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「七宝麻辣湯」店舗数が1年で2.8倍、18年前から先取りしていた〝麻辣湯ブーム〟

2025.11.24

11月某日、JR渋谷駅から徒歩5分。再開発が進む街の一角に、朝から行列ができる店がある。『七宝麻辣湯』だ。今年、グルメ界を席巻した麻辣湯ブーム。

その火付け役でもあり牽引役でもある『七宝麻辣湯』の第一号店であるここ渋谷店がオープンしたのは今から18年前の2007年1月のこと。18年前に誕生した専門店は、なぜ今ようやく脚光を浴びているのか。

『七宝麻辣湯』の代表・石神秀幸さんに話を聞いた。

石神秀幸さん-『七宝麻辣湯』を運営する株式会社カシュカシュ代表。「神の舌を持つ男」の異名を持つ

オープン当時は「春雨は流行らない」と言われた麻辣湯

麻辣湯は中国・四川省発祥のスープ料理だ。花椒のしびれる辛さ「麻(マー)」と唐辛子の刺激的な辛さ「辣(ラー)」をベースにしたスープに春雨や野菜、肉など様々な具材を入れて食べる。その歴史は意外と浅く、誕生してからまだ30年ほどだと推定される。

『七宝麻辣湯』を運営する株式会社カシュカシュ代表の石神さんが麻辣湯に出会ったのは2003年だった。

「旅行中、シンガポールで偶然、麻辣湯を食べたことが始まりです。今まで食べたことのないスパイスによる”美味しさ”、トッピングを自分で選ぶ”楽しさ”、野菜や肉など豊富な食材を使った”身体への良さ”。すっかり麻辣湯の虜になった私はシンガポール、マレーシア、中国と200店以上も麻辣湯を食べ歩き、いくつかの店舗では実際に修行をさせてもらいました。そして、この料理を日本人にも食べてもらいたいと思い、2007年1月、渋谷に『七宝麻辣湯』をオープンしました」

オープン当時(2007年)の『七宝麻辣湯 渋谷店』の外観
オープン当時(2007年)の『七宝麻辣湯 渋谷店』の内観

『七宝麻辣湯』の名前も、石神さんが修行した店がある上海の地名「七宝古鎮(チーバオラジエ)」に由来する。

しかし、『七宝麻辣湯』の船出は芳しくはなかった。

「正直、オープン当初の世間の反応はイマイチでした。やっぱり近所にパン屋やラーメン屋ができるのとは訳が違いますよね。多くの人が聞いたこともない見たこともない食べ物だったので中々に客足は伸びず、知り合いの男性グルメライターからは『春雨は流行らないよ』と言われる始末でした」

麻辣湯は高カロリーの二郎系ラーメンとは真逆の方向性。当時の外食トレンドから考えると、男性層の支持を得にくかったのは自然な流れと言える。

そんな厳しい状況の中、麻辣湯に興味を持ってくれたのは、やはり今のメインの客層と同じ20〜30代の女性たちだった。

「自由にトッピングを選べることを面白がってくれたのも女性層でしたし、春雨やスパイスの効いた薬膳風スープが彼女たちの健康志向ともマッチしました。彼女たちの間で徐々に口コミは広がり、オープンから5年ほど経った頃にはようやく軌道に乗せることができました」

その中毒性から麻辣湯は女性界隈のラーメン二郎と呼ばれることも

4〜5年前から麻辣湯ブームの予感はあった

2021年からは直営店に加えてフランチャイズ展開も開始。2024年は19店舗だった店舗数も2025年12月には53店舗を予定している。この1年で『七宝麻辣湯』は店舗数が約2.8倍へと急拡大したことになる。

トレンド分析によると麻辣湯ブームは2024年後半にはじまり、2025年に本格化しているが、石神さんはブームを次のように振り返る。

「確かに2024年に入ってから同業者やメディアの取材は増えたと感じています。『七宝麻辣湯』も2025年以降は都心部だけでなく、近郊エリアや郊外、地方にも出店を増やしました。多くの消費者にとって、身近なエリアに麻辣湯専門店ができたことで全国的なブームに繋がったのではないでしょうか」

『七宝麻辣湯』では50〜90種類の具材が並ぶ
ショーケースからトッピングを選ぶのは麻辣湯専門店に共通する楽しさ

一方で、ブームの土壌は4〜5年前から出来上がりつつあったと指摘する。

「実は『七宝麻辣湯』に限って言えば2019年ごろから1店舗あたりの売り上げはほとんど変わっていません。背景には、韓国の麻辣湯ブームがあります。おそらく韓国に麻辣湯が上陸したのは日本より後だったと思いますがブームは向こうのほうが先に起こりました。そのブームがSNSを通じて日本の女性たちにも伝わっていたのではないでしょうか。トレンドに敏感な世代では2024年後半から始まる麻辣湯ブームより先にはすでに麻辣湯を認知していたと思います」

しかし、『七宝麻辣湯』の第1号店がオープンしたのは今から約18年前、なぜ石神さんは麻辣湯ブームを先取りすることができたのか。

「麻辣湯は中国で誕生してすでに中国やシンガポールで人気の料理でした。同じアジア圏で受け入れられているなら日本でも絶対に受け入れられると信じてました。それに日本人って”麺”が好きじゃないですか。うどん、蕎麦、ラーメン…麻辣湯が受け入れられないわけがありません」

さすが「神の舌を持つ男」、その先見性には驚かされる。

麻辣湯には無限の可能性がある

ブームによって麻辣湯にも変化が現れつつある。

先にも説明した通り、麻辣湯は「麻(マー)」と「辣(ラー)」のスパイスのスープと野菜、肉、春雨など様々な具材を合わせて食べるのが最もスタンダードな味わいだ。

しかし、最近では白湯やトマトをベースにした辛くないスープが登場したり、春雨を中華麺やインスタント麺などに変更して麺料理として提供するなど様々なスタイルの麻辣湯が誕生している。

「麻辣湯はまだまだ歴史の浅い食べ物です。基本の形はあっても完成形はありません。それが麻辣湯の面白いところで、お客さんが自分の好みやその日の気分に合わせてトッピングやスープの辛さを自由に選べるように麻辣湯には無限の可能性があるんです。だから私は辛くない麻辣湯があってもいいと思いますし、麻辣湯を麺料理として好きになってくれてもいいと思っています。お店によって個性が出るのは麻辣湯の魅力の一つですよね」

では『七宝麻辣湯』の”個性”とは何だろうか。

「『七宝麻辣湯』を食べに来た」を言わせるほど、他とは違うスパイスや薬膳の風味がたっぷり

「『七宝麻辣湯』は”スパイス”もしくは”薬膳”の魅力を最大限に伝えたいと思っています。日本人にとって薬膳の風味はまだまだ馴染み深いとは言えません。『七宝麻辣湯』では日本人向けにマイルドに改良するのではなく、本場の風味を残しながら私なりに美味しい美味しいスパイスを追求して改善を重ねてきました。その甲斐あって、お客様からはよく『麻辣湯を食べにきているんじゃない。七宝麻辣湯を食べに来ているんだ』と言ってもらえます。『七宝麻辣湯』をきっかけに薬膳やスパイスの魅力を感じてもらえれば幸いです」

麻辣湯は嗜好性だけではなく、機能性も魅力。

タンパク質が不足しているなら肉や海鮮を多めにすることができるし、食物繊維が足りていないなら野菜メインにすることもできる。トッピングの工夫で食材、栄養、カロリーが自由自在に変化する。

「ブームで終わらせずに、食文化として定着させていきたい」

麻辣湯は自分の好みに合わせて育てられる料理だ。食生活が変化する日本において、麻辣湯が新たな食のインフラとして浸透していく日は近いのかもしれない。

取材・文/峯亮佑

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