ず受け取ってから入場してください。
代金は、予約時に登録したクレジットカードから引き落とされる仕組みです。発券機の列に並ぶ必要がなく、新幹線の予約から乗車までの手順を効率化できます。
交通系ICカード決済に関する注意点

移動手段の主流とされる交通系ICカードですが、利用には以下のような注意点があります。
・エリアをまたいだ利用はできない
・事前にチャージする必要がある
クレカのタッチ決済乗車と交通系ICカード、どちらを使うべきか迷う場合は、それぞれのメリットや注意点などを比較検討してみましょう。
■エリアをまたいだ利用はできない
種類豊富な交通系ICカードですが、基本的にエリアをまたいだ利用はできません。異なるエリアをまたがって利用する場合は、きっぷを購入する必要があります。
とくに、出張時は注意が必要です。地域によっては、同じ路線内でも交通系ICカードの利用可能範囲が限られます。
また、地方の一部では、バス路線の交通系ICカード決済離れが進んでいます。2024年5月には、熊本の路線バス業者5社が交通系IC決済離脱を表明し、クレジットカードのタッチ決済を導入しました。
主な理由は、専用機器の更新コストの高さだといわれています。場合によっては現金が必要になるケースもあるため、慣れないエリアでは注意してください。
■事前にチャージする必要がある
交通系ICカードは、基本的にチャージをして利用します。残高不足の場合、乗降できないため注意が必要です。
チャージ方法には、クレジットカードまたは現金があります。クレジットカードを利用すれば、オートチャージが可能です。
オートチャージ機能を使えば、クレカのタッチ決済のように残高の心配なく公共交通機関を利用できます。ただし、チャージに対応しているカードや利用可能エリアなどは限られるため気を付けてください。
今後、交通機関の決済手段はどうなる?

インバウンドの増加を受け、タッチ決済の普及は今後さらに拡大すると考えられます。熊本のバス路線のように、コストが抑えられるタッチ決済を採用する交通業者も増えるでしょう。
また、近年は生体認証システムサービスも普及しつつあります。たとえば、大阪メトロではウォークスルー型顔認証改札サービスの利用が可能です。東武宇都宮線においても、2025年11月より顔認証改札サービスがスタートしています。
今後は個々のライフスタイルやニーズに応じた、より便利でスピーディーな決済手段が普及していくでしょう。
タッチ決済とICカード、自分に合った手段を検討しよう

クレジットカードによるタッチ決済と交通系ICカード決済は、それぞれメリットや注意点が異なります。カードによるタッチ決済は利便性が高い一方、利用箇所が限られる点に注意が必要です。
ただし、インバウンドが利用しやすいクレカのタッチ決済乗車は、今後も普及が進むと考えられます。それぞれの違いを正しく把握したうえで、より自分に合った手段を検討してください。
構成/編集部







DIME MAGAZINE











