5. 旅の道中が目的になる発見旅(Roadtrip Reward)
昔ながらのロードトリップは2026年に新たな進化を遂そうだ。家族や友人と一緒に巡る旅から、道中での偶然の出会いや新しい仲間との交流を楽しむ“共同の旅”へと姿を変えようとしている。
今や旅は「運転すること」そのものではなく、仲間との冒険を通じて絆を深め、忘れられないひとときを過ごす場となっている。
世界の旅行者の84%(日本:72%)が、休暇中の相乗りに前向きで、半数以上(世界:54%、日本:28%)は同じルートを旅する仲間を探すためにアプリを活用してみたいと回答していた。
その魅力は明確。旅行者が惹かれるロードトリップとは、気ままで柔軟な旅(世界:79%、日本:65%)、新しい人との出会いがある旅(世界:77%、日本:56%)、そして運転を分担できる旅(世界:76%、日本:60%)だ。
特に運転をしない人にとっては、相乗りや自動運転車の普及により、これまでアクセスできなかったルートにも挑戦でき、旅の自由度が一段と広がる。
この変化を牽引しているのは若い世代だ。Z世代の77%(日本:56%)が自動運転車やAIを活用してルートを決めることに前向きである一方、ベビーブーム世代では36%(日本:38%)にとどまっている。
テクノロジーの進化により、ドライブ以外の分野でも新たな可能性が広がっている。世界の旅行者の65%(日本:45%)が、AIを使って自分の希望に合わせた景色の美しい穴場ルートを設計したいと回答。
テクノロジーと人とのつながりが融合することで、ロードトリップは、探検でありながらコミュニティの要素も併せ持ち、何より“自分らしい旅”へと生まれ変わろうとしているようだ。
6. 星が導く、必然の旅先(Destined-ations)
2026年には、星々は占いや星座に関する情報を伝えるだけでなく、旅先そのものを導く羅針盤となるだろう。
月の満ち欠けや占星術といった神秘的な習慣が、旅行のタイミングや目的地の決定に影響を与え、休暇は精神的に調和し、宇宙に導かれていると感じる旅へと変わる。
世界の旅行者のほぼ半数(世界:47%、日本:32%)が、スピリチュアルな助言者が「今は適した時期ではない」と言えば、旅行計画の変更やキャンセルを検討する可能性があると回答。
また、43%(日本:32%)が占いの警告をもとに旅行を見直したり、39%(日本:27%)がもしも水星逆光中と知ったならば旅行を調整すると回答している。
こうした宇宙に基づく軌道修正にとどまらず、多くの旅行者が、神秘的な兆候や占星術による兆候に基づいた体験を積極的に求めているようだ。
月の満ち欠けや夏至・冬至に合わせて旅行時期を決めたり、パワースポットを訪問する休暇計画を立てる際に、そのような神秘的な要素を考慮すると回答した旅行者は約4割(世界:39%、日本:21%)に上る。
なかでも、Z世代(世界:53%、日本:24%)とミレニアル世代のほぼ半数(46%、日本25%)は、特にスピリチュアルな探求に敏感であり、若い世代にとって自己発見への道は、まさに星々に導かれているのかもしれない。
7. 美肌&ウェルネス・ビューティーテック旅(Glow-cations)
2025年は没入型リトリートの旅が注目されていたが、2026年は、ウェルネス旅行がかつてない盛り上がりを見せそうだ。
世界の旅行者の80%近く(日本:53%)が、自身の肌のニーズに合わせた複数の施術を受けられる“美肌に特化した休暇”の予約に前向きであった。
従来のスパを単純に楽しむ旅が、AIなどテクノロジーを取り入れ、体の大部分をしめる「肌」に焦点を当てた、ハイテクかつ個別対応の旅へと進化している。
実際、世界の約6割の旅行者(世界:59%、日本:32%)が、自分の肌のニーズに合った目的地を見つけるために、AIの活用を検討すると回答していた。
加えて、世界の旅行者の約4分の3(世界:72%、日本:55%)が、気候やアクティビティに合わせてカスタマイズされる保湿ステーションに期待を寄せ、64%(日本:51%)は、毛穴や保湿状態を分析しリアルタイムでスキンケアアドバイスをしてくれる、カメラやセンサー機能を持つスマートミラーに興味を示している。
また、睡眠の最適化も重要な要素となっており、75%(日本:57%)が、概日リズムに合わせた照明やサウンドスケープを取り入れて休養を改善する機能強化型のスイートルームに関心を持っている。質の高い休息は、休養は肌の修復と再生に欠かせない鍵のようだ。
体を温める昔ながらの温泉療法から、DNAやマイクロバイオームを解析する最先端の検査まで、美肌休暇はスキンケアに特化したウェルネス旅行の新時代を切り開いている。
その目的は単なるリフレッシュではなく、見違えるほど生まれ変わって帰ってくること。こんなパーソナライズされた体験旅への関心が、これまでになく高まっている。
8. 自然の静寂に抱かれ、趣味に没頭する旅(Hushed Hobbies)
2026年、静けさは新たな価値を帯びている。日常の喧噪や刺激過多な社会から距離を置き、心の平穏を取り戻すために、旅行者は自然の中の静寂を求め始めているようだ。
世界の旅行者の43%(日本:47%)が、自然をより身近に感じることに集中する休暇を取りたいと回答しており、Z世代ではその割合が圧倒的な81%に達していた。
さらに4人に1人(世界:25%、日本:40%)が、休暇中は「静かな」趣味に没頭することを希望しており、忍耐、黙想、ストレス解消から得る心身を回復させる旅が注目を集める。
昆虫観察やバードウォッチングから釣りや食物採集まで、自然との一体感を深めるアクティビティに関心を示す旅行者も増加していた。
世界では過半数の旅行者(世界:57%、日本:29%)がガやチョウなど昆虫の観察に興味を持ち、73%(日本:55%)が釣りやバードウォッチングを検討、69%(日本:69%)が地元の自然や原野で自ら食材を採集することのできる体験型ホテル滞在を希望している。
こうしたアクティビティは、旅先の環境とのつながりを深めるための手段となっているようだ。このような静けさの探求においても、テクノロジーはそんな旅行者たちを支える相棒としてのささやかな役割を果たしている。
例えば、チョウや鳥をリアルタイムで識別できるアプリや、動物が通った跡、生息地、季節ごとの移動パターンを提示するAIツールなど。
旅行者はペースを落として自然に身を委ねることで、“充電”の意味を再定義している。それは、より多くを求めるのではなく、むしろ“減らすこと”によって得られる明晰さと安らぎのようだ。
9. 記憶と再開する追憶の旅(PastPorts)
2026年、懐かしい思い出は過去に置いてきたものではなく、テクノロジーの力で再び訪れることができる場所へと変わる。
AIを活用したフォトマッピングや遺産を追跡するプラットフォームを通じて、旅行者は思い出の場所を正確に特定し、古い写真を未来の旅程に組み込むことで、その記憶の地を再訪できるようになるのだ。
多くの人にとってこれは感情を深く揺さぶられる旅であり、大切な瞬間を思い出して他者と共有したいという思いに根ざしている。
世界の旅行者の3分の2(世界:66%、日本:47%)が、テクノロジーを使って思い出や写真を再現し、その場所を訪れることを検討すると回答していた。
そのうち約半数(世界:49%、日本:41%)は、「家族や親しい友人との思い出をよみがえらせたい」とし、46%(日本:40%)は「若いころの自分を思い出し、つながりや帰ってきた感覚を味わいたい」と回答。
さらに、3分の1以上(世界:36%、日本:30%)は、こうした旅を人生の節目と捉え、成長を振り返ったり、昔の仲間と再会したり、あるいはつらい記憶と向き合い区切りをつける機会としている。
この新しいトレンドの特徴は、人々が持つ“思い出をたどりたい”という普遍的な願いが、テクノロジーによって形になりつつある点。
旅行者は懐かしさを追体験するだけでなく、イノベーションを活用して先祖のルーツをたどったり、物語を通して世代間の絆を深めたり、過去の写真を再現して共有することで、懐かしさと新しさが共存する旅を楽しんでいるようだ。
10. ‘私’のささやかな節目を祝う旅(Modern Milestone Missions)
2026年に、旅行者はいつ、どうして旅行するのかというルールブックを書き換えようとしている。結婚式、ハネムーン、記念日や出産といった従来の節目に限らず、現代の“お祝い”はより個人的で多様な形へと進化していく。
世界の旅行者の3分の2(世界:67%、日本:57%)は、旅行をするのに特別な理由はいらないと回答し、5人に1人(世界:21%、日本:3%)は、憧れの目的地に行くために伝統的な節目を待たないとしている。
この“モダン・マイルストーン・ミッション”の波は、旅行者が自分なりの方法で達成を受け入れ、自分自身を祝福する手段として旅を選んでいることを示している。
世界の旅行者の4分の3(世界:75%、日本:55%)が、「頑張った自分へのごほうび」として旅行を予約しているほか、旅行を予約する新たな理由も注目を集めているのだ。
例えば、就職や昇進祝い(世界:24%、日本:13%)、思いがけない税金の還付(世界:16%、日本:15%)、別れに区切りをつけるための旅(世界:14%、日本:11%)、新しい服のお披露目旅行(世界:9%、日本:3%)などが挙げられる。
また、健康やウェルビーイングの達成も新たな動機となっており、5人に1人(世界:22%、日本:10%)は断酒の成功やフィットネスの成果などを祝うために旅行していた。
“モダン・マイルストーン・ミッション”とは、自分のために旅をし、自分を祝福し、他人の目を気にせず“自分らしさを誇る”――つまり、「理由があるから旅をする」のではなく、「旅すること自体が理由になる」という、新しい時代の旅のかたちを象徴している。
まとめ:2026年の旅は、“The Era of YOU – 自分らしさ”を表現する時代
今年で10周年を迎えるブッキング・ドットコムの「旅行トレンド予測」は、人々がこれから世界をどのように体験したいと考えているのかに焦点を当てている。
旅行はこれまでも常に個人的な体験であったが、2026年の旅は「画一的な旅」とは全く異なるものになりそうだ。
旅行者は慣例的なスタイルを離れ、“自分らしさ”を感じられる情熱や関心により深く没頭している。
仲間とスリルを共有しながら絆を確かめたり、神秘的な場所へ気まぐれに立ち寄ったり、未来的なデザインのバケーションレンタルに滞在したり——。2026年の旅は、「The Era of YOU – 自分らしさ」を体現する大胆な自己表現の舞台となる。
今回の調査では、旅行者が自分の個性やユニークな魅力をそのまま輝かせたいという強い願望を持っていることが明らかになった。
テクノロジーがその実現を後押しすることで、旅行者は自分を最も理解してくれる人と共に、かつてないほど“超個別化された旅”を体験できる時代が訪れようとしている。
関連情報
https://news.booking.com/ja/
構成/Ara







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