DIME MAGAZINE
Googleは2025年11月18日（米国時間）、最先端の推論能力を基盤として、マルチモーダル理解において最も高性能なモデルであるGemini 3を公開した。
同日よりGoogleの製品群全体で利用が可能になり、日常生活におけるあらゆる学習、構築、計画に活用できる。また、Gemini 3のパフォーマンスを一層向上させる、強化された推論モードである Gemini 3 Deep Thinkも導入された。
その概要について同社発表ブログをベースにお伝えする。
Google and Alphabet CEO スンダー ピチャイ氏からのメッセージ
発表に伴い、Google and Alphabet CEO スンダー ピチャイ氏からのメッセージも公開された。
ピチャイ氏は以下のように語っている。
「約2年前、これまで会社として取り組んできた中で最も科学的であり、プロダクトの一つであるGemini時代が始まりました。それ以来、皆さんにこれほどご活用いただいていることに、喜びを感じています。AIによる概要の月間利用者は現在、 20億人に達し、Geminiアプリの月間ユーザー数は6億5000万人を超え、Google Cloud のお客様の 70 %以上がGoogleのAI を活用しています。また、1300万人の開発者がGoogleの生成モデルを基盤に開発を進めています。これらは私たちが目の当たりにしているインパクトのほんの一端に過ぎません。
Geminiは、世代を重ねるごとに進化し、より多くのことを可能にしてきました。Gemini 1のネイティブ マルチモダリティとロング コンテキスト ウィンドウにおける進歩は、処理できる情報の種類と量を拡大しました。Gemini 2は、エージェント機能の基盤を確立し、推論と思考の限界を広げることで、より複雑なタスクやアイデアを支援しました。その結果、Gemini 2.5 Pro は LMArenaで6か月以上にわたって首位となりました。
本日、Geminiのすべての機能を統合した、これまでで最も高性能なモデル Gemini 3を発表します。Gemini 3は、あらゆるアイデアを現実にします」
ピチャイ氏が語る内容のまとめは以下のとおり。
＜Geminiは世代を重ねるごとに進化を遂げ、より多くのことを可能にしてきた＞
Gemini 1のネイティブ マルチモダリティとロング コンテキスト ウィンドウにおける進歩は、処理できる情報の種類と量を拡大。Gemini 2は、エージェント機能の基盤を確立し、推論と思考の限界を広げることで、より複雑なタスクやアイデアを支援した。その結果、Gemini 2.5 Pro は LMArenaで6か月以上にわたって首位を獲得した。
＜Gemini 3は推論能力において最先端のモデルである＞
創造的なアイデアにある小さな手がかりも察知、または困難な問題が複雑に絡み合った要素を解きほぐすといった、深みとニュアンスを理解するよう設計されている。さらに、Gemini 3 はユーザーのリクエストの背景にある文脈と意図を把握する能力が飛躍的に向上したため、短いプロンプトでも必要な結果を得ることができる。わずか2年で、AIが単にテキストや画像を読み取るだけでなく、その場の空気を読むまでに進化したことは、まさに驚異的だ。
＜Googleのサービス全体で Geminiの提供を開始＞
これには、より複合的な推論と新しい動的な体験を提供する、Google検索のAIモードにおける Gemini 3が含まれる。 Geminiモデルがリリース初日にGoogle 検索 に搭載されるのは今回が初。また、Gemini 3は本日（11月18日・米国時間）より Geminiアプリ、Google AI StudioおよびVertex AI の開発者、そして新しいエージェント型開発プラットフォームである Google Antigravityにも展開される。
これまでにない洞察の深さとニュアンスを捉える高度な推論能力
Gemini 3 Proは、最先端の推論能力とマルチモーダルな機能により、さまざまなアイデアを実現できる。主要なすべてのAIベンチマークにおいて、Gemini 2.5 Proを大幅に上回る性能が示されている。
Gemini 3 Proは、画期的な1501 Eloというスコアで LMArenaのリーダーボードのトップに立っている。また、Humanity’s Last Exam（ツール不使用で 37.5%）と GPQA Diamond（91.9%）で最高スコアを達成。博士号レベルの推論能力を実証している。さらに、数学分野においてもフロンティア モデルの新たな標準を打ち立て、MathArena Apexで 23.4%という最新の最高スコアを達成した。
テキスト処理にとどまらず、Gemini 3 ProはMMMU-Pro で 81%、Video-MMMUで 87.6%という画期的なスコアでマルチモーダル推論を再定義している。また、SimpleQA Verifiedで最先端の72.1%を記録するなど、事実の正確性において目覚ましい進歩を示した。これは、Gemini 3 Proが科学や数学といった広範なトピックにわたる複雑な問題を、極めて高い信頼性をもって解決できる、非常に優れた能力を持っていることを意味するものだ。
Gemini 3 は、核融合実験装置であるトカマク内部のプラズマ流動を可視化するコードを生成できるほか、核融合の物理学を詩的に表現することも可能だ。
■Gemini 3 Deep Think
Gemini 3 Deep Thinkモードは、Gemini 3の推論能力とマルチモーダル理解力を飛躍的に向上させ、より複雑な問題の解決が可能になる。
テストにおいて、Gemini 3 Deep Thinkは、Humanity’s Last Exam（ツール不使用で 41.0%）および GPQA Diamond（93.8%）で、好成績を収めている Gemini 3 Proのパフォーマンスをさらに凌駕した。また、ARC-AGI（コード実行あり）では、前例のない45.1%を達成しており、新規性の高い課題を解決する能力を実証している。
Gemini 3があらゆる学習と開発、計画を支援する
■あらゆる学習を支援：複数のモダリティにわたるトピック情報をシームレスに統合
Geminiは、テキスト、画像、動画、音声、コードといった複数のモダリティにわたるあらゆるトピックの情報をシームレスに統合するように設計されている。Gemini 3は、最先端の推論能力、視覚と空間の理解、卓越した多言語性能、そして 100 万トークンのコンテキスト ウィンドウを組み合わせることで、マルチモーダル推論能力を広げ、ユーザーにとって最適な方法での学習を支援する。
例えば、家族に伝わる調理法を学びたい場合、Gemini 3は、異なる言語で書かれた手書きのレシピを解読および翻訳して、共有可能なレシピを作成できる。
また、新しいトピックを学ぶために、学術論文、長時間のビデオ講義やチュートリアルを与えると、資料の習得に役立つインタラクティブなフラッシュカード、ビジュアル、その他の形式のコードを生成する。
ピックルボールの試合動画を分析、改善点を見つけ出し、総合的なフォーム改善のためのトレーニング プランを作成することなども可能だ。
そしてウェブ上の情報をより深く理解できるよう、Google検索 の AI モードでは、Gemini 3が搭載された。これにより、没入型な視覚レイアウト、インタラクティブなツール、シミュレーションなど、ユーザーのクエリに基づいてその場で完全に生成される、新しい生成 UI ユーザー 体験が実現した。
＜Google検索のAI モードが提供する生成UIを活用、RNA ポリメラーゼの仕組みのような複雑な事象を深く学習＞
■あらゆる開発を支援：Googleの製品をより自律的にして、開発者の生産性を大幅に向上
Gemini は、これまでで最も高性能なバイブ コーディング エージェントおよびエージェント コーディング モデルであり、Googleの製品をより自律的にし、開発者の生産性を大幅に向上させる。
実際、驚異的な1487 ELOを獲得しており、WebDev Arena のリーダーボードのトップに立っている。また、モデルがターミナル経由でコンピューターを操作するツール使用能力を測る Terminal-Bench 2.0 で 54.2%を記録したほか、コーディング エージェントを測定するベンチマークである SWE-bench Verified（76.2%）で Gemini 2.5 Pro を大幅に上回っている。
Gemini 3は、Google AI Studio、Vertex AI、Gemini CLI、そして新しいエージェント開発プラットフォームである Google Antigravityにおいて、今すぐ開発に利用が可能。さらにCursor、GitHub、JetBrains、Manus、Replit などのサードパーティ プラットフォームでも利用に対応している。
エージェント ファーストな新たな開発体験
Gemini3 の登場でモデル性能が加速的に進化する今、新しいエージェント開発プラットフォームである Google Antigravityも公開された。これにより、開発者はより高度に、タスク単位で作業できるようになる。
Gemini 3の高度な推論能力、ツール利用、エージェント コーディングの機能を活用。Google Antigravityは、AIアシスタントを開発者のツールキットにある単なる道具から、能動的なパートナーへと進化させる。
Google Antigravityの核となるのは慣れ親しんだ AI IDE（統合開発環境）体験だが、エージェントは専用のインターフェースとなり、エディター、ターミナル、ブラウザへ直接アクセスが可能となった。
これにより、エージェントは、複雑なエンドツーエンドのソフトウェア タスクをユーザーに代わって自律的に計画、および実行すると同時に、自身のコードを検証できるようになる。
Gemini 3 Proに加え、Google Antigravity には、ブラウザ制御のための最新モデルである Gemini 2.5 Computer Useモデルと、トップ評価を獲得している画像編集モデル Nano Banana（Gemini 2.5 Image）も統合されている。
■あらゆる計画を支援：より長期的な視野で確実な計画を立てる能力の向上も期待
Gemini 2によるエージェント時代の幕開け以来、我々は多くの進歩を遂げてきた。これは、Geminiのコーディング エージェント能力の向上だけでなく、より長期的な視野で確実な計画を立てる能力の改善にも及んでいる。
Gemini 3は、シミュレートされた自動販売機ビジネスを管理することで、長期計画をテストする Vending-Bench 2のリーダーボードでトップに立ち、この能力を実証した。Gemini 3 Proは、シミュレートされた1年間の運用を通じて、一貫したツール使用と意思決定を維持し、タスクから逸脱することなく、より高い収益をもたらす。
これは、Gemini 3が日常生活におけるタスク処理をより強力に支援できることを意味している。より深い推論と、改善され一貫性が増したツール使用を組み合わせることで、Gemini 3は 、Gmail受信トレイの処理すべきメールの選別や旅行の計画など、より複雑な複数ステップのワークフローを最初から最後までナビゲートすることで、ユーザーに変わって行動できるようになる。これらの動作はすべて、ユーザーの管理と指導の下で実行される。
Google AI Ultraのサブスクリプション ユーザーは、本日（11月18日米国時間）より Gemini アプリのGemini Agent で、これらのエージェント機能を試すことができる。
Gemini 3の責任ある構築
Gemini 3は、これまでで最も安全なモデルであり、従来のどの Google AIモデルよりも包括的な安全評価を受けている。Gemini 3は、迎合性が低減され、プロンプト インジェクションに対する耐性が向上しているほか、サイバー攻撃による誤使用に対する保護も強化されている。
GoogleのFrontier Safety Frameworkの重要な領域に関する社内テストに加え、同社では世界をリードする有識者と協力して評価を実施。また、英国のAISI（AI Safety Institute）などの機関に早期アクセスを提供してApollo、Vaultis、Dreadnodeなど、業界の専門家から独立した評価を得ている。
Geminiの次の時代
今回の発表はGemini 3時代の始まりに過ぎない。Gemini 3は以下から順次提供される。
・一般ユーザー向け：Gemini アプリ、および Google AI Pro と Ultra のサブスクリプション ユーザー向け Google 検索 の AI モード
・開発者向け：AI Studio の Gemini API、新しいエージェント開発プラットフォームである Google Antigravity および Gemini CLI
・エンタープライズ向け：Vertex AIおよびGemini Enterprise
Gemini 3 Deep Thinkモードについては、今後数週間以内にGoogle AI Ultraのサブスクリプション ユーザーを対象に提供開始予定だが、それに先立ち、安全性評価とセーフティーテスターからの知見を得るため、時間をかけて慎重に準備が進められている。
関連情報
https://blog.google/intl/ja-jp/company-news/technology/gemini-3/
構成／清水眞希
最新号
