高市早苗氏が日本初の女性首相となったことで、SNSを中心とした「サナ活」が注目されている。高市氏の愛用品やファッションを真似るムーブメントの特徴や社会への影響をまとめた。
目次
2025年10月、高市早苗氏が内閣総理大臣に就任し、日本初の女性首相が誕生した。これを受けて、主にSNS上で「サナ活」と呼ばれる現象が起きている。
高市氏の愛用品やファッションを真似るこのムーブメントは、従来とは異なるカジュアルな方向から若者層、特に女性の政治参加を促す可能性を秘めていると言われる。
そこで本記事では、「サナ活」の起こりとムーブメントの具体的な内容、若年世代の政治意識の変化といった社会的な影響についても解説する。
「サナ活」とは?広がる新たな政治参加のかたち
まずは「サナ活」の意味と、ブームとなったきっかけについて見てみよう。
■「サナ活」の意味と背景
「サナ活」とは、高市早苗首相の愛称「サナ」から生まれた造語だ。高市首相の愛用品、メイク、ファッションを真似たり、その所持品について情報を共有したりする活動を指す。
アイドルやアニメキャラクターを応援する「推し活」文化が政治の世界に広がったもので、若い世代、特に女性を中心にSNSで話題となった。
■高市早苗氏の就任会見が「サナ活」のきっかけに
サナ活のきっかけの一つとなったのが、2025年10月21日に行われた高市首相の就任会見だ。日韓関係について問われた際、高市氏は「韓国のりは大好き、韓国コスメも使っています。韓国ドラマも見ております」と発言。この言葉が、韓国文化に親和性の高い若年世代を中心にSNSで拡散され、首相への共感と関心を集めるきっかけとなった。
■若者層における高市首相と政治への関心の高まりは?
学習管理アプリ「Studyplus」を提供するスタディプラス株式会社が、高校生・大学生8,806人を対象に実施したアンケート調査によると、「高市新総理を応援するか」という質問には93.5%が「応援したい」と回答。
また、同調査では39.0%が「サナ活」を認知しており、24.3%が「サナ活がきっかけで政治への関心が高まった」と回答している。
この調査は「Studyplus」の利用者を対象としたものであり、若年層全体を代表する数値ではない点に注意が必要だが、美容やファッションといった身近な話題が、若い世代が政治に関心を抱くきっかけとして機能している様子が伺える。
※参考:【高市新総理に関する調査 高校生・大学生8,806人】気になる政策課題「国際関係・安全保障」が25.2%で最多、「サナ活」知名度は39.0% | スタディプラス株式会社のプレスリリース
「サナ活」で人気に火が付いた高市首相の愛用アイテムとは
それでは、サナ活で話題となった高市首相の愛用アイテムについて見てみよう。
■「サナ活」の人気アイテム1:三菱鉛筆「ジェットストリーム」ボールペン

就任会見で高市首相がメモを取る際に使用したピンク色のボールペンは、SNS上で注目した文具ファンたちが映像を拡大して特定し、三菱鉛筆の「ジェットストリーム 多機能ペン 4&1 MSXE5-1000」のライトピンクであることが判明。
4色のボールペンとシャープペンが1本にまとまった多機能性と、なめらかな書き心地が特徴のジェットストリームは、税込1,100円(参考価格)という手頃さも人気の理由となっている。
■「サナ活」の人気アイテム2:濱野皮革工藝のバッグ

高市首相が総理官邸に入る際に手に持つ黒いバッグ「グレース ディライトトート」は、「早苗バッグ」として同じくSNS上で注目を集めた。東京・銀座に店舗を持つ老舗ブランド「濱野皮革工藝」の製品で、皇室関係者にも長年愛用されてきた高級ブランドとして知られる。
SNSで特定されたあとは注文が殺到し、入荷待ちの状態になっているという。
■「サナ活」の人気アイテム3:韓国コスメとメイク

就任会見での「韓国コスメ使っています」という高市首相の発言は、若い女性たちに強い親近感を与えた。SNS上には「何を使っているか知りたい」といった声も聞かれる。
「APEC 2025」の開催期間中は、韓国コスメブランド「CJオリーブヤング(Olive Young)」が各国の首脳向けにコスメを提供し、高市首相の発言と共に話題になった。
高市首相のナチュラルメイクへのシフトも注目されており、以前の濃いメイクから柔らかく親しみやすい印象に変化したことが好感度アップにつながっているとの分析もされている。
「サナ活」を支持する層の特徴と心理
「サナ活」を支持する層の特徴、高市首相を応援する心理について見てみよう。
■若い女性を中心とした「サナ活」支持層
「サナ活」を支持しているのは、特に18~20代の女性を中心とした層だ。この年代は政治への関心が比較的低い傾向にあるとされていたが、スタディプラス株式会社の調査によれば、高市首相を「応援したい」理由として「政治家として信頼できそう」が64.8%、「女性として活躍しているのがかっこいい」が21.0%と、高市首相個人への好感度(=サナ活)が政治的関心を高めているのがわかる。
■「推し活」文化との親和性
「サナ活」が若者に受け入れられている理由の一つは、アイドルやアニメキャラクターの「推し活」と同じ心理で楽しめる点にある。愛用品を特定し、同じものを購入する行動パターンや、SNSでの情報共有とコミュニティ形成は、推し活と同じ構造を取っていると言えるだろう。
「サナ活」の今後と若年層の政治参加への可能性
「サナ活」が一過性のブームで終わるか、若年層への継続的な政治的関心を育むかは、現時点では見通しが立っていない。「サナ活」をきっかけに若い世代が政治に関心を持つための可能性について考察する。
■「サナ活」は若者の政治参加を促すきっかけとなるか?
従来、10~20代の投票率は、30~40%台と低水準にとどまってきた。2024年10月の衆議院議員総選挙では、10代が39.43%、20代が34.62%で、60代の68.02%と比べて30ポイント以上の開きがある。
背景には「政治は難しい」「自分とは関係ない」というイメージがあり、選挙に行っても「誰に投票すればいいかわからない」「支持する政治家や政党が特にない」と迷うことが大きな理由だろう。
「サナ活」は、推し政治家という概念により、この政治への苦手意識を弱め、自然な形で政治的関心が育まれる可能性を持っていると言える。
■若者の政治参加に必須の「政治的有効性感覚」が課題
「サナ活」という高市首相個人への共感を元にしたファッション・愛用品への関心が、もう一歩進んだ政治的関心につながるためには、若い世代が政治を「自分のこと」として捉える文化を醸成していく必要がある。
大切なのは、投票などの行動によって「自分の声が政治に届くという実感(政治的有効性感覚)」を得ることであり、そのために、「サナ活」をきっかけに周囲と政治について話し、投票行動につなげるための主権者教育(国民が主権者として、自ら考え、判断し、行動できる力を育むための教育)が求められていると言えるだろう。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/長尾尚子







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